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時を戻った私は別の人生を歩みたい【書籍化】  作者: まるねこ


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「キャーーー」


 叫び声と共にドサリと音がした。音の方向を見ると、ランドルフ殿下の周りに居た二人の令嬢が倒れている。


 そして会場の四方から魔獣の声。


 何が起こったの?


 地面に浮き上がる魔法円から魔獣が飛び出してきた。過去のお茶会は何度も経験したけれど、こんな事は一度も無かった。


 ランドルフ殿下はすぐに応戦しようとしていたようだが、恐怖に支配されている令嬢達が殿下に纏わりつき動けないでいる様子。

 それはアーサー様やヨランド様も同じようだった。


 叫び走って逃げたいけれど、四方から湧き出る魔獣で逃げる事が出来ない。


 会場に居た騎士達は魔獣と対峙しているが次々に湧き出る魔獣に苦戦している様子。


 私はすぐに魔法でジャンニーノ先生に連絡を取る。


「先生っ! 王宮の中庭に魔物が発生しています。魔法円が四カ所。そこから魔物が湧き出していますっ」

「!! ユリア様、それは本当ですか!? 今すぐ向かう。君は結界で殿下達を守れますか?」

「……可能だと思います」

「では、私が向かうまでなんとか持ちこたえる様にお願いします」


 私は急いでテーブルの上に立ち、少し高い位置から周りを確認し、結界を張る。


 淑女がテーブルの上に乗るなんて!と言われても仕方がない。

 後で言われたら謝罪するのみ!


 ボワンと半球体の結界が私を中心にして立ち上がった。


「王宮の騎士や魔法使いが到着するまでこの結界から出ないで下さい!!」


 魔獣たちが結界を壊そうと体当たりや攻撃を仕掛けてくる。


 今回のお茶会では殿下と歳の近い令息や令嬢が集まっていた。


 学院で実技訓練はあるけれど、所詮貴族の遊び程度なのよね。令嬢に至っては知識として覚えているくらいかしら。


 騎士科であれば動ける人も中にはいるようだけれど、パニックに陥っている令嬢達を抑えながらの戦闘は難しい。


 魔法使い科に関しても学生の間はそこまで難易度の高い魔法を習う事はないし、実践も殆どないのであまり役には立たない。


 ちなみに私が結界を使えるのは知識として先生に教えて貰っていたし、人一人分の結界を張る事は王宮で練習していたのでなんとか使えている状態。


 もちろん大勢を守るために結界を張ったことは一度もないわ。


「ユリア嬢! 大丈夫か?」


 ヨランド様が声を掛けてきた。


「えぇ。初めて大きな結界を作りましたが、案外上手くいくものですね。ヨランド様は中でご令嬢達をお守り下さい」


 私はそう言うと、飛び上がり、結界の上に立つ。

 スカートの下が丸見えなんて事はないわ。

 だってしっかりとズボンを履いているもの。


 長年ズボンを履いていたせいかドレスの下にも着るようになったのよね。侍女達は嫌がっていたけれど、押し通して良かったわ。


 これだけ魔物が沢山いれば騎士達にも被害は出てしまうわよね。


 後でパロン先生も王宮に呼ばれるかもしれない。


 私はそう思いながら結界の上から魔獣に向けて魔法で攻撃をしていく。バタバタと倒れていく魔獣を見てついつい嬉しくなって笑顔になる。


 やはり私って攻撃魔法の方が得意だわ。


「ユリア様、お待たせしました。よくぞご無事で」


 ジャンニーノ先生は魔法使いを引きつれて中庭へと飛んできた。


「先生! あそこにある魔法円ですわ」


 私が指した方向を先生は確認し、他の魔法使いと何かの話をしている。そして魔法使いは二つのグループに分かれて飛んでいく。


 まず殿下から近い魔法円二つを破壊するようだ。


 数名の騎士と共に湧き出る魔獣を退治する魔法使いと魔法円を壊す魔法使い。


「先生、私も魔法円を壊してみても良いですか?」

「じゃぁ、私とやってみますか。ユリア様なら一人で壊せますよ」


 私は後方にある魔法円の周りにいた魔物達めがけてずばーんと雷を落として駆逐する。


「魔法の威力がこれほどまでとは」


 ジャンニーノ先生は驚きながらも手招きして魔法円の側に降り立った。


「ユリア様、この魔法円にトラップは仕掛けられていないので簡単に壊せますよ。ここに魔力を注ぎ入れて円の外側から壊していくんです」


 先生が言うには魔法円に仕掛けが付いている物があって壊した時に毒が降りかかったり、槍が飛んで来たり、最悪呪いや魔法封じがされているような物もあるらしい。


 この魔法円は魔物を何処かで呼び寄せこの場所に連れてくるような物らしく簡易の転移装置だそうだ。


 王宮魔法使いになると魔法円の解析なんかもするらしい。


 専門家って凄いのね。


 私が魔法円に魔力を注ぎ始めるとすぐにパキリと音がして円が消滅してしまった。


「さすがユリア様。ですが魔力を一度に注ぎすぎですよ。トラップが仕掛けられていたら跳ね返ってきますから、気を付けて下さい」


 ジャンニーノ先生は魔物を倒しながら解説をしてくれる。やはりここでも丁寧に魔力を注ぎながらという作業が必要なようだ。


 治療院と同じなのね。


 私は魔法円に魔力をゆっくりと注ぎ、確認しながら消滅させていく。


「随分と良くなりましたね。流石パロン医師の元で修行しているだけありますね」

「先生、パロン先生の事は内緒ですわ。皆様知りませんから」

「あぁ、そうでしたね。黙っておきましょう。さて、後は残った魔獣退治だけですね。後は騎士達に任せておけば良いですが、結界の中の問題は残っていますからさっさと片づけてしまいますか」


 結界の中?


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