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闇の勢力?

「ま、まってくれ・・・そ、そうだ!その悪魔の情報を知りたくないのか?」


そう言いながらへつらうように笑みを浮かべた男を再び女性は蹴り飛ばした。


『お前が戦った連中はな!魔法学校でなんて呼ばれてるか知ってるか?「落ちこぼれ」だってさ!お前は!そんな奴に負けた愚図なんだよ!』


言葉の節々で男を踏みつけながら女性は宣う。よほど先ほどの衛兵の言葉が腹に据えかねたのか、

それとも男と女性に確執があったのか。侮蔑の中に怒りすら滲ませて蹴りを入れる。


「や、やめてくれ・・・私が、私が悪かった・・・」

『黙れ、実力を鼻にかけてウチに厄介ごとばっか持ち込んでさ!お前が!いなかったら!あの聖人に!目を付けられることも!なかった!』

「ぐぶっ・・・おごっ・・・・ゆるじでぐれ・・・」


元より抵抗らしい抵抗もできない状態だったが女性の蹴りでさらにそれが酷い有様になっていく。


「そこら辺にしときな」


女性がその声に視線だけを向けると暗闇からくたびれた修道服をなびかせてエトナーがやって来ていた。


「相変わらずセクシーな格好してんな、『布隠れの魔女』さんよ」

「どこ見て言ってんのよ」

「乳だけど」

「はっきり言うな!」


女性こと布隠れの魔女はエトナーのノンデリ発言に憤慨しつつ、纏う布をまるで槍のように尖らせて突き付ける。


「なんの用?返答によってはタダじゃおかないわ」

「それはこっちのセリフだ、バカ。異端者を匿って何やってんだ?お前んとこの総帥はマジでお人好し過ぎて困るんだよ」

「私が知るわけないでしょ」

「そうかい、なら私が関わる理由も無いわな。ソイツ置いて帰んな」


シッシッ、と手を振るエトナー。よく見ると手に持っているのは普段もっている十字の杖ではなく酒瓶だ。

それを見て布隠れの魔女は顔を赤くしてエトナーに飛びかかった。


「舐めるなーっ!」

「やかましい!」


布隠れの魔女がボロきれを槍のように尖らせて突き出したのをエトナーは僅かに身を捩って躱しながら酒瓶の中身を飲み干すと空になった瓶で魔女の頭に叩きつけるようにフルスイングした。


「ぎ、ぎゃあっ!信じられない!」


頭を押さえてのたうち回る魔女を後目に割れた瓶を放り捨てると革袋を取り出してごくごくと

また酒を飲み始める。


「わ、私を前にそんな余裕でいられるなんて・・・」

「実際余裕だしな」


エトナ―は口元を手で拭うと魔女を見下ろしながら指をくいっと動かす。


「何を・・・ぎゃっ!」


その瞬間に小型の雷が魔女を打った。聖なる輝きを纏う天罰に連なる悪を焼く雷である。


「いいか、お前程度は指先一つで十分なんだ」

「ぐ、くっ・・・」

「大方、総帥の防御が機能してる本部での戦いを想定してたんだろ?甘いぜ」


魔女は自身が目測を誤ったことを痛感していた。聖人エトナ―。

想像以上の化け物だ。準備動作がほぼなしで雷を落とせるのはあまりに無法である。


「アイツもなかなか達者になったが、ま・・・私からいわせりゃまだまだだ」

「貴様に何がわかる・・・」

「分かるってか、あれだ。アイツは人の善意を信じすぎるタチってこった」


聖職者ならよかったんだがなぁ、とエトナ―は言う。


「魔法使いなんて外法や禁術に触れるような世界で頭張るにゃあちょっとばかしお人好しすぎるってことさ」

「それは・・・」

「だからあんなのが混じる」


エトナ―が再び指先を動かすと逃げ出そうとしていた男の頭上に雷が落ちた。


「お前さんがアイツの組織の中でどれだけ偉いのかは知らんが、ああいうのとは手を切らせろ。でないと今度はマジで潰すぞ?」

「言われなくとも・・・」


魔女はボロきれに身を隠す様に引っ込むとまたひらひらと宙を漂う。そして男の隣を通り過ぎる際に


「言われた通りに、手を切らせてもらうわ!」


男の両手を先ほどの槍とは違う形に変形させて斬り飛ばした。


「ぎゃああ!」


男はなくなった両手を見て痛みと絶望で絶叫する。魔法使いにとって魔力のパスが集中する手を

喪う事は死に等しい。特に彼は多種多様な魔法を杖に魔法を仕込み、それを精密な魔力操作で使用する。

手先の感覚とリンクさせることで瞬時に多様な魔法を使っていたのだが手が無くなった場合はそれが

不可能になってしまう。本来ならば抵抗できたはずのルナとの戦闘で腕を折られてから

やられたい放題だったこと、縛られてからも抵抗できなかったのはそれに起因する。


「あーあー、ひでえことしやがる」


言葉とは裏腹にエトナ―は面倒くさそうに肩をすくめて溜息をついた。元より死刑が確定する罪人でもある。

それ故にその因果がこの男に巡った結果であるとエトナ―は考える。


「『銀の黄昏』に月の導きあれ!」


魔女は高らかに叫ぶとその姿は掻き消え、ボロきれはそのまま風に乗って何処かへと飛び去っていった。


「腕、う、腕・・・私の、うで・・・」

「命と尊厳を奪い続けてきた報いがそれか、ま、刑が執行されるまでせいぜい慚愧の念でも抱いとけ」


エトナ―は男の手の傷口を縛って止血すると切断された手を見ながら呆然とする男を他所に

再び酒を呷った。

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