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不毛な☆高☆校☆生☆活☆  作者: 盲目正法
学校打ちこわし編
3/4

彼の怨言

 「片っ端からすべての不平不満文句を垂れ流そうものなら本一冊では収まりきらない。ゆえに端的に述べよう。」

 彼こう切り出して、高々に主張し始めた。さながら、意義を突き付ける弁護士のように

 「この学校のおかしいところ

 第一、何もかもが古い。そして変わろうとしない。創立50年を過ぎてもいまだに一度も校舎を建て替えていない。結果として雨天で廊下に並ぶバケツ、今時誰も望んでいない和式トイレ、極めつけは冬の暖房も夏の冷房も温度調節がきかずmax mideum minimumの3段階しかない。うち二つは弱すぎて何の足しにもならない。maxはあまりにも効きすぎて、夏は腹を下す人が続出し冬の体操服を上から羽織るという事態になるし、逆に夏の風物詩ともいえよう下敷きやうちわであおぐのは冬の出来事である。結果暗黙の了解としてクーラーは使用禁止。あまりの設備の不備にあきれる。ただあきれるのは設備だけではない。体制もひどい。女子はおさげ、あるいはポニーテールを強制される。()()()()()()()()()()()()()三者面談。ブラック校則の最たるものだ。あいつ(理事長)の好みでそう何もかも制限されてはたまったものじゃない。結果おしゃれをしないことが美徳とされる雰囲気を引っ張ったまま大学に行き赤っ恥をかくという話が毎年絶えず笑えない。いや、この学園の卒業生だ、きっと素直で真面目(洗脳されている)なので笑ってるに違いないだろうけど自分だけは決して笑わん。」

 一橋琴百合さんが

 「はたして本当にそうでしょうか?古き良きなんて言葉がありますし伝統を重んじる高校なのではないでしょうか?」と彼の冒頭陳述を一旦遮る形で疑問を呈する。彼が弁護士であるならば一橋琴百合さんは検事にあたる構図が出来上がった。一橋琴百合さんは学年主席の才女であり、学校でもトップクラスの美少女でもある。才色兼備とは彼女のために用意された言葉に他ならない。性格に関しては言うまでもないだろう。クラスの誰もがあまりのヤバさに忌避する彼にかかわるだけの度量や器量があるのだから。ま、こういう具合でいくら総合しても彼女に関しては本物で、悪名だけはなぜか立たないどこまでも偽物の平松とは異なる。ただ、やはり彼女は彼に関わりすぎるところが玉に瑕だ、というのはクラスの総意である。

 彼女の紹介を脳内で済ましている間に「古き良き」、「伝統」という言葉に反論する手はずを整えた彼がしゃべり始めた。

「君は伝統と言ったね?僕はね、伝統と言う言葉は必ずしもいい意味を成すとは考えないんだ。そして今回は良い意味をなさない伝統がこの学校では習わしとして疑いなく信仰されていることに気持ち悪さを感じる。大体君もわかっていながらあえて言ったんじゃないか?」

 彼はそう返した。彼女は上品に微笑んだ。それの意味するところを表情から読み取ることはできなかった。そこには完全に二人の世界(フィールド)が出来上がっていた。だが、その世界(フィールド)に彼は気づいていない。孤立する所以だ。彼に対するディスはこの程度にして、彼の話を聞こう。彼は日ごろから学校に対するヘイトしか抱えていないのでまだまだ続ける。いや、続けられてしまう……

 「第2、雰囲気がよくない。明朗誠実が校訓となっているのに現実は陰湿姑息ではないか。全員が互いに尊敬せず、格付けして、内輪で盛り上がる。閉鎖された環境がその異質さに一層拍車をかける。「弊学ガラパゴス化」なんていって初めのうちは半分その生態を興味深く感じ、揶揄したものだ。僕が見てきた世間からは大きくずれた世界がそこにあった。学力至上主義といういかにも馬鹿が生まれそうな風潮が諸悪の根源だ。ペーパーテストができれば何でもできると思い込んでいる。その思い込みがしっかり勉強以外の場面でも発揮されているところが面白い。一流の人はいつだって多角的な視点で物事を評価していたし自分のことを客観視できていた。指導者は何を見ているんだろうか?数字で表されるデータばかり見て潜在的な力を解放しようとしない弊校は学ぶ場としてふさわしいのか?はなはだ疑問だ。そのうえ弊校は「世界で活躍するリーダーを」なんて賜ってるが理想だけで行動を伴わないことがよくわかる。要は進学実績というわかりやすい単一の評価ばかりを追い求めてもっと大きな目的を見失っている。2流や3流が伸び悩むのは大体こういうところ。それなりに優秀な人材が集まるがゆえにこの学園に適応しつつも社会でも一定数活躍している人がいる。ただ、その人たちがこの学園で力を伸ばせたかと言われると疑念が残る。」

 彼は続ける。あまりにも長くついていくのをあきらめつつあるが、ここまでの話は弊校の学力至上主義の風潮に対する不満だろう。生徒に向けて言いつつもシステム時代に文句をつけている。そのころ一橋さんはというと何かずっと手を顎に当て可愛らしく首を横に傾けながらじっと考え込んでいる。

 「今までの弊校の歴史を鑑みれば、生徒に補習や課題で縛り付け社畜のような生活を送らせていた。朝の7時前から朝の課題、夜8時まで残す補習、土曜授業、週40コマのうちたった2回の体育、放課後・休日にはまじめにやったら睡眠時間をかなり削らなければならない課題、形式ばって本質をなさない校則、等々今は亡き悪しき風習はあれど手を変え品を変え脈々とその土壌は受け継がれている。結果生徒全員を何らかの形で歪ませる。蹴落としあい、蹴落としあった先の同質性。同調圧力。それらが、学校生活の中で感じるたびに自分が歪みそうになる。」

 「例えば体育。カースト上位の人間がスポーツの上手さ下手さ関係なく中心になってやる。完全にそのカースト上位30%弱の人間のために残りの70%が抑圧されているということ。謎の空気が空間を支配し出る杭を許さない。初めて自分が参加したときは驚いたね、無能な人間が自分が有能だと信じて疑わずに周りに威張り散らかしたり上から目線で話しかけている姿に。ほかにも席替え、教師に対する態度、清掃どの一つとっても情操教育をどこにおいてきたのかと思われることが多くて仕方ない。」

 もう僕は止め時がわからない。いつもの良くない癖が出ている。自分で話をしながら自分を傷つけてる。

「第三、俺が、お」

 と彼が話しかけようとすると一橋さんが立ち上がって、座っている彼の目の前でかがんで手を頭にのせた。そして、抱きしめながら

「レオ君のおかれているどうしようもない状況はよくわかってるしよくわかった。学校の古さは私も感じるところがあるよ。君が自分を押し殺さなきゃならない。立ち向かうこともできずにその圧力の中かき消されてしまう。存在を否定されるような気持ちを味わうこと。でも、自分の存在をこの状況をどうするのかは君次第だよ。」

 そういって彼女は物音ひとつ立てず教室から出て行った。彼女が出て行った別のドアから彼も出て行った。

 彼があまりにも悲惨な状況におかれていた。何度も立ち上がってはいつの間にか満身創痍になって戦いにでることが()()()()なってしまった。その凄惨さを一人残された部屋で考えていた、、、がそれよりもこのような現場に居合わせた僕の凄惨さのほうが甚だひどい。なんだよあのリア充は、ひねくれてて友達も多くないし学校になじめてないのに女の子に構ってもらえるなんて羨ましすぎだろ。

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