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9.これでよろしかったですか?-流石、交渉事には慣れているな、合格点だ-

全48話予定です


曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です


 一度話がまとまれば、あとはスムーズにいくものである。カズはそのまま国賓待遇で食事までご馳走になって、しばしの談笑をしたのちにまた空の人になり、無事にアルカテイル基地まで戻って来た。


 アルカテイルでは基地司令が出迎える。


「どうだったね?」


 と早速聞いてくるので、


「もちろんお話しますよ。ですが、折角ですから向こうの人とも話をしませんか? そうすれば、もしも問題解決の必要性が出た場合に対処が容易ですから」


 と、[手間は一回にしたい]とは決して言わずに基地司令、参謀と例の作戦室内にある別室に入り、


「カズであります」


 と同盟連合の中枢である政府と軍の上層部に話を通した。


 カズは一連の話をすべて伝えて[これでよろしかったですか?]と尋ねる。


 その質問には、


「流石、交渉事には慣れているな、合格点だ。こちらとしても後方の盾は必要だからな」


 それはこの地が直線距離でも二〇〇キロしか離れていないという事実がある。今までは内戦をしていたし、帝国も旧イエメンにはほとんど訪れなかったから[まぁ、よし]としていただけの話である。


 だが、帝国は第三弾としてこの地の本格占領に動いた。それを今回は情報部がかろうじて進軍より早くキャッチしたから勝てたのだ。


「実際、今回は情報戦勝ちでしたね。もう少し遅れていればどうなっていたか。アルカテイルやエルミダスの後方を取られるのはまっぴらですから」


 その通りである。


 もしも旧イエメンに帝国の空母が常駐でもしたら? こちらとしてはやりにくくて仕方がない。ただでさえこのアフリカという大地は、三国がそれぞれ主権を争っている地でもある。もちろんアルカテイルとて決して安泰という訳でもないし、後方になったエルミダスという土地だって無論手放しで安泰とは言えないだろう。


 更に言えば、二都市の中間地点にあるミラール市だ。ここは先の防衛線で帝国の核によって街の半分が汚染されてしまった。その人的被害も相当なものである。そのミラールを同盟連合はあえて見捨てたりせずに駐留という形で占領、人道支援を行っている。


 初めは帝国曰く[同盟連合が卑劣な攻撃をした]と流布しようとしていたが、流石は論より証拠という訳ではないが、口より手を動かした同盟連合の優勢、といったところか。ミラール市民は、今は帝国より実際に支援してくれる同盟連合への支持が厚いと聞く。


 そんな三都市を同盟連合は手に入れた。そして後方の守りまで手に入れたのだから、これは強い味方になる。


 何と言っても基地や港湾が使用できるのが大きい。それは上層部も分かっているようで、


「旧イエメンには二八Fを配備しよう。そうすればこちらの二八Fはすべて出払うし、三五FD(D、つまりは複座化してある機体。サブプロセッサーを搭載するためにあえて複座化した機体を全世界展開している)を本州やヨーロッパに配備するきっかけになるからな。その地を武器庫として見ているのは了承した。そちらの工業部分についても至急援助しよう。現在、米州の艦隊の一部をそちらに派兵しているが、それは常駐の艦艇として運用しよう」


 と相手からは帰って来る。


「では、内戦の終結に一役買って出るのはありですね?」


 とカズが問えば、


「もちろん、ジュケーとの睨み合いがあるからその辺りの判断は一任しよう」


 つまりは[お前に任せた]という奴である。


 回線はそこで切れた。それを見計らってか、


「しかし、きみには恐れ入るよ。実働をいつも任せてすまないな」


 カズは基地司令直轄である。形式上は基地司令が直属の上司、という扱いになるのだ。事実上の上官は司令のみ、そして階級に関わらず発言権があるのだ。なので、例え相手が階級が上だったとしても命令に背くことも出来るし、何ならこちらから司令を通じて命令する事だって出来る。


 更には、カズが所長を務めている研究所、というのは政府直轄である。それだけ政府中枢の人間ともパイプがあるし、その人たちと対等に話をする事が出来る立場にいるのも事実だ。現にこうして回線を開いて話もすれば[お前が行ってこい]と全権代理として出向く事だってあるのだから。


 そしてそれは[気に入らない、必要ない]とカズが思えば、目上の人間とて簡単に首を挿げ替える事だって可能なのである。それが基地司令や参謀、というとても立場が上の人間であってもだ。


 だが、カズはアルカテイル基地司令を信頼している、といっていい。


 以前に、


[司令、私は貴方をとても信頼しています。それは上官としてだけでなく、人間としてでもあります。私が意識不明の時の話は聞きました。クリスやアイシャ、ミーシャたちを守ってくださって本当にありがとうございます。それだけでなく、日頃からのご厚意、身に余るくらいですよ]


 と言った事があった。


 カズはあまり世辞を言うタイプではない。


 そのカズをしてそんな言葉が出てくるほどには信頼しているという証なのだ。


 そして基地司令もまたカズの事を高く買っているのである。


全48話予定です


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