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「リーズ、目の下にクマがあるわ。徹夜したの?」
「はい。だって、心配で心配で。眠れなくて」
私は気持ち程度の治癒魔法をリーズに掛けた。
「ユリア様、ありがとうございます! 私、頑張りますね!」
リーズが心配で眠れなくなるほどの日。そう、今日は王宮の試験の日。
文官、侍女、騎士、魔法使い、薬師、医師の試験が一斉に始まる。リーズもヨランド様も文官の試験を受けるみたい。
あの二人なら問題なく合格するわ。
ヨランド様は跡継ぎなので本来試験を受けなくてもいいけれど、継ぐのはまだまだ先なので社会勉強の一環として文官として王宮で働くことにしたみたい。
学院の生徒たちも半数は受ける。どの試験も難関だ。筆記試験は同じ会場で行われる。時間内に解答を書いて会場隣の採点係に渡してその場で筆記試験の合否を貰う。
合格した者は午後に行われる実技試験に入る。そして合格したら後日、採用されるかが分かるようになっている。
その場で採用が分からないのは合格者の人数や採用枠が違うので仕方がない。
私たちは試験会場に足を踏み入れた。
「人がいっぱいね」
「本当ですね。あ、あそこにヨランド様がいます! ヨランド様!」
リーズが手を振るとヨランド様は気づいて手を振り返している。クラスメイトも見つけて少し緊張が解けてきたようだ。
会場は緊張感が漂い、その雰囲気に飲まれそうになる。でもここで失敗すれば師匠から魔獣の巣に落とされるのは間違いない。
試験どころか生死の心配をしなければいけない事態になる。
私は気を引き締めて試験を受ける。
「試験開始!」
試験官の合図とともに一斉に書いていく。私も同じように問題に目を通す。大丈夫そう。
一枚目は全科共通の知識。二枚目は魔法使いの基礎知識を問う問題だった。私は難なく問題を解き、立ち上がった。
どうやら私が一番のようだ。
私は解答用紙を持って採点係に渡す。
「一番乗りですね」
採点係はそう言いながら私の解答用紙をその場で採点していく。
「合格です」
採点係は微笑みながら合格のスタンプを解答用紙に押す。その紙を持って午後の実技試験を受けることになる。時間がまだまだある。
リーズたちは大丈夫かしら?
一足先に食堂へ行き、場所を確保しておく。
『師匠、筆記試験が今終わりました』
『結果はどうだった?』
『もちろん合格ですよ』
『ユリアなら当然だね。ここで落ちてたらみっちり勉強のし直しをするところだ』
みっちり……。
考えるだけで恐ろしい。
地獄を見ることが無くて良かった。
因みに年に一度こうして主に学生を対象にした試験が行われるけれど、欠員募集している時もある。もちろんその場合も筆記と実技の試験は受ける。
そうこうしている間にリーズも試験が終わったようだ。後ろにはヨランド様もいる。
「リーズ、ヨランド様、試験はどうだった?」
「ユリア様! 合格を貰いました!」
「私もこの通りです」
二人とも合格を貰っている。
「凄いわ! とりあえず筆記試験皆受かって良かったわ」
三人で食事を摂りながら試験の問題について話をした。どうやら今回の筆記試験は難しいものらしい。食堂に来る人たちは悲喜交々。私たちは午後からの試験の話をしてお互い会場に別れた。
私は魔法使い棟に。リーズとヨランド様は文官なので第一会議室に向かった。
文官は午後からも筆記試験らしい。
私は実技と筆記がある。
魔法使い棟の会議室に入ると、そこにはニマニマした師匠が中央に座っていた。
魔法使いの試験を受けるのは私を含め二十人だった。もちろんジャンニーノ先生も横に座っていたわ。
「これより王宮魔法使いの試験を始めます。まず筆記試験から。質問はありますか? では試験始め!」
ジャンニーノ先生が合図したと同時に筆記試験に取り組む。ジョーン師匠がニマニマしている理由が分かったわ。
私のだけわざと難しい試験問題なんだわ!!
絶対に許すまじ。
私は試験が終わったらどうしてやろうかと考えながら全ての問題を解いてジャンニーノ先生に提出した。先生は涼しい顔をして丸付けをし、合格スタンプを押す。
「ユリア様ならこれくらい出来て当然ですね」
クッ。
先生もか。
こういう時は身内に甘くするものじゃないのかしら。
身内には更に厳しくするってどうなの!?
いつか覚えていろと思いながら私は実技に移った。
「実技の試験はこのままここで行います」
ジャンニーノ先生の言葉に受験者たちはお互い視線を合わせ不安な様子。毎年、騎士団の練習場で的当てをするのが試験だったからだ。
監視員たちが一人ひとりに四角い箱を渡していく。まだ触ってはいけないらしい。
「この箱は魔力のコントロールの正確性を測るものです。このように魔力を通すと光が移動していきます。それを自身の魔力をコントロールし、追いかけていき箱を開けてください。時間内に終われば成功です。では始め!」
私は早速箱を手に取り魔力を流してみる。小さな光がパッと付いたと思うとグルグルと動き始めた。
慌ててそれを追いかけるように魔力を流す。一度目は失敗。何度か繰り返した後、要領を掴んできた。パカリと開いた時はちょっと嬉しかったわ。
箱が開いたので師匠の元に箱を持っていく。
「開けられました」
「まあ合格としよう」
こんなに頑張ったのにその評価なの!?
見て?
誰もまだ開けた人はいないのよ!?
どうやら光の進み具合で達成度合が分かるみたい。時間内に箱を開けられたのは私を含めた五人。あとはぎりぎり合格だけど、補習が必要と言われた人が四人。他の人は不合格だった。
今年は師匠が顧問に就任したおかげで特に厳しいのかもしれない。
私はなんとか合格できた!
嬉しくてエメとパロン先生にすぐに報告したわ。私の結果を待っていたみたいで二人ともすぐにおめでとうと言葉が返ってきた。もちろん父にも報告をしたわ。おめでとうという言葉が返ってきた。
ほっと一息ね。あとは卒業を待つばかりとなった。




