健全化したらいいんじゃない?
ルルイエとシュトリクがなにやら性癖を共有したところでルナはふと、こんな事を言い出した。
「その銀の黄昏って組織、健全化しちゃえばいいんじゃないですか?」
「簡単に言ってくれるね」
『でもそう言うのって身内がやってこそじゃない?』
ルルイエはとにかくルナを関わらせたく無かったので嫌々だ。
「自浄作用があったらこんな面倒な事にはなってないのでは」
『それは・・・そうだけども』
ルナの言うことはもっともである。それに偶発的なと事とはいえ既に戦闘にもなっている。
あの時はFクラス全員が命の危機に曝され、ルナも一歩間違えば命を落としていたかもしれない。
「とにかく、シュトリクさんのメンタルも心配だし。シュトリクさんが来なくなった後に何か変な人けしかけられても困るし・・・」
ルナはそう言うとむん!と気合を入れて二人に宣言した。
「銀の黄昏!健全化計画始動します!」
「『ええっ!?』」
二人は揃って驚いた。それを見てルナはどこか自慢げに胸を張ると指を立てて続ける。
「悪い人を追い出して、ちゃんと魔法を研究したい人だけの組織に!そして次に皆が少しずつでも運営の仕事をすること!お金は皆で持ち寄ること!皆が皆、お金の流れを知れること!総帥さんにも意見を言えること!以上がまずもっての目標だと思います!」
言っていることは真っ当な事である。彼女にそれができるかは謎だが。それでも、彼女は動くつもりらしい。
『ルナちゃん・・・それは簡単なことじゃ・・・』
「でも、その為にずっとずっと・・・ルルイエ先生やディーン先生に守ってもらうんですか?」
『それは・・・私達の仕事だし』
「でも、減らせるものは減らすべきです。結社がどうとか、そう言うの・・・やられっぱなしは嫌です」
ルナの脳裏に不愉快に笑うガスタンの姿が浮かぶ。そして、優し気な彼女の瞳に鋭い、危険な光が灯ったのを見てルルイエは表情をこわばらせた。
「シュトリクさんはともかく、アイツらは私の友達にも手を出したんです」
あのとき、自分の力が偶然にも覚醒しなかったら。あの時の怒りが、不完全燃焼気味だった感情の波がふつふつと彼女の中に渦巻いている。
「怒って、しまいそうです!」
顔を両手で覆って、それでも漏れでる魔力と怒りの奔流が周囲の木々を騒めかせる。
指の隙間から八つの目が覗き、髪の毛が魔力と反応して逆立ち始めた時
「ほいっと、落ち着けルナちゃん」
「ミ”ッ!」
背後に立ったエトナ―が首に掛けたシンボルを後ろから引っ張った。
「まったく、らしくねえな。何をそんなに怒ってんだ?」
可愛い顔が台無しだぜ?と後ろから抱き着いてエトナ―は耳元でささやいた。
「銀の黄昏を健全化したいです!でないとずっとシュトリクさんも私も困ります!」
「あーん?」
エトナーが何の話だ?と問いかけるとルナはぷんすこぷんすこと気炎を吐きながら言う。
「銀の黄昏の構成員のおかげで私と友達が死にかけたんです!そんな人が居る組織を放って置けません!」
むーん!とルナが珍しく頑固な態度を崩さなかった。エトナ―はそれを見てシュトリクとルルイエに視線を向けた。
「まったく、お前らが悠長なことやってっからこうなるんだぞ。お姫様がご立腹だ」
『貴女ね・・・元はと言えばあなたが手ぬるいことするから!』
ルルイエが抗議の声を上げたがエトナーは涼しい顔。そもそもの専門外だ、と答えた。
エトナ―は以前、銀の黄昏のアジトに異端審問官を連れて突入している。そして多数の魔法使いを逮捕したが総帥たちが妨害に入った事、そしてその対処ができるのがエトナ―だけだったためにその間に多数のメンバーが逃走。
さらには総帥たちは微罪だったためすぐに釈放されてしまった経緯がある。
「私はそもそも聖職者であって、殺し屋でも掃除屋でもねえ。総帥も庇いやがるしよ。穏便に捕まえたら普通は大人しくすると思うだろ?」
「穏便・・・?」
総帥と私達幹部そろってボコボコにされたけど・・・?とシュトリクは呆れたように呟いた。
「ダニがほとぼりが冷めて戻ってきやがったかはわからんが、この子に手を出すってんならこっちとしても放っては置けんわな」
「エトナーさんが手伝ってくれるんですか?」
「もちろん、大船に乗った気でいてくれよな」
「わぁい」
性格や素行はともかくエトナ―は対魔法使い、対悪魔、対人のエキスパートである。そして不死身の体をもち、苦痛を忘れて動くこともできる。個人で出来ることは大抵できるのだ。
そんな強力な助っ人を得てルナはさらにやる気を見せている。
『知らないわよ、面倒なことになっても』
「そうさせないのが私達の仕事だ。それに悪党を真っ当な道に戻すのも私の仕事だしな」
ルルイエは溜息をつくとルナの頬をうりうりしながら言う。
「うゆゆゆ」
『ルナちゃん、組織に立ち向かうのは結構面倒なことだから気をつけてね?』
「ふぁい、かってなことしまひぇん!」
むん!とやる気だけはあるのでルルイエは困った。聞き分けがいいんだか悪いんだか。
あのときの変身すらマトモにできない彼女ならともかく悪魔としての自分を知覚できている今の彼女ならおそらく危ない事はあるまいとルルイエはエトナ―の保護がある事も含めて諦めるしかなかった。




