ティナの能力
ルルイエはティナを自身の目であれこれと観察してみる。
(思ったよりはコントロールできてるわね、人間の反応速度超えてるからつかめない人はずっと掴めないんだけど)
数多の属性の内、最も神秘に近いのが雷の属性と言われている。火も風も土も水もそれ単体は人間や数多の種族にとって非常に身近で、宗教の中には土から人を作ったともいわれている。
火は人の生活に密接にかかわっているし、水に触れない生物はいない、風もそうだ。
しかして雷はそうではない。見る事、聞くことはあっても触れる人間は限られているだろう。
そして川の水を堰き止め、風の流れを知り、火を起こし、土を捏ねて物を作る人が唯一操れないものでもある。
神の罰として聖職者が雷を操るのはその象徴といってもいい。
「雷の魔法ってそういえば全然見ないよね」
『そりゃそうよ、雷は特殊も特殊。っていうかこの子なんでFだったの?』
「火の魔法が出なかったからって言ってましたよ」
それを聞いてルルイエは溜息をついた。
『均一教育の弊害ねぇ、一対一の師弟教育ならそんなことありえないんだけど・・・』
「そうなんですか?」
『学校っていう施設の短所といえばそうなのかもしれないわ、どうしても多人数の面倒を一度にみるんだもの。だからこそ特殊な性質に対してはどうしても手が回らない・・・』
ルルイエは弟子は殆どとっていなかった。しかし長く生きた分、エトナ―の苦労する姿やその努力によって育っていった後続やアダムが救い、助けた人たちが育っていくのを見ていた。
そして何より自分を育てた者や知恵を与えてくれた者たちが自分に如何に力を割いていたか、心を砕いていたか。
それらを知ったのは皮肉にも導きたい存在が現れてからだった。
『ある意味、ルナちゃんがFクラスに入ったのは運命だったのかもしれないわね』
ルルイエの目にはルナとその隣に立つティナの姿が映る。彼女もまたルナほどではないしろ特殊な性質を持って生まれた子供だ。そしてルナの話を聞く限り、Fクラスには特殊な子供ばかりが集まっている。
『アダムだけじゃ手に余るでしょうねぇ・・・』
「ディーン先生が?どうしてですか?」
『アダムは先生としては上の方だろうけど・・・魔法のってつくとどうしてもねぇ・・・』
ルルイエは戦地帰りの魔法使いや職業魔法使いが抱える欠点を指摘する。
『彼らは研究者や信仰者じゃない、特にアダムは合理主義というか・・・魔法を道具や手段と割り切った思考をしてるからね』
「なんとなく言いたい事がわかる気がする」
ルルイエの言葉にティナが同意する。というよりティナもどちらかと言えばアダムの側だ。
彼らは学びの上で一点特化の教育を受けていることが多い。魔力のコントロール、魔力の鍛錬、属性の把握、魔法のコントロール。これらは確かに重要な事であるが魔法使いにとってこれは基礎基本。
何より大事なのは試行錯誤する精神性と魔法をあらゆる面で網羅する知識の絶対量が必要だ。
それにはどうしても長い研鑽の時期が必要になるし、即能力に結び付くものは決して多くない。
『まだ一年生だからいいだろうけど、もう少し深く学べばきっとアダムじゃ知識量の限界が来るわ』
「ディーン先生でも知らないことがあるんだ・・・」
『アダムがものを知らないというより、さっき言った職業魔法使いの欠点がそれなの。『能力に結び付かない知識や鍛錬を無駄と切り捨てて最短経路で育成する』これがよくない。教育するという点においてはね』
ルルイエはアダムの、『魔法使いとしては』ロマンに欠ける考えに溜息をついた。
『魔法は知識と好奇心、そして探求心が全てなのよ。魔力の多寡は無茶なことを考えなければいくらでも補える』
「あの、無茶って?」
『一国が一年に使う魔石と同等量の魔力を生成するとか、一点に集めて放出するとかみたいなこと』
「えぇ・・・なんでそんなこと」
『好奇心と探求心がそうさせたのよ、こっちは純粋な魔法使いの欠点だわ』
ルルイエは少し遠い目をしたがすぐにルナ達の方に目を向けて続ける。
『教育というのは訓練とは違う、『何故?』や『どうして?』を見過ごさないこと、その心を失わせないことが重要よ。そうじゃないと教え手の元を離れた途端に生徒はどうしていいかわからなくなる』
「ほえー」
「ほへー」
二人ののんびりした反応を見てルルイエはつくづく二人がFクラスに入って良かったと思っていた。
他のクラスがどういった運営をしているのかまではわからない。だが集団で彼女達のような性格の生徒ではアダムのように適度にせっつく性格がとても大事である。そして少人数で徹底的に管理することもまた同様だ。
『アダムに了解はとってないけど、必要になったら私もあなた達のヘルプに入るわ。そろそろ私もルナちゃんに師匠らしいとこ見せてあげたいし』
「わぁい」
「あざーす!」
わーい、と朗らかに喜ぶ二人にルルイエもつられて笑った。




