計測器
魔力計測器はこの世界に置いてかなり画期的な発明だったが
最近になって不具合がわかったのである。
「魔力計測器では体調不良を起こしていたり、魔力を消費した状態だと上手く計測できないことがあることがわかったんだ」
魔力計測器は魔力量そのものを測るものでは無かったために
発見が遅れたのだという。と言うのも魔法使いの世界は
座学から実践に移る際に総当りで魔法を行使して訓練していく。
その際に自然と得意な属性を多用していくことになるので
問題なかったのかもしれない。
「ミストの場合、霧の魔法を調べる上で必要なのでこうして借りてきたというわけだ」
「じゃあこの魔導書のほうが精度が良いんですか?」
「あぁ、魔法陣は魔力に反応して作動するというのは前に教えたな?」
再びルナ以外が首を傾げた。
「教えたはずだぞ・・・!」
「そうだったっけ?何かの間違いじゃないのー?」
「ええい!この!そんなふざけたこと言うのはこの口か!」
「いひゃいいひゃい!」
ティナがあっけらかんと言うのでアダムは憤慨してティナの頬を両手で引っ張っている。
「ルナちゃんは覚えてる?」
「う、うん・・・前にマリーちゃんの服を乾かす為に使った魔法陣の話だと思うんだけど」
「そうだ、フラウステッド」
アダムはティナの頬を抓る手を離すとルナとマリーに向き直った。
「この魔導書は魔法使いの素養を調べる為の物でな、計測器よりも高価だが微細なバランスの者でも計測することができるんだ」
「つまり、体調が悪かったりしても大丈夫なんですか?」
「ああ、元々は魔法使いの子供が魔法を使えるかどうか産まれた時に調べるためのものだそうだ」
魔法にも血筋によって紡がれるものもある。元々は秘術として研鑽されていた魔法が一度大きな戦争を受けて一般に普及し、それから厳格に管理されるようになって今に至るわけだがそれでも一族秘伝なんて魔法や技術が今もそこらに息づいているのだ。
そんな一族にとって大切なのは子供がちゃんと魔法の素養を持っているか否か。自身の研究を受け継いで発展させてくれる逸材か否かを生まれてすぐに判断されるというわけだ。
「これでまずは前から気になっていたミストの適性を調べる」
「・・・私の?」
「うむ、水の適性が無いのに霧の魔法というのはすこし納得がいかんのでな」
そう言うと魔導書を示して、クロエに魔法陣のページの上に手を翳す様に促した。
「どれどれ・・・」
「これは、水?それに・・・なんか変なマークが・・・」
「これは水に特殊な性質がついているということらしい・・・もういいぞ」
「はーい」
クロエが手をかざすと魔法陣の真ん中の部分に水を示すシンボルが。それに書き足す様になにやら
別の紋様が。皆がそれを覗き込んでいたがどうにも判別がつかない。
「えーと、この紋様についてのページが・・・」
「先生も知らないんですか?」
「魔力に付随する性質は広すぎてわからんのだ。水の中に火の性質が混ざってそれが湯気を作って、それが霧になるとか、水の中に風の性質をもったから霧になるとか、霧自体が珍しいのもあるが何しろ霧そのものなのか、それとも水になにかの属性が混じって霧を起こしているのか・・・」
ページをめくりながらアダムはあれでもない、これでもないと探し続けている。
魔法の中にある特殊な属性、霧や氷などは様々な複合した属性が絡み合って発生することがある。
この場合は適性に癖があると言う事であり普通なら「水」とか「火」が適性なところに「水と風」「火と水」などがセットになってしまっているため魔力の循環やらなにやらに特殊性が混ざるのだ。
「えーと、ミストは水の魔力に適性があるのが分かったが・・・これか」
ぺらぺらとめくった先にアダムは同じ紋様を見つけて・・・思わず目を疑った。
「魔力伝導・・・性質?」
「なんですかそれ?」
「読んだ字がそのままなら魔力を伝える性質だろうが・・・」
全員の視線がクロエに向いた。
「・・・なに?」
見られているのがちょっと嫌なのかじめじめ度合いが増した。
「霧だしてみ、ほらほら」
「いきなりなんなの・・・?」
「魔力伝導性質とかいう特質が出たんだ。ユピトールじゃないが調べる必要がある」
「うーい・・・」
クロエはうーん、と唸りながら杖をにぎりしめると彼女の周囲にもわもわと白い霧が雲のように発生した。
彼女から離れて少しの間ふわふわしていたそれはやがて煙が空気中に散らばるように消えてしまう。
「見た目じゃわからんな・・・もう少し離れた所に出せるか?」
「・・・はーい」
杖を指し示すと今度はまるでスチームが噴き出す様に杖の先からプシューと噴き出していく。
今度は彼女が集中しているからか長く滞留している。




