翌日
ルナはこっそり家に帰って着替え、何食わぬ顔で帰宅した。
その次の日。
「ほえー、この鳥さんが」
「な、なんでここに始祖様が・・・!」
「始祖のエルフ、御伽噺と思ってたな」
「・・・鳥さんだね」
「もふもふ!」
Fクラスの反応は様々だ。その中でカティナは御先祖様から畏敬の対象である始祖のエルフが何食わぬ顔でここに居ることに理解が追いついて居ない様子。
「私は、サピスキア。皆に、会えて、うれしい」
二コリと微笑むとその顔立ちから本来なら黄色い声が上がってもいいだろう。しかしながらここは魔法学校である。
「鳥!鳥さんがしゃべってます!」
「エルフだってば」
「ああああ、始祖様!わ、わたし何もできてないんで共有できる話題ないんですぅ!」
「もふもふしてる!」
「マリーちゃん、落ち着いて」
「こうしてみるとハーピィに似てるな」
「調べると差異は割とたくさんありますがね」
わいわいとにぎやかになる。サピスキアはその盛り上がりに少しだけ嬉しくなったが自分の方を向いている人物が少ないのでちょっと複雑だった。
「はい、静かに!」
「も、もふもふ!」
「ちょ!落ち着いて!」
「そ、そうだ砦から!砦から先生と逃げてきたんですよ!」
「カティナちゃんも落ち着いて!色々と話すチャンスはあるから!」
「静かに!」
「羽根の色が綺麗だな、飾りにつかえるのではないか?」
「抜けたら貰ってもいいか聞いてみましょうか、羽根飾りだとご利益ありそうですよ」
「え!売れる?!」
「ティナちゃん友達の体の一部を売るの・・・?」
「い、嫌な言い方しないでよ!」
「静かにしろと言っとるだろうが!」
アダムの拳骨が舞う。
「えー!これからこのエルフを旧館で預かることになったので・・・」
全員の頭に綺麗にたんこぶができた。ご丁寧にテイロスを殴るときだけ棍棒を使っていた。
「ので?」
「本人の希望もあって愛称を決めて欲しいとのことだ」
「愛称・・・ですか」
「サピやん!」
ティナが即座に手を挙げた。こういった時の瞬発力は流石である。
「サピやん、悪く、ない」
「意外と高評価だ」
「ええと、ええと、うううう!」
「落ち着け、アインザッツ」
カティナはどうやらエルフの中でも高位の存在ということで緊張しているらしい。何かしようとしてやる気が空回りしているようだ。
「もふもふさん!」
「マリーちゃん、ちょっと羽根の感触から離れようか」
「手つきが、ちょっと、やらしい」
マリーはどうやらサピスキアの羽毛の感触が気に入ったらしい。羽根を撫でくり回している。当然ながらサピスキアはちょっと嫌そう。ルナも呆れながらどうにかマリーを宥めている。
「後ろの二文字でキアでもいいかもしれませんね、他の人に聞かれても気安くし過ぎていない感じが・・・」
「キアか、それも、なかなか」
「まあ内内での呼び方だからあまり気にせんでもいいかもしれんがな」
「愛称は慣れると口をついて出ちゃうものですから」
ダズはうーん、と考え着くと響きなどからサピスキアを軽く扱い過ぎない名前を考えているようだ。アダムはダズが思った以上にいいとこの出身ではないかと思い始めた。彼の経歴はそれほど詳しくは書かれていなかったが上流階級に縁があるようなそぶりを何度か見せている。
「見た目の特徴から考えるのもありか・・・」
「ギガース、そんなに難しく考えなくてもいいんだぞ?」
「名前は重要ですよ先生、銘だってそうだ」
テイロスは皆がわいわいと候補を上げるなかで腕を組んで唸っている。こだわりの強い性格が災いしてかこういう時にテイロスはいつも考え込んでいることが多い。見た目が相まって怒っているようにも見えてしまう。威圧感も凄まじく、慣れるまではクロエやマリーは彼を露骨に避けていたくらいだ。
「やっぱサピやんでよくない?」
「適当過ぎません?」
「悪く、ない」
「ほら、本人も言ってんじゃん。愛称は言いやすくて覚えやすいのが一番だって」
くっつこうとするマリーを手で制しながらもサピスキアはにっこり。マリーは手で制されて触れられていなかったが・・・。
「手もちょっとすべすべしてるかも・・・」
「む・・・」
「あ、嫌そうな顔」
手を掴んでその感触を確かめ始めたのでサピスキアはとても困った顔をした。
「えー、じゃあ候補を上げて、最後に本人に選んでもらう感じで行こう」
アダムはそんな中で黒板を叩いて全員から一通りの名前を書き出していくことにした。
「えー、まずはユピトール考案の最有力候補『サピやん』」
カツカツと白墨を滑らせる。
「次にクライグスの『もふもふさ・・・おい」
カツカツと白墨を滑らせると即座にサピスキアが消した。アダムが顔を向けるとぷいっと顔をそむけた。
どうやらマリーに対して苦手意識が芽生えたらしい。
「つぎはアッテンボローの『キア』だな」
ちらっとサピスキアを見たが今度は何もしなかったので書き出した。




