人はそれを、全力と呼ぶ
戦闘が白熱すると同時に、作者も変なテンションになって執筆意欲と速度にバフがかかることが判明しました。
フハハハハ!私はテンションファイター……いや、テンションライターだ!!はっはっはっ!!(情緒不安定)
「ニヒミ!」
それは、今習得している魔法の中で、おそらく一番使い道がないであろう魔法。これで蛇にダメージを与えるのは不可能と言っていい。ではなぜ発動したのか。
俺は雪の玉を敢えて蛇に当てず、違う方向に飛ばす。その雪玉は木にぶつかる。
戦っていて、わかったことがある。このモンスターは賢い。先手を打たず、相手の動きを待ち、杖を向けると射撃系の魔法を警戒し、ルルとエンチャントのコンボを見せた結果、攻撃に尻尾を多用し、目などの弱点のある顔を攻撃に使う回数を減らし、確実に当てられ、反撃がないときにしか噛みつき攻撃を行わない。
こういうタイプに一番いいのは、ブラフだ。
雪玉を明らかに、意図的に外して木に当てる。この動作に意味はない。だか、思考する生き物は、その意味を考えてしまう。何らかの効果があるのではないか、何らかの攻撃なのではないか。それとも、ただ外してしまっただけではないのか。意識がそちらに向く一瞬の隙。
ミドルマナポーションを飲んで跳躍し──
「ルル!」
左手でビンタ、顔の左半分を凍らせる。
物理法則に従って下に落ちていく。氷の打撃は無理だ。だが、脆くなった顔ならばこれで十分。
「バスラ!」
それは見事に左目を撃ち抜いた。
着地。まだ戦いは終わっていない。
「隻眼でかっこよくなりましたってかぁ!?」
煽り。意味があるのかはわからないが、人語を理解せずとも、賢いAIを積んでいるなら煽られている事実くらいはわかるだろう。
「チリド!」
さらに今まで見せていなかった魔法を使用。やはり初見だと対応に遅れるらしく、隙をついて肉薄。
「ルル!」
最後のミドルマナポーションを飲み──
「魔法付与:冷雪」
腹に一撃。先に限界を迎えたのは──
[武器破損]
こちら側であった。
「クッソ、あぁもう仕方ねぇ!」
跳躍する。
「魔法付与:冷雪」
武器を装備していない状態で、エンチャントを使うとどうなるのだろう。エンチャントとは武器に魔法を付与するものである。武器を装備していない場合、不発に終わるのか。答えはNOである。
「おらぁっ!」
エフェクトを纏った拳が叩きつけられる。
このゲームにおいて、素手もまた、武器として扱われる。
着地、プシュッと音がする。包胞草を踏んだ。即座にアンチドートを飲む。
「くっ、やっぱ反動ダメージあるし、かじかんで左手はもう使い物にならなさそうだな。右じゃなくて本当によかった」
利き手が使えなくなるのはマズい。
ローポーションを飲みながら、未だ息絶えていない蛇をどう倒すか思案する。
「とりあえず目眩ましだぁっ!」
アンチドートが入っていた空の瓶を投げつける。
……これだっ!MPが足りない!時間を稼がなくては。30まで回復する時間を。
「かかってこいよ!」
挑発。杖を失い、魔法の発動はないと考えたのか、或いはマナポーションを飲んでいないことから、すでにMPがカツカツなのを察したのか、噛みつき攻撃を選択してきた。
フラスコを投げつけるが、迷わず突進。右腕に掠る。さらに尻尾攻撃。アンチドートを飲みながら、イヴェイシブアクション起動。間一髪、上に跳んで躱す。
ローポーションを飲んでいると、噛みつき攻撃が来る。ギリギリで躱す。
「ツラン!」
声に反応し、咄嗟に相手は退く。だが残念だったな。そいつは嘘だ。そんな魔法は存在しない。
「魔法付与:冷雪!」
武器を持っていないとき、拳にエンチャントされる。それは、何も持っていない場合だ。何かを手にしている場合、それが臨時の武器として判断され、それにエンチャントが付く。
エンチャントされたフラスコを蛇の頭上に投げ、もう1つのフラスコを投げてぶつけ、エンチャントされたフラスコを割る。砕けたガラスの破片はエンチャントを保ったまま降り注ぎ、いくつもの破片が蛇の肉体に刺さり、傷つけた。
それでもまだ倒れない。
「回復量がMP上限超えてるから勿体無い気もするけど、仕方ない!」
ハイマナポーションを飲む。
ちょうどとなりに、宝石が落ちていた。それは、杖についていたもの。奇跡的に宝石部分は壊れず、アイテム化していた。
それを掴む。やることは1つ。
「魔法付与:冷雪、魔法付与:冷雪」
2度の詠唱。1つは宝石に効果をもたらす。俺は知る由もなかったが、その宝石は氷属性の魔法の威力に補正をかける。威力が上乗せされたエンチャントは、蛇の体にぶつかる。
そしてもう1つは──
「シャー!」
蛇がこちらに近づいてくる。
だがしかし。
「残念だったな。足元注意、だぜ?」
もう1つはフラスコ。それを地面に投げて割り、まきびしのようにしたのだ。
グサリとガラスの破片が幾つも刺さる。
「シャー!!」
蛇の苦しむ声。そして、ついに蛇はその場に倒れ、ポリゴンとなって散った。
「勝った……」
残ったのはローポーション1個だけ。あとは魔導書と、いくつかの素材だ。杖まで壊れた。今使えるほぼ全ての手札を使い切った。
ドロップアイテムと、奇跡的に生き残った宝石を拾い、ステータスポイントの割り振りをしようとしたその時。
「そこの君、アンフィニッシュドナーガをあのように倒すとは……いったい何者だ?」
軽装備に剣を携えた女に話しかけられた。
作者は執筆中、主人公のMP管理に追われてたとか追われてなかったとか……
白熱したバトルは消費カロリーがえぐいので普通に疲れるけど、それ以上に楽しさが勝って、結果疲れを感じさせないでノンストップで執筆を続けられます。終わると疲れが来ます。