8.ここに相互の拠点を築きたいと考えています-この地を治安のいい土地にしましょう-
全48話予定です
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
「同盟連合に所属となれば必然的に色々な制約が出てきます。例えば、軍事負担等になるのですが、貴国は確か……」
とまで出たカズの言葉を、
「ええ、ご存じの通り帝国が武器ごと解体していったのです。今残っているのは人員と、小火器くらいなもので」
と返してくる。
――ならば。
「では、軍事供与はこちらからしましょう。もちろん教練も行います。その代わり、そちらには人員の提供と、近隣国への防衛を担ってもらいます。ご存じの通り、一度は失ったエルミダスという土地に我々は返り咲きました。今ではアルカテイルという都市まで侵攻し、その拠点を築いています。ですが、この土地はここからも近ければ帝国領、ひいては共和国領からも近い。お分かりですよね?」
と問うてみる。これで相手の理解度が分かるはずだ。カズが一体何を言いたいのか。
「それはつまり、エルミダスの後方を担え、と?」
――話が早くて助かりますよ。
カズはいつもの通り微笑みを浮かべている。
そして、
「そう、我々はここに相互の拠点を築きたいと考えています。当たり前ですが、我々はどこかの国と違って内戦を放っておいたりはしません。軍事力を、と言いましたがそれは警察力をという意味も含めます。まずはこの地を治安のいい土地にしましょう。そして、限りある資源は有効活用しようではありませんか」
カズのその言葉がダメ押しになった。
「やはり、我々は貴方がたの国に入れてもらいたいと思います」
そう言わせたのだから。
カズは一通りの国家としての同盟連合の説明をした。
それは、軍事でも相応の負担をする事の他に、他国に軍事介入されそうになった場合は、救援するというのも含まれる。政治、通貨、そして同盟連合で定めた一定の法律という、それぞれの単位を統合する事を了承しない限りは加入できない、と。もちろん同盟連合に加入すれば代表を送ることが出来、発言権もちゃんと与えられる。そして現在、同盟連合は各州の合議の元で政治や経済が進んでいると。
そしてひとたび同盟連合に加入したら、もちろん離反は全力を持って鎮圧にあたる。基本は相互に助け合うという成り立ちまで含めて話をした。
「ですので、産業がなければ作ればいい。同盟連合はその育成も視野に入れています」
カズがそう言うとどよめきが起きた。
カズの言う産業。それは今現在、弾薬を含めて本州である旧米国から輸送している、その弾薬だけでも作れないか、という話なのだ。
この国の立地を考えれば、武器庫が近くにあるというのはとてもありがたい話である。そして、雇用が生まれるという意味でもこの国、いやすでに州というべきか、にも利益がある。さらに言えば、この地は石油が採れない訳ではない。その採掘も行えば雇用が創出できるというものだろう。
だが、問題が無い訳ではない。
内紛、いわゆる内戦だ。鎮圧する側の武器が弱体化しているというものある。内戦の主導側の武器も不足していると言ってもいい。実際の内戦は互いに小火器でやりあっているのだ。そこに突如現れた人型。それはさぞかしまぶしく見えただろう。
「拠点の制圧に少しばかりお力を貸して戴けないでしょうか?」
それはこの地でレイドライバーを運用して欲しい、という話になる。
――やっぱり来ましたね。
「それは重火器ではダメだ、と?」
カズがそう返すと、
「市街地戦になると、ご存じの通り重火器は逆に取り回しの面で不利があります。先ほどの戦いは我々も観戦させてもらいました。あれなら長きにわたった内戦に終止符が打てるのではないかと」
それは確かに言えている。
レイドライバーは、特に人型のこのタイプは全長約八メートルと戦車を縦にしたような大きさだ。だが、その違いは機動力である。機械化部隊では到底入っていけないところでもレイドライバーならば入っていける。
だが、それは同時に小火器武装の[人間]にレイドライバーの弾をバラまくというのを意味している。
だが、カズにしてみれば[今更どの口が]である。だったら、
「分かりました、協議してみます。ただし、こちらもそんなに数がある訳ではないので一体か二体程度になりますが」
と続けた。
その言葉に、
「是非、我が州の復興のお手伝いをして頂ければ」
話はまとまったのである。
全48話予定です