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そうだ、気晴らしに魔獣の討伐に行ってこようかしら。
それがいいわ!
私はすぐに寮に戻って準備をした後、ギルドに向かった。ギルドはいつもと変わらず賑やかだ。
今日は一杯狩りたい!
無性に狩りたいわ!
依頼板に張り出されている魔物を見る。確か私はこの間ランクCに上がったから倒せる魔物は増えたはず。
私は一枚の依頼書が目に入った。
ランクDだけどPT推奨、ね。討伐対象はギャーロゥ。ベナン村の奥に住処を作り増えているため全て退治して欲しいという依頼。
ギャーロゥという魔獣は一見豚のように見えるが長い触手が二本生えていて食事に使ったり、敵を攻撃したりしている。
ギャーロゥは大きく丸いため、動きが遅く触手さえ気を付けていれば問題ない。ただ、奴等は群れで行動し、繁殖力が強いため数は多く、パーティ推奨になっている。
私はその紙を取り、受付へと持っていった。
「ユゲール様、この依頼はパーティ推奨ですが大丈夫ですか?」
「あぁ、魔法で倒すから問題ない」
「畏まりました。無理はしないようお願いします」
「あと、この依頼も受けます」
ベナン村周辺に出ている他の依頼もついでに受注する。受付の人は心配そうにしていたけれど、ユリアは気にする様子もなくさっさとギルドを出て乗り合い馬車に乗った。
半日を過ぎた頃、ようやくベナン村に到着し、村長に挨拶をした後、依頼のある場所に向かう。あまりゆっくりしていると夜が来るわ。
村長は心配していたけれど問題なし。森の奥にズンズンと歩いていく。村人がこの奥の洞窟に生えている薬草を採るため道はしっかりとある。その途中にギャーロゥの巣があるらしい。
あった。
ギャーロゥの群れ。
数にして二百はいるだろうか。私は剣を抜いて戦闘開始する。心のモヤモヤをかき消すように一心不乱に駆け回りながら斬りつけていく。
「はぁ、終わった! すっきりしたわ!」
返り血を浴びながらも気にすることなく斬り続けるのは楽しい。私ってやっぱり戦闘狂かもしれないわ。ちょっと自分に引きながらも村長の元へ引き返す。
「村長、終わりました。確認をお願いします」
「!! あぁ、今行く。それより、怪我していないか?」
「これは全部ギャーロゥの返り血ですから。私は怪我一つしていませんよ」
村長は青い顔をしながら私と一緒にギャーロゥの巣に向かった。
「……凄まじいな」
「確認してもらえましたね?」
ギャーロゥの死体が至る所に転がっているのを見て村長はドン引きしているようだ。
私は確認してもらえたので風魔法で死体をまとめた後、火魔法でギャーロゥを全て焼いた。
「全て焼いたので肥料として使ってください」
「……あぁ。これを一人でするなんて。君は凄いな。他の依頼も取ったのだろう? 今日は休んで明日からも宜しく頼む」
「わかりました」
私は宿に戻り、返り血を綺麗にした後、ベッドでゴロリと横になる。モヤモヤも晴れてすっきりした気分だ。
依頼は明日で完了できる量だし、もう少し依頼を取っておけば良かったと後悔する。
翌朝、朝食を摂った後、魔物を順調に退治していく。
あぁ、やっぱり私にはこれが合うのかもしれない。貴族令嬢は自分に合っていないんじゃないかって思っていたのよね!
私は楽しくなり笑顔で魔獣を狩っていく。
王都に戻ったらパロン先生に相談してみよう!
そうして依頼をこなした後、乗り合い馬車に乗って王都に戻った。
「パロン先生! ただいま!」
「ユナ、お帰り。昨日は何処へ行っていたんだ?」
「久々に家に戻ったらイライラしちゃってベナン村でギャーロゥ二百匹倒してきたの」
「……相変わらずお転婆なお嬢様だ。怪我はしなかったかい?」
「全く問題なかったです。全部剣で切っちゃいました! 今回も怪我一つしなかったですよ。やっぱり私は冒険者になるべきなんじゃないかって思っているんですよね!」
「グレアムやエメは心配だろう」
「大丈夫! 私、強いですから!」
「学院卒業後に冒険者になろうと思っているのかな?」
「えぇ。一応は卒業しておこうかと思いますが、昨日、家に帰った時、弟が伯爵を継いだら私を貴族籍から抜くって怒っていたんですよね。
父や母が止めに入る様子も無かったですよ。もしかしたら貴族籍を抜く前に私はどこかの貴族に売られるように嫁がされるかもしれませんね。そうしたら全力で逃げますけどね!」
「まぁ、勉強が出来るうちは頑張るだけ頑張りなさい」
「もちろんです! 今の間に一杯魔法を覚えます」
そう、学院に入ってジャンニーノ先生から魔法を教えてもらううちに気づいたけれど、私はほぼ詠唱をしない。
これは夢見の魔法の影響だと思う。特に攻撃魔法は顕著に出ているわ。
常に何十もの敵に囲まれて剣と魔法で戦い続けてきたのだから詠唱をしている時間はなかったからだ。
今更だけどね!
私はパロン先生と少しお話をした後、エメの家に寄ってから寮に戻った。




