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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナの新しい力
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エトナ―の杖その2

杖の話をして、ルナはまたもや消沈した。

しかし当然と言えば当然、ルナはエトナーに師事してはいるものの経典一つ読み込んだことがないのである。

その割に彼女は治癒術も結界を張ることも出来るという才能に関して言えば一級品である。

エトナーが彼女を聖職者にしようと言うのもそこら辺も理由になる。


「そういえば・・・エトナーさんの杖って何処でもらったんですか?」

「私のか?」


エトナーの問いかけにルナはこっくりと頷いた。


「私のは神器さ」

「えっ!神器って、あの?」

「神器に“あの“も“その“もねぇよ。んでもってあれは正確には杖じゃねぇ」


エトナ―はそう言うと遠くを見るような目でそうつぶやいた。


「あれは、そうさな・・・ま、私の切り札だ」

「そうなんですか?」

「ああ、滅多と使う事はないがな。大悪魔と殴り合いもめっきり減ったし、それ以上のはかれこれ・・・」


そう言いかけてエトナ―は窓の外を見やる。


「そろそろ止みそうだな、暗くなる前に帰れよ」

「はーい」

「杖ならウチの知り合いに取り寄せてもらうから次に私と何かやることがあったら持ってきてやるよ」

「わぁい」


にへーっと笑うルナにエトナ―はやれやれと苦笑する。それと、とエトナ―は散らかったキッチンとは別に唯一整理されている本棚から一冊の本を取り出すとルナに手渡した。


「経典もっとけ、日光教と月光教の事が書いてある」

「ありがとうございます!」


にへーからふにゃーに変わった。エトナ―はこの程度で喜んでくれるルナに思わずこちらも笑顔で答える。


「それじゃあそろそろ帰りますね」

「おう、気をつけてな」


エトナ―は雨が止んで、帰っていくルナの背を見送りながらつぶやいた。


「お前の師匠みたいにはなってくれるなよー」


ルナの背中が見えなくなるころに塒に戻るとエトナ―は杖を出現させるとそれを握り、先端に目をやる。


「あの子に使う機会なんぞ来てほしくないが・・・」


煌めいた杖の先端にはまるでそこにガラスで出来たような刃が浮かんでいた。









「もらっちゃった、もらっちゃったー」


ルナは経典を手に帰路についていた。結局武器も杖も手に入らなかったが経典をもらえたことでそんなことはどうでもよくなっていた。基本的に好奇心の強い彼女は本の虫のきらいがある。


「ふむふむ・・・」


日光教の成り立ち、そして歴史の表裏で語られる歴史を綴った出来事の中にはどうにも見知った顔がちらつくような事件がいくつか・・・。


「まるでエトナ―さんの半生でも見てるみたい・・・」


ルナは気づいていない。というか気付かなくて当たり前ではあるがエトナ―は歴史の生き証人である。彼女が見聞きしたことは全てが歴史の出来事を保証するものであり、彼女が絶大な権威を持つのはそのためでもある。

彼女に「え、お前の国そんな時代にあったっけ?」とでも言われようものならアイデンティティーの危機である。

彼女の発言は各国の要人は元より教会の人間もかなり神経をとがらせている。

彼女が酒の失敗を繰り返しても咎められないのは彼女の失言や知識の漏洩を酔っ払いの戯言と流すためでもある。

今の人間にとっては神話の世界である天魔戦争の当事者であり、そこから日光教の全てを見てきた人物。

これが偉人であるかと言われれば偉人であると全ての人間がいうだろう。そうでないと言い切るのは本人だけである。


「エトナ―さんの顔がちらついて集中できない・・・」


結局ルナは経典をあまり真面目に読み進められなかった。仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。

出来事について語られるシーンがある度にどこかしらにエトナ―っぽいのが居るのである。

不滅の聖職者、奇跡の残滓、神代の尼僧。これらの呼び名で彼女は登場し、人々を導いたり、一緒に旅をしたり。

彼女の笑顔、そして同行者を呆れさせるような事件や事故を起こしたり。彼女の性格が随分と昔から変わっていないことが伺い知れる内容だ。


「そして、最後には彼女が一人・・・」


不滅故に、各章の締めくくりには彼女が全ての結末を見届けて、また旅に出る。それの繰り返しが続いていた。

一体彼女はどれだけの人と出会い、そして別れていったのか。

多くを救い、多くを喪い、多くを導いて、多くとぶつかり、多くと繋がってきた。彼女は様々なものの歩みそのものである。


それを考えるとルナは少しだけ、ページをめくるのが躊躇われた。

彼女は一体いつまで生き続けるのだろう。そう考えたから。


「うぅ・・・ん」


うとうととしながら、ルナはページをめくっていたがいつしか机に突っ伏して眠っていた。

延々と続く道の途上でエトナ―の隣を歩く夢を見ながら。

黄昏時の旅路、彼女の表情を伺うことはできない。それでも、その隣を歩いていたい。

彼女の孤独に寄り添う事ができるのなら。彼女が笑顔になれるのなら。

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