圧縮圧縮ゥ!
ペラペラとメモを読み込んでいくが・・・
「あの表情・・・」
『なんだか全てを物語ってる気がするわ』
「ほえー」
徐々に情けない顔になっていくアルディーノ。
そしてパタンとメモ帳を閉じると
「・・・めっちゃ」
「めっちゃ?」
「めっちゃ読み易い」
ガーン!という効果音が響いてきそうな声色と表情でアルディーノはそう言うと膝から崩れ落ちた。
「ワハハ!分かったか馬鹿め!ちゃんと纏めといたらあんな量の資料や走り書きの備忘録なんぞいらんのだ!」
バーカバーカ!と勝ち誇った顔でルチオはアルディーノの周りをカサカサと動き回っている。
どこまでもしょうもない話である。
「ところでお孫さんの柔らかい頭ってどういうことです?」
「うん?ああ、それはのう・・・若者の柔軟な発想や思考能力があれば無理せず知識の整理や記憶が出来て負担がほとんどないのじゃ。そしてその記録は整理する過程で脳に刻み込まれ、しっかりと記憶される」
魔法使いというのは教えたがりと秘密主義の二通りに分類される。ルチオはどうやら前者のようだ。
そして命の危険のない呪いという言い分の通りリスクを最大限排除しての行動のようである。
「くっくっく、これで留飲が下がったわい」
勝ち誇ったようなルチオにルナはふと思った事を呟いた。
「でも、それってお孫さんがアルディーノさんの研究を全部受け継いじゃったってことじゃ・・・」
「・・・」
「・・・」
ルチオの動きが止まり、アルディーノが顔を上げた。奇しくも同時に。
そしてしばらく逡巡した様子を見せた二人は今度は立場が逆転した。
「しまったーーーー!」
「わはは!バカだな!バーカ!長い準備をかけてワシの後継者を育ててくれてありがたい限りじゃわい!」
今度はルチオが膝から崩れ落ち、アルディーノがカサカサとルチオの周囲を回り始めた。
しっかり動きまで真似している辺り相当悔しかったようだ。
「うひぃー!悔しい!ワシとしたことが!」
「几帳面すぎたのがアダになったな!お前はアダマン遺跡の修復をしとるのがお似合いじゃ!」
「ううう・・・なぜワシがアダマン遺跡の修復をしとると知ってるのじゃ?」
「うん・・・?」
ルチオの問いかけにアルディーノは少しだけ恥ずかしそうにしながら答えた。
「そりゃあ、まあ・・・ワシの同級生じゃし・・・」
「そ、そうか・・・」
「ワシらの年齢になると知り合いも減ってくるから・・・まあ、その、なんだ。気にかけておるよ」
「・・・そうか」
二人はそう言うと立ち上がって、お互いに手を取り合った。
「工房の件だが・・・すまんな、ワシが悪かった」
「わかってくれればいい、十分すぎるほど騒ぎになったしな」
「それに、あれじゃろ?実際はワシの息子がワシの研究を継いでくれなかった事を知ってこのような事をしたんじゃろう?」
「・・・偶然じゃよ」
パッと見でルナほどの年齢の孫の居るような年齢の二人である。それなりの年齢になってお互いに連絡のつく友人が減っていくなかで喧嘩をしながらもお互いを気にかけていたのだろう。
二人ははにかんだ笑顔を見せると並んでルナ達の所へやってきた。
「今回の事は本当に申し訳なかった」
「お嬢さんたちにまでこんな迷惑がかかってしまうとは思わなかったのでな。許しておくれ」
「なんだ二人とも仲良しじゃん」
二人そろって頭を下げるのでティナは呆れたように言い、ルナとルルイエは噴き出した。
「お子さんが魔法の研究を継いでくれないことってあるんですか?」
『ええ、適性が無い事もあるし、今の時代では使わないものもあるからね』
「こやつの息子はどうにも旅をしたがる性分でな、研究も娘も放り出して出掛けておるわ」
ルチオがそう言うとアルディーノは苦い顔をしている。どうやら彼の息子は放浪癖があるようだ。
「でも、そうなるとアルディーノさんの魔法はお孫さんが継いでくれるんですか」
『あの子がそれを望んでいるかは別だと思うけどね』
「それは大丈夫です」
ルルイエの声に返事があった。全員が声の方向へ顔を向けると少女が意識を取り戻していた。
「おじい様の研究は私が引き継ぎますから。私にもささやかな夢がありますし」
「おお、ラウラ!ワシのわがままを聞いてくれるのか!」
「良かったね、おじいちゃん」
アルディーノの孫ことラウラは優雅に微笑みながら皆の前に立つと流れるような動作でカーテシーをする。
「皆さま、ご挨拶が遅れましたこと御容赦くださいませ」
「お、お嬢様だ」
「ティナちゃん・・・?」
御屋敷に住んでる名家のご令嬢なんだからお嬢様だよ?とルナが言うとティナはそうだった、と声を上げた。
それを見てくすくすと笑いながらラウラはルナとティナの所へやってきた。
「お二人には特に御手間を取らせたと聞いております。お師様も含めましてなにか埋め合わせをしたいと思いますが・・・」
「私は別に気にしないなぁ」
ルナちゃんは?とティナが聞くとルナも迷った。えらい目にあったのは確かだが事ここに至って今更自分の被害を声高に語って雰囲気をぶち壊すのもと思ったのである。実際犯人は彼女ではなく彼女の祖父だし。




