クロエの魔法とは
「これにいかなる性質があるか」
アダムは杖を取り出して目の前の霧に向けた。
「魔力伝導性質を見極める簡単な方法は霧に本来対になる性質をぶつけることだ」
水と火をぶつければ火が水を蒸発させてしまうか、もしくは火が水によって消えてしまうか。
当然の反応であるが、もしもこれと異なる性質があるならば・・・
「火か、霧に異なる反応が現れるはずだ」
小さい火の玉を作り出したアダムはそれを雲のように滞留する霧に向かって飛ばす。
全員の視線が霧に集まる中・・・
「わあっ!?」
「これは・・・」
霧にぶつかった火の魔法がまるで油を撒いた床に着火したように派手に燃え広がった。
クロエはそれに驚いて派手に尻もちをついている。
「・・・思った以上に癖のある魔法のようだな」
「これでいつもじめじめしてるの危なくない・・・?」
「湿気てるのかと思ったら人間着火剤だったとは・・・」
思った以上に魔力のコントロールが急務であることに気付いたFクラスは早速クロエの魔力コントロールに
取り掛かることに。
「先生、魔力のコントロールには何が効果的なんですかー?」
「そうだな、まず体内の魔力を知覚しそれを手先に集めるイメージだ。もしくは魔力が動いていることを手で感じとることだ」
アダムの言葉を受けて皆がうーんうーんと体の中の魔力を探ってみる。基本的に魔法が使える
者ならば造作もないことではるが・・・
「体の中にある熱いものというか、血と一緒に巡ってる感じするな」
「魔法をギリギリまでつかうと割と理解できますよ」
「体の中にお湯が流れてる感じをイメージするといいかも」
「自分の体の中にある力だから、熱と結びつけると良い感じだよね」
基礎基本であるからマリー、ダズ、テイロス、カティナはあっさりとクリアできた。
特にカティナはこのことに関しては一日の長があると言える。
「イマイチピンとこないなぁ・・・」
「・・・同じく」
「ええと、魔力が体の中にあるのはわかるんですけど・・・」
ルナ、クロエ、ティナの特異体質三人娘が引っかかった。
ティナは雷、クロエは霧、そしてルナはそもそも人外である。
ティナは体を巡る魔力の反応が強くなっているために知覚できなくなっているのが正しい。
雷の魔力を帯びているものは周囲にそれが伝播しやすく、自分の魔力と外に漏れ出た魔力が
繋がっている状態のため体内に残っている魔力と放出した魔力が混ざってわからなくなっている。
熟練した雷使いは体外に放出した自身の魔力をリサイクルして吸収できるため持久力を底上げできるのだが
未熟な者はそれが災いして自身の魔力がどれだけ体内に残っているかわからなくなりやすいのだ。
クロエは霧という元より不定形の形態であり、人は水として本能的に知覚しようとするが水とは形態が
微妙に異なる上に特異な性質が持っていてさらに反応が違うという困った状態の為
そもそも知覚するのが難しい。
ルナはそもそも全身に魔力が漲っており、しかもそれを既に本能で完璧に
コントロールしているからこその悪魔という生物である。なので人間の魔法使いが
魔力をコントロールすることを目隠しをして容器の中のどこかにある魔力を探してから
手触りや温度などで判断するとすれば悪魔は透明なガラス容器の中に入ったものを
外から眺めながら人間よりもさらにいろんな方法で触れたりしながら操作できるくらいの差がある。
ティナは反応が強すぎて全容を把握できず、クロエは魔力の質感が特殊なために知覚できず
ルナはそもそもが当たり前すぎてピンと来ていない状態だ。
「ほかになんかありませんかー!」
「・・・じめじめ」
ティナとクロエが音を上げるとアダムはうーんと悩む素振りをしていたがふと思いついたように
手を叩いた。
「そうだ、フラウステッドなら二人に魔力の流れを知覚させられるかもしれん」
「そうなんですか?」
「うむ、フラウステッドは特に魔力量が馬鹿げてるからな。まず肌に触れてだな」
「むぎゅっ!」
アダムの言葉の途中で二人は両方からルナのほっぺたに手を当てた。
「フラウステッドが魔力を・・・ぶふっ、循環させるとだな、豊富な魔力量だから動いてるのがわかりやすいと」
「わらっへまふへ?」
「思うんだが・・・そんなことは・・・ないぞ」
アダムは肩を震わせながらそっぽを向いた。
「とにかく、魔力を操作してみろ」
ルナはほっぺたを両方から平手で押されながらむーんと唸る。
「おお・・・すご」
「・・・これが魔力なんだね」
二人が驚いた様子で知覚できた魔力に触れているが周囲は顔がすごいことになっているルナをみて
笑いを堪えるのに必死だった。




