とりあえずもういいか・・・
次の水曜日、ガルドナはまた準備を重ねてやってきたが・・・
「あれ?今日もいつも通りです?」
『諸般の事情で・・・』
ルナはまた素手で相手することになった。
「あー、殺傷力の無い武器が欲し・・・かったけどもういいや」
持って変身したらどのみちとんでもないことになるのである。
ただ、他がどうなるのかと気になる事は気になる。
何がきっかけになって変化しているのかも。
「武器なんて私には縁のない話なのかなー」
魔法使いとして杖を手にすれば剣や槍など必要ないと言えばない。それにアダムの言う通りろくに訓練も積んでいない自分がそのようなものを手にしたところでなにができようか。
せいぜいが護身術程度だろう。
「・・・杖にちょっと拘ってみようか」
そこでルナはふと考えた。今の自分は魔法使いと聖職者の二足の草鞋を履く状態である。魔法使いとして使う杖は既に持っているが聖職者としての杖は持っていない。
魔法使いの杖は長くても60センチほど、短ければ30センチほどで指揮棒のような見た目の物が多い。
対する聖職者の杖はある種の身分証を兼ねていること、旅をするために長く作られているものが多い。
魔法使いの杖は短く、華美に装飾されている。聖職者の杖は長く、無骨に頑丈に作られている。
そんな中でふと、ルナは聖職者といえばと一人の人物を思い浮かべる。
「エトナ―さんってたしか杖持ってたっけ?」
彼女の杖は身長くらいの円柱の金属の棒に先端に十字になるように金属の棒が差し込まれている。
教会には装飾を施した杖を持っている人もいたし、服装も同様に派手な服を着ている人もいた気がする。
しかし彼女は服装も杖もシンプルというよりなんだか貧相な有様である。
思い立ったがなんとやら、ルナは放課後にエトナ―を訪ねることにした。
「エトナ―さんいますかー」
「Zzz・・・」
ルナがエトナ―が塒にしている古い教会を訪れると前のベンチで酒瓶を抱えて眠っているエトナ―を発見した。
「エトナ―さんまたお酒飲んで寝てるのか・・・」
ルナはエトナ―がまともな状態でこの教会に居るところを見たことがない。酔いつぶれているか二日酔いかである。
まともな彼女を見ようと思ったら旅先で偶然出会うのを期待するしかないほど。
「そういえば・・・今は杖を持ってない・・・」
本人の性格上、「そこらへんに忘れてきた」と言い出しかねないところだがさすがにそんなことはあるまい。
ルナは彼女が普段杖をどうしているのかを探るついでに古い教会の掃除を始めることにした。
エトナ―は最低限の掃除すらしていないのか教会は荒れ放題で中は酒瓶や埃が積もっている。
「ひどい!」
思わずそう叫んでルナは掃除用具の代わりに風の魔法と水の魔法をコントロールして埃を風で飛ばし、水に当てて固めることで払った埃を一まとめにするところから始めることに。
右手に風の魔力を、部屋を循環するようにイメージして放出すると魔力を纏った風は埃を絡めとるように吹き込み、積もった中で風で飛ぶくらいの小さな埃が教会の中を舞う。
そしてその風の循環する最終地点に水の魔力で待ち構えることで水分を含んだ埃は互いにくっついて塊になる。
「これで多少はマシかな・・・」
雑巾も箒も無いので後は酒瓶を片付けるくらいだ。ガチャガチャと瓶をひとまとめにして教会の玄関先に持っていくと酒屋さんが回収しやすいように隅に整列させておく。
そうこうしているとぽつぽつと雨が。
「え、うそ・・・傘もってきてないのに」
そう思いながら外を見てエトナ―がまだベンチで寝ている事を思い出して慌てて彼女の元へ。
「エトナ―さん!」
「Zzz」
相変わらず寝たままである。不死身だからってあまりにも怠惰である。
「もう、とりあえず運びますからね」
寝ているエトナ―をファイヤーマンズキャリーの体勢で運び、ルナは彼女を教会の中のベンチに移動させた。
「あーあ、本降りになってきちゃった」
教会の窓の外はすっかり雨模様。ルナはどうやって帰ろうかと考えていたところ寝ていたエトナ―が呻きながら起き上がった。
「あー・・・くそ、なんだよ場所変わってんじゃねえか・・・どこだここ」
「エトナ―さん、雨が降ってますから中に移動しましたよ」
「んー?ルナちゃんか・・・あぁ・・・そういうことか、ありがとうよ」
眼をしぱしぱさせながら頭を掻いているエトナ―。まんま酔っ払いのおっさんである。
しかしながら雨に濡れるのを不憫に思って移動させてくれたことを知ったのか軽くお礼を言いながら酒臭い息を吐いた。
「今日は何か用事か?ミサなんてここじゃやってないが」
「やってないって・・・ここ教会じゃ・・・」
「とっくにここは教会としては機能してねえよ、私は必要ないがそこらの坊主じゃここでは何もできんぞ」
私にとっちゃただの家だ、とエトナーは言うとルナについてくるように言って立ち上がった。




