7.[カズと会いたい]と言ってきた-お待ちしていました-
全48話予定です
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実際、民間空港であるサヌア国際空港に、特例とはいえ他国の戦闘機が降り立ったのだ、その衝撃はあると推測される。それを差し引いても彼らは[カズと会いたい]と言ってきたのである。
迎えの車に乗って、一路議事堂を目指す。それは国賓を迎える為に用意されたといっていいクラスの車である。
――本当に国賓待遇なんだな。
パイロットスーツから、普段はあまり着ない正装用の制服に着替えて短い車の旅を満喫、とはいかないものだ。こんな時も神崎の顔が浮かぶ。
そんなカズの緊張もものの数分でマックスに達する。議事堂に到着したのだ。
ドアマンがドアを開けるとそこには、
「おぉ、お待ちしておりました」
と同盟連合の第一言語で話す初老の人物がいた。
「初めまして、わたくしは人型の統括責任者であるカズ中佐であります」
と手を差し出す。
向こうも、
「お待ちしていました、マフムード・アフマドという者です。ここの元首のようなものをやっています」
と手を握り返される。そしてそのまま[さあどうぞ]と議事堂の中に通される。
内部は流石中東、という作りをしている。白が基調の、華美な装飾はないがそれでいてしっかりとした作りになっている。
――高いんだろうな。
ふとそんな考えがよぎる。カズは緊張するとそれを和らげる思考をしたがる。シリアスなのにギャグに走るようなものだ。そうする事で緊張という余分な力を抜く効果が期待できるからだ。
常に微笑みを絶やさず、ほんの少しだけ高めの声でハッキリと話す。これがカズが今まで一貫して実践している処世術というものなのだ。相手にはバカにしているようには捉えられず、それでいて余裕のようなものを見せる。そして交渉でより優位に立つ。
カズにとって交渉事は負け戦ではいけない。無論、必ずしも勝つ必要はないのだが、ただ素直に相手の言う事をハイハイと聞いたのでは不十分なのである。勝てるなら確実な勝ちを、相手には[いやぁ今回は互角でしたね]と言っておきながらその実で利益を分捕る。それが負け戦でもそうだ。負け戦なら負け戦のやり方がある。
――さて、と。あの娘は箱の中で一体どうなっているか。閉じ込めた手前、交渉とはかくあるべき、というところを見せないとね。
そう考えている頃にはいつものカズに戻っていた。
そして目の前が開ける。
「どうぞこちらに」
そう言って通された部屋には十数名の人間が揃っていた。
「ご紹介しましょう、我が国の閣僚、のようなものです」
マフムードはそう言ってそれぞれを紹介した。カズはもちろん笑みを持って[どうも]と返す。それらが一通り終わって皆が席に着いたのをマフムード自身が確認して、
「では、これからの協議なのですが」
と続ける。
「ええ、まずその前に確認しておきたい事があります。貴国は同盟連合への加盟をご希望ですか? それによっては貴国は一つの州になるというのを事前に了承いただかないと話が進まないのです」
と救心を突く。カズ的には[ここで腹芸を探っても意味がない]と判断したのだろう。
向こう側では何人かが話をしたあとにマフムードが、
「ええ、それを希望しています」
確かにそう言ったのである。
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