呪いの正体は・・・?その2
ルナはなんとなく不満というか、もやもやが消えなかった。いったい誰がこんなつまらない事をしたのか。
そのせいで自分は腕を切られたのだ。
別にその事で復讐とか、大それた気持ちがあるわけではない。アルディーノに対しても孫の為に血迷ったのだと言えばそれまでだし、ティナやルルイエが自分以上に怒っていたからことさら自分が怒るのもなぁと思った。
だが、なんというか、ちょっとくらい真っ当な理由がよかった。
「孫が片付けをやめられない呪いにかかった」
こんな理由で自分は腕が飛ぶような攻撃を受けたのである。治ったけど。
もっとこう、命の危機だとか、世界の秘密だとか、そういったものが絡んでいればなーと。
そんなことを考えながら歩いているとふつふつと湧いてくるものがある。
黒幕をとっちめてやりたいなーという気持ちであった。
「ここじゃ、ワシの屋敷」
「おお、でっかーい!」
街の外れまで歩いていくと立派なお屋敷が。アルディーノの家がどれだけ名家か分かりそうなほどだ。
「孫がここで未だに片付け続けているはずじゃ」
アルディーノは屋敷の使用人が自分を出迎えないことを不思議に思いつつ門を潜る。
「ほへー、お庭も立派」
ティナは庭木の手入れ具合と人が歩く部分に敷かれた敷石などの具合を確かめ、その上等さに驚いていた。
庭木、敷石、装飾品、それらを自身の目利きのままに査定しながらティナは庭を皆と進んでいたが・・・
「あり、この紙束なにさ」
「さぁ?」
ふと、整頓された庭にそぐわない紙束とガラクタの山に目が向いたティナはルナの肩を叩いて言う。ルナも見当がつかないのでなにかゴミを出しているのでは?とティナに言う。
「ねぇ、おじいちゃん」
「どうしたのかな?」
「あそこのゴミの山なに?」
「ゴミ?いや、まてよ・・・」
アルディーノはふっとその山に目線を投げ、少ししてその山に駆け寄った。
「わ、ワシの研究資料と機材がぁぁぁ!」
アルディーノの大声にティナとルナは尻餅をついた。
「ヒイイ!整頓されてるぅ!」
「メモ書きとか色んな紙が綺麗にまとめられてますね」
古びた紙がちらほら、そしてフラスコや調合に使う薬研などなど放り出されている機材も紙の古さに比例するように古びている。
「お、お嬢様!困ります!それは大旦那様の!」
「御片付けです、御片付け!」
使用人たちが少女に縋りつくようにしている。しかしそれを全く意に介さない様子で少女は今度は衣類を担いでいる。
「あ、あーーー!ワシのコート!」
「何年も前のお古じゃなくて新しいのにしましょう!着ないのは処分!」
「やめてくれー!ワシの、ワシの思い出の品ー!」
まるで機械のように整理整頓をこなしていく少女。放り出されていく品物は増えていくばかりだ。
『あれは・・・重症ね』
「整理整頓ぐらいと思った自分がなんか申し訳ない・・・」
庭先に放り出されている物品は既に一部屋分くらいはありそうだ。そうなるとアルディーノの部屋は空っぽになっているのではないだろうか。
「それにしてもすごい怪力ですね」
少女はアルディーノが加わって止めに入っているのも意に介さないで全員を引きずって片付けを続けている。
それを見てルルイエは瞳の色を時折変えながらそれを観察していた。
『あれは呪いの力よ、呪いが超常的な力となって彼女に特定の行動を完遂するように仕向けてるんだわ』
呪いにはよくある『衰弱』や『妨害』の呪い。変則的な『強制』や『強化』の呪い。
あの少女に掛かっているのは後者の方だろう。
強化が呪い?と思うだろうが何事も匙加減が大事、後者の呪いはそれをぶっ壊すのである。
やりたくてもできなくするのが衰弱と妨害、辞めたくても辞めさせないのが強制、やりすぎるように仕向けるのが強化というわけだ。
『これはささっと作らないと屋敷が空っぽになるのも時間の問題よ』
「うへぇ・・・そういえば薬の材料になるものってルナちゃんの涙となんなの?」
ティナがそう言っているとアルディーノが吹き飛ばされてこちらに転がってきた。驚いて転がってきた方向を三人が見やると使用人たちが振りほどかれてあちこちに転がっていくのが見える。
「大旦那様ぁ・・・私達では手も足もでません!はやく解呪の為の薬を!」
「うぐぐ、わかった・・・」
腰を抑えながら立ち上がるとアルディーノはこちらにメモを手渡した。
「これが材料じゃ、手早く頼む!」
そう言うと腰を強かに打ち付けたのかアルディーノは情けない声を上げてへっぴり腰になった。
「うぐぉぉおほへぇ・・・」
「このメモが・・・」
ルナがそれを受け取るとルルイエとティナにも見せた。
『なるほど、お薬って感じの内容ね。で、後は『悪魔の乙女の涙』を混ぜて完成と』
内容はほぼほぼ解毒用のポーション。それに『悪魔の乙女の涙』という希少物質を混ぜるだけとのこと。
『これなら私の手持ちで作れるけど・・・問題は最後の素材の採取方法ね』
ルルイエはルナを見る。おそらく人目につくことをかんがえているのだろう。
「こちらに地下室があります、調合台は・・・うぐぐっ、整頓されていたはずだから・・・ひぎぃ!使えますぞぉ」
アルディーノが杖を突きながら震える手で離れにある小屋を指さした。




