甲斐があったのかな?
その後、意識が戻ったティナだったが本人曰く
「なんか突然意識飛んだ」
とのこと。もちろんルルイエが言った様な現象や感覚など知りようはずも無い。
「練習あるのみかぁ」
「とりあえず弱い魔力で始めた方がいいよ」
「うーん、でもそれだと芯に届かない感じがするんだよね」
ティナの言葉にアダムは少し考えてから言った。
「もしかすると肌に魔力が走っているからかもしれんぞ」
「肌?」
「人の中にある雷の魔力は始点から終点に向かって走り、循環する。ユピトールの場合手から肌、体を走って手に戻ってを繰り返しているかもしれん」
「それだと何が違うんですか?」
「体をビン、ビンの中身を魔力として考えるとする。そしてビンの中に中身を継ぎ足すのがユピトールの訓練だとするだろ?だがユピトールの場合は中身が溢れているから上から新しく注いでも溢れる中身に押し出されてビンに入る前に流されてしまうわけだ」
雷の魔力は同じ属性同士だと流れのある方に、もしくは誘引する性質の物に容易く流されてしまう。そのためティナの体を魔力が巡っている都合上、雷の魔力を吸収しようにも体の表面を走る魔力に流されて溢れてしまい体内に戻るころには微々たる物になっている。
効果はあるだろうが自覚出来たり、魔力を鍛えられるほどの強度はない。
「つまるところ割と強めで、なおかつコイツが失神しない程度の威力を探さないといけない」
「ティナちゃんに頑張ってもらうしかありませんね」
「上手い事やってくれんと自分で自分を叩いて失神するヤバい奴になってしまうからな」
目下制御するべき強さとしては
・自身の魔力の流れよりも強い流れ(威力)をもつ魔力を流す。
・現状の魔力吸収のキャパシティーを超えない威力にすること。
相反する二つの要素が必要なのだ。
「ムズくない?」
「現状ではユピトールの魔力量が人並みだからな。コントロールもだ。微細なコントロールができるなら徐々に威力を上げて・・・といいたいところだが」
そう言いながらアダムはティナを見た。人は意外と属性にちなんだ性格をしていることが多い。
火は情熱的、風はきままに、水は大らかに、土はのんびりと。そんな感じに分類できたりするものだがその中で雷の属性を持つ者はせっかちでひとところにじっとしているのが苦手な者が多いと言われている。雷属性に関しては絶対数が少ない為に情報は不確かであるが。
「コイツの集中力はなぁ・・・」
キャパが小さい都合上針の穴を通すようなコントロールが求められるが肝心のティナにそんな集中力がないのである。授業中でもガサガサごそごそと何やら余計なことをしてはアダムにげんこつをもらう日々・・・。
「お前にもうちょい集中力かコントロールか魔力量があればなぁ・・・」
「やってみるしかないっしょ!・・・ふぎゃー!」
「ああ、また失神した・・・」
「当たって砕けろの精神が過ぎる・・・」
再び失神したティナを見ながらルナとアダムは溜息をついた。どうにかして彼女にまともな訓練方法を思いついてあげなければティナは一日の大半を回復体位で過ごすことになるだろう。
「魔力を消費してからするのはどうでしょうか?」
「うーむ、現実的なところでいうとそれしかないか・・・」
ティナが目覚めるのを待って二人はティナに現実的な訓練方法を試す様に言い含めることに。
「それと水曜日に向けて準備もしなきゃ・・・」
ガルドナがおそらくウッキウキでやってくるであろう水曜日。彼をボコボコにする日である。
普通に戦うと学生ではルナには勝てないのであるが・・・。それ以上に問題があるとすれば
「勝つ以上にその後の後始末が問題なんだよね・・・」
ガルドナをボコしたあとの事である。
ルナはエトナ―にも師事している都合上、彼女からいくつかの聖術の手ほどきを受けている。
その中で一番に教わっていたのが治癒術である。校外学習でケガをした皆に対してしてあげられることが少なかったと嘆いた彼女にエトナ―が教えたのがきっかけである。
本来なら聖職者しか使えない御業であるがルナは悪魔という特殊かつ膨大な魔力を持っているためその奇跡を魔力で代用できるのだ。しかしこれは「他者を救う」という免罪符が必要になるため他人にしか使えない。
ちなみに人の姿であれば多少弱いが治癒術を聖力という聖職者のMP的なものを使って使用することができる。
こちらは修行中なので人並みにしか使えない。
そういうわけなのでケガに関しては幾らか治療は可能なのだが、彼が着ている服や防具はそうはいかない。
最初の戦闘では火球を二発ぶつけた為に制服はボロボロになっていた。
制服は魔法に対して高い防御性能を持つがそれも悪魔の使う魔法の出力の前では普通の服とそう大差はない。
「さすがに毎度服とかボロボロにしてたら迷惑だよね・・・」
ルナはそちらの方にも頭を悩ませることになった。




