意外に縁があったのだ
「アッテンボローの故郷は山合いの地域だったか、ギガースと近いんじゃないのか?」
「ええ、テイロス君に聞いたらどうも実家が近いようです」
ダズとアダムが話し始めたので手持無沙汰になったサピスキアとルナ。特にルナはドレス姿のままなのでちょっと恥ずかしいし動きにくいと思っていた。
「そろそろ着替えたいなぁ・・・」
「似合っていると、おもうけど?」
「ありがとうございます、でも余所行きの恰好なので・・・汚すと大変だし」
「そうか、色が、似てるから、いいと思った、のに」
むーん、と言いながら自分の羽根とドレスを見比べるサピスキア。ルナもそれに倣ってドレスと羽根を見比べてみる。
「確かに似た色が使われていますね」
「うん」
のんびりした雰囲気の二人はそう言い合うとのほほんとした雰囲気を放ち始めた。
「そうだ、そう言えば、あることを、お願い、したいと」
「お願いですか?」
「愛称、ほしい、フルネームは、長いし、よそよそしい」
愛称が欲しい、とサピスキアはいう。始祖のエルフはあらゆる面において個という概念が希薄な存在である。
情報の集合体である記憶故に自身の記憶が入り込む余地は少なく、その価値から自由に何かをするという事も難しい。すべてのエルフの記憶を有する個体としてその長い人生のほとんどを記録の保持のために費やす存在なのだ。
それ故にそう言ったことを望むことは当然なのかもしれない。
「そんなに長いです?」
「サピスキア・メモリア・サピエンティアエ。これが、私の、名前」
「ほへー、たしかにちょっと長いです」
「だから、愛称が、欲しい」
そう言われてルナはちょっと悩んだ。ルナはそんなに名づけのセンスがいいと自分でも思っていない。
まっさきに浮かんだ候補がサピサピだった。
「わ、私ではちょっと荷が重いでしょうか・・・」
「気軽に、考えてくれても、いい」
「うーん、でもなぁ・・・とりあえず明日に皆で案を出して考えてみましょう」
「わかった」
サピスキアとルナは皆で愛称を考える事にしてとにかくサピスキアの部屋を決める事にした。
「この部屋を使いましょう」
「彼らの、隣だね」
何もない部屋だが掃除はしてあるので最低限の清潔感は保たれている。ベッドなども汚れが激しかったからか運び出されて机しか残っていないがサピスキアにとってはそれも好都合だ。
「ここの床板外せますね、これは・・・?」
「暖房に、つかう、もののようだ」
床板をめくってみるとどうやら囲炉裏のようになっている。暖房を考えられている部屋のようだ。ダズ達の部屋もそうなのだろうか?
「暖房?」
「この灰の、部分に、焼いた炭を、入れるようだ」
中には少し古びているが火箸も置いてあり、天井を見上げると金属の通風孔が開いている。火箸の隣には自在鉤のようなものが置いてあり、それを使って天井の通風孔の取っ手をひっぱると排煙装置が通風孔から伸びてくる。
それを下まで伸ばすと囲炉裏からストーブに早変わりした。
「火の精霊の文字が書いてます!」
「高級品、だね」
「けどなんだか・・・手作り感がしませんか?」
「たしかに、この仕組みに比べると、ちょっと、不自然」
最低限の熱源で最大限の暖を取れるようにとの工夫だろう。排煙装置は規格に沿って丁寧に作られているが火の精霊の紋様はどうやら後付けでつけられたもののようだ。精霊の力を借りる魔法的な要素の絡む金属細工は本来いうまでもなく工芸品ともいえるレベルの細工だが何しろここは魔法学校。やろうと思えばやれるヤツがいるのである。金属加工そのものは粗いところが目立つのでもしかすると自作かもしれない。
「こまった、でも、私は、たぶんつかわない」
「寒いの平気ですか?」
「うん」
そもそも鳥類の羽毛に包まれているのだ。夏場は逆にえらい事になりそうなほど温かいだろう。
結局部屋の隅に移動するとその場で座り込む形になった。
「藁が、欲しい」
「なんかすごい絵面・・・」
人面鳥が部屋の隅で座りこんでこちらを見ている。言葉だけでも非常にシュールな状況だ。
サピスキア自体は悪い人ではないのだろうが大きな瞳、青い肌、そして異形の特徴から人によっては怖がられてしまうかもしれない。
「藁を集めて・・・シーツとか敷きます?掃除も大変そうだし」
「そうだね、それが、いいかもしれない」
差し当ってサピスキアの為に藁を仕入れること、藁が散らばらないようにシーツを下に敷いて掃除しやすくすることなどを予定に盛り込んだ。
「部屋はここにするのか?」
「そうみたいです」
そうしているとアダムが入ってきた。サピスキアの要望などを取り入れて藁をこの部屋に敷くことなどを提案するとアダムはすぐに了承してくれた。
「わかった、それじゃあ俺たちは飯にするか。フラウステッドもそろそろ家に帰った方がいいぞ」
「はぁい」
ルナはアダムの勧めに従って家に帰る事にした。




