5.戦闘行為は厳禁とされた-マスターに報告する事柄がまた増えましたね-
全48話予定です
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その後の展開としては撤収を、という運びになるのだが、戦闘行為は厳禁とされた。結果としてこの戦域での勝利は同盟連合が納めたという扱いになっているのだ。だから同盟連合側からも攻撃の弾は一発も発射されなかったのだから。
ゼロフォーはスリーワンに指示してスリーツーの撤収作業に当たらせていた。スリーツーとて腕が動かなくなっただけなので自力で移動は出来る。しかしながら持っていた盾やマシンガンといった所持品は必然的に誰かが運ばなければならない。
もっと言えば、二国間で停戦の取り決めが行われたとはいえ、末端の人間が必ずそれを守るとは言い切れない点だ。この戦域に限って言えばまずないとは思うが、損傷したレイドライバーの鹵獲などという失態は絶対に防がなければならない。
そしてゼロフォー本人も同じくアデン港にいた。
カズが[向こうと話を付けたから、アデン港で積み下ろしをしよう]と言ってきたからである。その積み下ろしというのは帝国のレイドライバーを指す。その為にここまで移動して来たのだから。
意外だったのは帝国のレイドライバーは脚部を損傷していても、移動は単独で出来るという点である。平坦なところでは足を固定してローラーで転がるように進み、傾斜のあるようなところは無事な方の脚部に重心を置いて足を引きずるようにして移動する。
もちろん無事なイリーナ機がアシストはしているが、積極的に手を貸そうとはしていないところを見ると帝国の技術もここまで来たか、と感じさせられる。
――マスターに報告する事柄がまた増えましたね。
今回、ゼロフォーはカズから敵の分析を逐一してくるように言われている。レイドライバー単体としての性能はもちろんだが損傷を受けた機体の処遇についても言える事だ。とにかく何でもいい、一つでも相手の手の内を拾ってくる、これが課された使命なのだ。
そうしているうちに敵のレイドライバーが港までやって来た。今更なのか、それとも失念しているのかホログラムはいれていない。まぁ、どの道ここまで戦闘を繰り返した相手だ、今更シルエットを隠したところで、という話なのである。
それよりも。
――損傷したほうはやはり自発的に搭載は出来ないのか。
ちょうど潜水艦の後方、収納スペースがある辺りの先端にクレーンが付いていて、それを使って格納するようである。格納方法としては、腕を器用に胸の前側に折り曲げて肩幅を狭くして膝を立ててそのまま搭載、となるようである。
この辺りは想定の範囲内と言える。何故なら、レイドライバーを収納するのに一番のネックは肩幅と身長だからである。だから肩に関節を一つ加えて可動式にし、更に立ち膝のような体制を取る事で全長を少しでも縮める。元々がミサイル発射搭があった場所だ、立ち膝という体制を取っても深さとしてはある程度確保できると推測が付く。
――さて、問題は。
イリーナ機である。彼女の機体は被弾していない。それはつまり自力で搭載出来るかどうかという話に繋がる。
もしも自力で搭載が可能で、自力で陸揚げが可能なのだとしたら? それは港という施設を選ばなくても上陸が出来るという可能性が出てくる。もちろん防水がどこまでされるかにもよるが、これは大きな着眼点だ。
しかしそこは帝国とて手の内を見られている、という前提がある。ご丁寧にクレーンを出して港に寄せた状態で静かに収納していった。
だがそこはゼロフォー、じっくり観察していて、おそらくは単独での格納が出来るだろうとの推測を立てた。単独での運用が出来るかどうか、それは格納される際の動きで分かる。本人たちはカモフラージュしているように見えてもレイドライバー本体の動きで推測が付く。じっとしていられないのである。姿勢を少しずつずらしながら器用に入っていく。
――なるほど、これは同盟連合にも必要な装備になりそうですね。
ゼロフォーはそんな事を考えながら潜航していく潜水艦を見送ったのだ。
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