表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時を戻った私は別の人生を歩みたい【書籍化】  作者: まるねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/94

29

 王宮で起こった事をまだ邸の誰も知らない様子。


 色々と言われるのも煩わしいと思ったので、侍女に頼んでドレスをすぐに脱ぎ、いつもの格好をする。


 ……そろそろ王宮からの連絡があると思うのよね。


 そこでまた足止めをされて邸で過ごすのは勘弁してもらいたい。

 ここはさっさとトンズラするに限るわ。


「今日はもう寮に帰るわ。何かあったら手紙を頂戴」


 執事にそう伝えて邸を出る準備をしていると。


「食事はされていかれませんか?」

「いらないわ。私がいても弟達が嫌がるだけでしょう?」

「……畏まりました」


 私はそう言うと認識阻害を掛けてから早足で学院に戻った。


 普段も街は賑わっているのだけれど、今日はどことなく忙しない感じがする。やはり王宮であった事のせいかな。それは学院も同じだった。


 いつもは門にいる警備兵に止められないけれど、今日はしっかりと身分の確認がされたわ。

 学院にも注意する通達がいっているのね。


「ふぅ、疲れた。もう駄目」


 私は一言そう呟いてベッドに気絶するように倒れ込んだ。


 どれくらい眠ったのかしら。気づけば夕方になっていた。

 えっと、昼過ぎに邸を出て、寮に帰ってすぐにベッドに入ったから数時間ほど寝ていたのかしら?


 頭がぼんやりとしているので特に疑問も持たずに食堂へ向かおうと着替えをしていると部屋をノックする音が聞こえてきた。


「はい、誰ですか?」


 眠気眼で扉を開けるとそこに立っていたのは寮母さんだった。とても心配しているようで何か一生懸命早口で話をしている。


「ごめんなさい、まだ眠くって。どうしたんですか?」

「ユリアさんっ、大丈夫!? お家から連絡がつかないと何度も寮に手紙が来たのよ?」


 えっと? 数時間の間に何が起こったのか理解が出来ない私。少しずつ頭がすっきりし始め、周りを見ると、伝言魔法で送られてきた手紙が十通程私の手の中に飛び込んできた。


 その手紙の数に私はびっくりした。


「とにかく、一度学院の診療室で診てもらった方がいいと思うわ」


 え?

 数時間寝ていただけで?


 私はとりあえず寮母さんに元気であることを伝えた後、食堂へ行くついでに診療室に寄ってみますとだけ返事をしておいた。寮母さんからなにかあったらすぐに連絡するように言われたわ。


 数時間の間に王宮はとんでもない事になったのかしら??


 私は寮母さんが帰った後、ベッドに座って届いた手紙に目を通した。


 七通は家からの手紙だったわ。そして残りの三通は王宮とヨランド様からとパロン先生の治療院からの手紙だった。


 家からの手紙は王宮での出来事が家に伝わったらしい、そして私を家に呼び戻すための手紙だった。


 ヨランド様からは私を気遣う手紙が、王宮からの手紙はお礼をするので登城するようにという手紙だった。


 後はパロン先生からの手紙は王宮から治療師として緊急に呼び出しがかかった事で何が起こったのかを知ったらしい。

 私を心配しての連絡だったみたい。


 そして気づいた。


 私が数時間だけ寝ている間にと思っていたけれど、ベッドに倒れ込んでから既に三日は経っていたみたい。


 そりゃ寮母さんも心配になるわよね。


 私は慌ててパロン先生に返事を書いたわ。ヨランド様にも大丈夫ですと最低限の事だけを書いて送っておいた。


 そして父からの呼び出し状。

 ……これは仕方がない。

 私の気分は一気に急降下よね。


 一応、父にはこの度起きたこと、明日家に顔を出しますとだけ書いて送っておいた。


 私が眠っている間に何が起こっていたのかしら。とりあえずお腹が減ったので三日ぶりに食堂へ向かった。


 もともと長期休暇で人が居ないのに魔物の襲撃恐怖からか生徒も殆どいない状態だった。これにはちょっと困る。食事がまともに摂れないのはね。


 厨房の料理長一人残っていてパンとスクランブルエッグとハムが出されたわ。


 早めに治療室にもいかないとね。料理長にお礼を言って流し込むように食事をした後、治療室へと向かった。


「先生、居ますか?」

「おや、君はまだ寮に残っているのかい?」

「えぇ。先ほど三日ぶりに起きたのです。寮母さんから診察してもらうようにと言われて来ました」

「ふむ。どれ、ユリア君、こちらにきておくれ」


 私は先生の診察を黙って受ける。


「三日ぶり? ……ふむ。どこも怪我はしていないな。多くの魔力を消費して眠りについただけのようだ。まさか、君は王宮の魔物が溢れていたあの場所にいたのかい?」

「えぇ、いました。大きな結界を張っていたから結構な魔力を消費していたと思います」


「そうか、君だったのか。君の張った結界のお陰で招待客や王太子殿下に怪我は無かったようだ。ワシも騎士の治療のために王宮へ呼ばれたのだが皆、口を揃えて結界を張った者を賞賛しておったよ」

「初めて大きな結界を張って不安でしたが、上手くいってよかったですわ。そのまま三日間眠り続ける事になりましたが」


 笑いながら話をする。


 特に怪我も無いし、大量の魔力消費で疲れて眠っただけでよかったわ。先生にお礼を言って部屋に戻った。


 今日はもう寝よう。


 三日間眠って数時間前に起きたばっかりだけれど、明日からの事を考えるのも億劫になったのでベッドでゴロゴロしているといつの間にかまた眠ってしまったらしい。

 本調子ではなかったのかも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ