空気が泥沼のように
なんか、なくていいかなぁって思ったので、サブタイ消しました(理由が適当すぎる)。めっちゃ軽いノリでタイトルを変更する作者、星海 しいふです。
「理由はそれだけですか?」
虎の顔を持つ男が聞く。
「それだけだ。何か問題が?」
「今この国にいる人間たちは、何かしら我が国に貢献した者、故に入国を許可しているのです。鍛えるだけならここである必要はない。違いますか?」
「ここの施設はどれも貴族に相応しい一流のものだ。武器の作成などはここでやる方がいいだろう」
「貴族に相応しい一流の施設だからこそ、利用できる者は選別せねばならないのです。彼は貴族街に滞在するに値する何かをしたのですか?」
貴族パワーで何とかするんじゃなかったんですかねぇ?てか、普通に虎の人の言う通りだし。
「グダグダと、うるせぇなぁ虎野郎」
ここで口を開いたのは龍人である。
「要するに、実績出せって話だろ?」
「違います。この国に貢献しろという話です」
「変わらねぇよ」
虎の人と龍人が睨み合う。
「簡単な話だ。こいつに四幻獣セイリュウの撃退をやらせる。それでいいだろ」
「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」
空気がガラリと変わる。会議室が驚愕に包まれる。
「それが……できると?」
「知らねぇよ。できなきゃそれまでだ」
「待ってください。いくら冒険者とはいえ、それは流石に……その、無謀すぎますよ」
ウサミミを生やした女が言う。
「流石に条件が厳しすぎやしないか?」
狼の顔の男も便乗する。
「俺としてはランシュに反対するつもりはねぇ。リギットさんよぉ、お前はそんなにランシュが信用ならねぇか?」
狼の男が聞く。
「私には王を守る仕事がありますから」
「ランシュが信用ならねぇかって聞いたんだよ俺は。出自を気にしてんなら、それは龍と鬼も同じだろうがよ。確か貴族街に入れる1人目連れてきたのはオルガだったろ」
「てめぇ、俺が信用ならねぇって言いてぇのかぁ?あぁん!?」
角のはえた男──オルガが声を荒げる。
「そもそも、セイリュウは現状、近づかなきゃ積極的に攻撃もしてこねぇ、死者も出てねぇ、国に明確な被害もねぇ以上、そいつ追っ払ったところで、国に貢献したって言えんのかよ?どうなんだクソ蜥蜴」
オルガが反論する。
「誰が蜥蜴だ角野郎。明確な被害が出てないだぁ?軍の奴らが負傷してんだろうが!おめぇは兵なんざたくさんある駒程度にしか思ってねぇのか!?」
「んなわけねぇだろクソ蜥蜴!大切な仲間が傷ついてんだ!でもそれとこれとは話が別だろ!そもそも何で近衛騎士団は動いてねぇんだよクソ虎!」
修羅場だ。帰りたい。
「下手に刺激しなければ問題ないと先刻言ったのは君でしょう?近衛騎士団は王を守るためにあるのです。話が矛盾していますよ、オルガ」
虎さんも丁寧な口調だか、威圧感が凄い。
「あの三家は代々仲が悪いのだ。いつも会議はこんな感じだぞ」
ランシュが小声で教えてくれる。
空気が悪い。帰りたい。
「話が別ゥ?どう違うか説明してほしいなぁ。そもそも、虎も鬼も何で撃退に否定的なんだよ?下手に刺激しなければ問題ねぇだぁ?被害が出てるのにそれ言えんのかよ。とんでもねぇやつらだな。それともあれか?圧倒的な強さに怖じ気付いちまったかぁ?」
「威勢のいいことを言う割りに、龍鱗騎士団も戦闘に参加しているにも関わらず撃退できていないようですが?あなたはセイリュウを退けることができるのですか?ジルギ」
「あぁん!?できるわ!舐めてんのか!」
「ではなぜ野放しになっているのでしょうね?確か、あなたも一度戦ったと聞きましたが?威勢がいいのは口だけですか?」
あー帰りたい。このイベントスキップとかできねぇの?MMOにスキップ機能はない?そうですか。
「ちなみにこの喧嘩、王がキレるまでがセットだ」
ランシュが小声で俺に言う。
芸かよ。
「いい加減にしろ」
ズン、と空気が重くなる。とんでもない威圧感、これもしかして覇気とかそういう感じのスキルだったりする?
「その者を貴族街に入れるなら、四幻獣セイリュウの討伐が条件だ。ただし、最低限装備はなくてはならない。レーベ、ティバー、協力してやれ」
「わかりましたぜ」
「ええ、喜んで」
熊の顔の男とウサミミの女が了承する。
「待ってください。貴族街の施設を利用する権利を与えるための試練で貴族街の施設を使わせては本末転倒です」
「黙っとけアホ虎」
「そちらこそ静かにしてください、ジルギ」
喧嘩するほど仲がいいと言うが、仲の良さは1ミリも感じられない。
「兵たちは貴族街で作られた武器や防具を使用することもあるだろう。せめて戦闘環境は公平にせねばならん。だが、力を貸しすぎるものよくない。そこはティス、お前の裁量に任せる」
「承知しました」
ネコミミの女が答える。
「それから、ランシュも戦闘に参加することを認める」
「ありがとうございます」
「それ以外の者の戦闘の参加は認めない。そして、期限は3日だ。3日以内にセイリュウを退けよ。異論のある者はいるか?」
誰も口を開かない。
「では聞く。ヒセンよ、セイリュウは我が国が未だに追い払えず、近づいた船を沈める水龍。貴族街に立ち入る条件としては、厳しい方であろう」
[ユニーククエスト:青き海蛇を討つ者を開始しますか?]
[YES] [NO]
「それを乗り越えることができるか?」
「俺はそのセイリュウってのがどういうものか、詳しくは知りません。でも、やってやりますよ」
迷いなくYESを押した。
ランシュが暗香疎影の樹海にいた理由ですが、ランシュはとある理由から一族の間であまりよく思われていません。名字が違うのが関係してます。故に狼の一族にお世話になっているので、国外調査によく出向いています。
ちなみにセイリュウ戦までの流れ、製作陣の一部が全然進展しないことに退屈して無理矢理フラグ置いてそのままセイリュウとの戦闘まで直通させました。