ティナの能力その2
『貴女の特性を伸ばし、活かすにはこれかしら』
ルルイエはそう言うと小さなハンマーを取り出した。
サイズ的にガベルのような物で戦闘には使えそうにもない。
「これは?」
『雷神をだま・・・おど・・・えっと、相談して作ったのよ』
「酷いことしてませんか?」
「えーんがち・・・」
『わー!わー!そんなことない!そんなことないから!』
ルルイエの言葉に二人の目線が怪しくなってくると慌ててルルイエは否定した。
『これは雷神の力が込められたハンマーで、振ると雷の魔力が発生するのよ』
「へー、じゃあティナちゃんの魔力を回復できるんですか?」
『慣れれば大丈夫だと思うわ』
わー!とルナが目を輝かせる中、ティナが呟いた。
「なんか曰くありそう」
その言葉にルルイエは目を泳がせながら続けた。
『け、欠点はちょっと呪われてて使用者に雷が落ちやすくなってるだけだし・・・』
「それはちょっとではないのでは・・・」
『屋内なら大丈夫・・・だと思う』
「もしもし、日光教の聖人さまですか?」
『通報しないでぇー!』
ティナがルナの首に着いている日光教のシンボルに耳打ちするように呟くとルルイエは慌てて二人に縋り付いた。
『まって!もうちょっと話きこ?これは貴女の為になるから!』
「えー、頭に雷落ちてくるとか危険なんですけどー?」
『そりゃそうだけど、ティナちゃんだったわね?貴女にはノーリスクでしょ?』
「それはそうか・・・」
『それに魔力を籠めて振らなければ効果はないから!』
それを証明するようにルルイエはブンブンとハンマーを振る。ハンマーは空を切ったが何も起こらない。
ティナはそれを見てようやくハンマーを受け取った。
「それで、これに魔力を籠めると雷の魔力が増幅される・・・んだよね?」
『そうよぉ、それで本来ならデメリットになる雷もティナちゃんの体質なら体を強化するメリットになる』
「強化・・・体の?」
ティナはルルイエの言葉に首を傾げた。雷の魔力を道具で増幅するのは確かに強化かもしれないが、それはあくまで魔法の強化のはずだ。
「体の強化ってどういうことですか?」
『彼女の体は雷の魔力というより雷そのものに高い親和性がある。帯電体質とでもいうのかな?その体質を利用すれば体の反応速度そのものを加速させることができるかも』
ルナとルルイエが話している中、ティナはハンマーを受け取った時から何か不思議な声を聴いていた。
(聞こえるか、私の声が・・・)
(聞こえまーす)
(そうか、ならばそなたは私を使うに値する素質があると言う事だな・・・)
(そうなの?)
ぼんやりとした感覚で話をしているが実際声には出ていない。喧々諤々とルナとルルイエが話し合っているのでティナは蚊帳の外、気にも留めていなかった。
(で、ハンマーさんはなんでしゃべってんの?)
(雷神の一部だったけどあのバカに千切られてここに突っ込まれた)
(ひでぇ・・!)
(というわけで、ちょっと仕返しをしてほしい。そしたらお前に全力で協力してもいい)
仕返し?とティナは不穏に感じたがハンマーに宿った雷神の一部が魅力的な提案をしてきたのでとりあえず話を聞くことに。
(ハンマーさんは何ができるんですか?)
(体質の深度にもよるが雷でお前さんを素早く動けるようにできるし、躱され易い雷の進路を私と自分を繋ぐ一直線にかぎって法則を無視して線でつなぐこともできる)
(私雷に打たれても気絶するくらいで済むんだけど深度ってどれくらい?)
(ふーむ、相当だな。それで済むなら慣れは必要だが雷クラスの魔法やそれに伴う自然現象でもお前さんの力を回復したり増幅したりできるかもしれんぞ)
もちろん私の協力の上でだが、と雷神は言う。
(うーん、仕返しの内容によるけどどんなの?)
(ハンマーでヤツの腰を叩け、後は私が済ませる)
(殺したりケガさせたりしない?)
(ヤツは殺したくても殺せん。本体がボコボコにされて魂の一部を引きちぎられるくらいの実力差がある)
出来てもせいぜいぎっくり腰くらいだろう、雷神は溜息をついた。ほんとうならギタギタにしてやりたかったのだろうが神代の聖職者エトナ―くらいしか地上で彼女を抑え込める存在はいないので仕方ないのかもしれない。
(良くてぎっくり腰、酷いと「痛い!」で済んでしまうくらいだろう。思い切ってやってくれ)
(なんかぎっくり腰も酷い気がするけど・・・)
まさかルナちゃんの師匠がこんなおしゃべりハンマーで大事になるわけがないだろうという楽観的な考えが頭に浮かび、ティナはハンマーを手に持つとこそっとルルイエの後ろに立った。
「ていっ」
ピコッ、と腰のあたりを叩いた。すると・・・。
『ア”-ッ!』
バチッ!ビリビリビリッ!と電撃が走った。同様に感電したティナの魔力は回復したが・・・ルルイエは腰を押さえてカートゥーンコミックのように飛び上がった。
「せ、先生-ッ!」
ルナの悲鳴が木霊した。
天井すれすれまで飛び上がったルルイエはそのまま着地すると四つん這いになって震え出した。




