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時を戻った私は別の人生を歩みたい【書籍化】  作者: まるねこ


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35ジャンニーノside2

 王宮にいる魔法使いを緊急招集し、現場に向かった。


 そこで彼女の凄さを目の当たりにする。


 大人数を囲う結界を維持したまま攻撃魔法を唱え、魔獣を攻撃している。


 ……器用すぎるだろう。


 俺も同時に魔法を使うのは出来なくはないが、どちらかに偏りが出てくるからあまり使いたくない。


 彼女の魔法を見ていると、結界や治療といった魔法より攻撃魔法の方が得意そうだ。

 状況を見ているだけでは筆頭としての名が廃る。


 私は他の魔法使いに指示を出した後、魔獣を退治しながら彼女と魔法円を破壊してなんとか状況は治めることが出来た。


 結界が消えた後、貴族の子息、令嬢達の顔色はすこぶる悪い。


 これを機に魔獣のことを真面目に学院で学んで欲しいものだ。


 その後すぐに今回の王太子襲撃事件でユリア様の活躍を見た令息達から釣書が多く届けられていると耳にした。それならば私も出しておこう。


 彼女となら伴侶になってもいいかもしれないな、と思う。


 早速実家に帰り、父に釣書を送るように伝えた。家族は大喜びだった。結婚する気のない息子、王宮で気ままに生涯を過ごすのだと思っていたのだと言っていた。


 ……強ち間違いではないので言い返す事が出来なかった。


 父はすぐに出しに行くと言ってどうやら伯爵家に直接釣書を持って行ったようだ。

 オズボーン伯爵は父が直接釣書を持ってきたことに驚いていたようだ。


 そして貧乏子爵だから良い印象は無かったらしいが、俺の名前や職場、筆頭魔法使いであることを話すと感触は良いものに変わったようだ。


 後はユリア様が俺を選んでくれればいいだけだ。たとえユリア様が平民になっても俺一人で彼女を充分に養える。


 そんな事を考えつつ、襲撃犯の手がかりを見つけるために中庭で起こった事件の調査をしていた。


 身体に魔法円が描かれていた令嬢は意識を取り戻すと、震えながら泣いていた。


『以前、自分は誘拐された』のだと。彼女の名前はレイラ・シャード伯爵令嬢。王都で侍女達と買い物に出掛けた時に馬車が襲われそのまま森の中の小屋に連れていかれたと言っていた。


 そこで『この場で男達に辱めを受けるか、この薬を飲むかどちらか選べ』とフードを深く被った男にそう言われ、レイラ嬢は助かりたい一心で薬を飲んだ。


 彼女はその場で薬を飲み干すと、急に眠くなり、そのまま意識を失った。


 気が付けば邸の近くに捨てられていたようだ。レイラ嬢はそのまま邸に戻って普段通りに生活を続けていた。


 王宮に報告しなかったのは令嬢が傷物になってしまう事を恐れたためだろう。


 レイラ嬢は薬を飲まされた事以外に無傷で邸に戻ったと思っていた。侍女からの話でも背中には何も無かった、気づかなかったという報告が上がっている。


 魔法円を背中に描き、浮かび上がらせないようにする方法はある。本来、術者の魔力を使って魔法円を描いていく。


 魔法円は術者の魔力が残り誰が作ったのかが分かるのだ。


 魔力が多い者は人の魔力の形や色も薄らと見えているのでレイラ嬢が背中に彼女以外の魔力を纏っていたら誰かしらは気づいたはずだ。


 だが、誰も気づいていない。と、なると魔法円を無効状態にして魔力を断つ方法しかない。


 ただ、魔力を断つと魔法円は起動しないのだ。


 そこで考えられるのはあの場に居た誰かがレイラ嬢の背中に描かれた魔法円に魔力を流した。その人物こそが今回の主犯格だろう。


 お茶会に参加した者のリストを手に入れた後、騎士団にこちらからの報告書を加えて渡す。俺はあくまで魔法についての調査。


 あとは騎士団が犯人を捕らえるだろう。


 今回の襲撃について騎士団は恥をかかされた。何人もの騎士が怪我をしている。彼らは相当怒っていたから必ず犯人は見つかるはずだ。ただ、主犯格が高位貴族であった場合、犯罪がどこまで公表されるかは分からない。


 高位貴族でお茶会を狙った理由、国家転覆が目的か?

 それとも殿下を狙った?


 これほど大きな事件を起こすのなら相当の覚悟を持っているんだろう。


 あの事件の後、彼女は大丈夫だと言っているし、魔力も豊富だから大丈夫だろう、そんな考えが軽率だった事に気づいたのは彼女からの連絡が途絶えた後だった。油断した。


 パロン先生から連絡が取れないと私に伝言魔法で伝えてきた。


 先生はあの事件後、忙しくて手が離せないようなので私が代わりにユリア様の寮に向かおうとしていた時、ユリア様から目覚めたと連絡が来た。


 ホッと安堵したと同時に少しの怒りを覚えた。自分がいながら未成年の彼女に無理させてしまったのではないかと。もう少し過保護になってもよいのかもしれない。俺はそう考えた。

 そして彼女から聞いた時を戻る前の話。


 男の俺でも陥れられ、処刑されることを怖いと感じるのだ。当事者であるユリア様には恐怖しかない。心を病んでも仕方がないだろう。


 彼女に戻る前の記憶がある、という事は時戻りの魔法を使用した殿下も記憶があるのかもしれない。あの執着だ。


 きっと魔法を使ったのはランドルフ殿下だろう。


 ユリア様が処刑される前まで殿下は自分の事を嫌っていたと言っていた。

 もしかしたら殿下は洗脳か魅了されていたんじゃないか?


 彼女の死を切っ掛けに洗脳が解けた?


 なんにせよ彼女をこれ以上傷つけるのはよくない。

 もし、もしも……いや、適当な事を口に出すのを今はやめておこう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] せんのう [一言] ふうむ だとすると王家は酌量余地あるのかな 筆頭候補家が腐れ外道やったか 傷は消えないこと考えると切ないねぇ 新たなパートナーも生まれちゃったし 落とし所が気になる…
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