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「全く……」
少し苛立っている様子の先生。
「先生? どうかされたのですか?」
「あぁ、気にしないでくれ。こちらの事ですから」
そうしていつもの先生の研究室へとやってきた。
「ユリア様、丸三日眠り続けていたのでしょう?」
「寮に戻ってから普段通りに寝たつもりだったのですが、起きてみたらびっくりしました」
私は笑いごとのように話をすると、先生は珍しく怒っていた。
「ジャンニーノ先生?」
「ユリア様、貴女って人は人を心配させる天才ですね。パロン医師からも聞いていましたが。全く……」
先生は私の事を心配して怒っていたようだ。
「先生、私もまさかそんなに眠っていたなんて思わなかったのです」
言い訳のように言葉を口にする私。
「魔力が枯渇するまで使えば眠りに就くのは当たり前です。あの時、半分と言った言葉を信じた私が迂闊でした」
「え? でも、私。本当に半分ほど魔力を使っていただけですよ?今までこんなに魔力を使った事はなかったし、これが当たり前ではないのですか?」
私の言葉にジャンニーノ先生が何かを考えている。
「うーん。少し調べても良いですか?」
「? ええ、構いませんよ?」
私がそう言うと、先生は部屋の隅から一つの魔法円の刻まれた銅板のような板を持ってきた。
「ユリア様、この銅板に乗って下さい」
私は足元に置かれた銅板に言われるがまま乗ってみる。すると先生は呪文を唱えた。どうやらこの銅板は魔力を測る物のようだ。
水晶に手を翳して光の強さで判別するようなものは簡易的なものらしい。
この銅板はというと魔力の多さを色で識別する事が出来るのだとか。魔力量が低いのは青、中間は緑、多いのは赤になる。グラデーションのようになっていて詳しく知ることが出来るのだとか。
そして測った結果はもちろん真っ赤。
ジャンニーノ先生はこの結果と眠りに就いた事に疑問しかないようだ。
「そういえばユリア様はどうして領地に篭っていたのですか? 幼少期に何かあったのでしょうか?」
幼少期からの成育歴から答えになるものを探るのだとか。
私は先生に聞かれて話すかどうか迷ってしまう。これまでの事からジャンニーノ先生の事を信用している。
話をしても問題ないのだろうか。
考えあぐねた末、過去の事だと割り切って話そうと覚悟を決めた。
「先生、これは誰にも他言しないで欲しいのです。パロン先生は魔法契約をした上で知っていますわ」
「魔法契約? そんなに重いものなのですね。いいでしょう。私も魔法契約をした上で君の事を知りたい。誰にも他言はしません」
先生はそう言うと、部屋に防音結界を張り、魔法契約書を取り出してあっさりとサインする。
先生の性格からすれば先生は純粋に知りたいのだと思う。
私は時間を戻っている事やパロン先生の夢見の魔法で三年間ずっと魔物と戦い続けてきた事など魔力が増えた理由を出来るだけ詳しく話した。そしてランドルフ殿下に極力関わりたくない事も。
流石に平民になって国外に行こうと思っている事は言っていないけれどね。
先生は夢見の魔法が掛っている時の話に興味を持ったみたい。そしてうんうんと私の話を聞きながら魔法で一冊の本を本棚から取り出してパラパラとめくっている。
過去にも同じような事例があるのかしら?
私は疑問に思っていた事をこの機会に、と思って先生に聞いてみた。
「先生、時間を操る魔法は存在しないと教わっているのですが、私はこの通り過去に戻っている。何かあるのでしょうか?」
「……時を戻る、ですか。無くはないですよ。ただ、使えるのは王族のみ。使用者の犠牲も必要になる」
「え? 王族のみ……ですか?」
「あぁ。そう記されている。ほら、ここに」
先生から差し出された本には確かに書かれてあった。ただ詳しくは書かれていない。これは王族の秘密だからだろう。
自分の死と引き換えに時間を戻す。
王族の誰が私の時間を戻したのだろうか?
王妃様?
それともランドルフ殿下……?
あれだけ私の事を憎んでいたのに?
そう考えた瞬間、あの忌まわしい出来事がフラッシュバックしてきた。ガタガタと震える身体。
「……嫌よ、嫌よ!いやぁぁっ。助けて、助けてっ。いやあぁぁぁぁ……」
突然のフラッシュバックに悲鳴を上げて倒れた。どこか遠くでジャンニーノ先生の声がした。
……
…
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