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医者の娘の病弱っ子とその友達がジビエと山菜と写真と登山を満喫する。  作者:


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タイトル未定2024/04/10 07:01

白馬が自宅の玄関を開けると、暗く冷えた空気に出迎えられた。買い物袋から今日料理する以外の食品を冷蔵庫にしまい、風呂の残り湯を使って一度洗濯機を回す。


荷ほどきを終えたばかりで、段ボールの空き箱が玄関前に置きっぱなしになっていた。潰して今度の回収の日に出そうと今後の予定を頭で組み立てる。


 今日は父親が久しぶりに家に帰ってくる。エプロンを付けて炊飯器のタイマーをセットし、お味噌汁と簡単なサラダを作った後で彼の好物である魚の塩焼きをグリルに入れた。


 目の前で魚が取れる本土から遠く離れた離島とは比べるべくもないが、山に囲まれたここ霧ヶ峰市でもそこそこのものは手に入る。


 魚を焼いている時間を使って、一人分の洗濯を室内に干しおわるとグリルから焼き上がりを知らせる高い音が聞こえた。


 魚から香ばしい匂いがただようころ、ちょうど玄関が開けられた。


「帰ったぞー」


 白馬峻の父、白馬秋霜が帰宅した。


 峻と違ってたくましい腕に太い体幹。太い眉毛の下で存在を主張する、どんぐりのような眼。山道で出会えば熊と勘違いするかもしれない。


履物であるブーツは土に汚れ、ワイシャツの上から羽織ったジャンパーからは草の香りがした。


父親の姿を見るたびに、白馬はいつも複雑な思いを抱える。


転校続きという環境に置かれ、友人も恋人も作ることができなかった。加えて離島やへき地への転勤に疲れた母親と別居するまでに至った恨み。


反して、困難な仕事に打ち込んできたことの尊敬の念。


玄関にどさりと置かれた黒いザックのファスナーの隙間からは、詰め込まれた分厚い専門書の数々が顔をのぞかせていた。


「次の仕事はどこに行くの?」


「そうだな、」

 父親と食卓を囲みながら、話題は自然と次の仕事のこととなる。挙がった地名は、この霧ヶ峰市からそう離れていない場所だった。

「また、結構近いんだね……」


 最近、こういうことが増えてきた気がする。以前は電車や船を乗り継いで二日かかる離島に仕事に行くことさえザラだった。


「そろそろ腰を落ち着けられればと思ってな。しばらくはこの霧ヶ峰市を拠点にして仕事をしようかと思っている」


「ほんと?」

 白馬は思わず腰を浮かせた。


 それなら、転校続きの環境から解放される。


「ああ。そろそろ日本各地を飛び回るのも十分だろう。ここからなら過疎地へのアクセスがしやすいから仕事場へも行きやすい。なにより、母さんに実家にしばらく戻ると言われたのがだいぶ堪えてな」


 その一言で親子の会話が途絶え、食器を動かす音、味噌汁をすする音だけがリビングに響く。


話題を切り替えるように白馬は口を開いた。


「そういえば、今度友達とハイキングに行くことになったんだけど」


 そういうや、父親の目つきが変わり仕事の時と同じような態度になる。自分の知識が生かせる話題になるといつもこれだ。


 専門バカ。そう言いたくなるのをぐっとこらえた。


「経験者か? 体力は? 年齢は?」


「そこそこ体力がある子が一人に体が弱い子が一人。僕と同年代」


 言われたとおりに白馬は回答する。父親も登山をたしなむので、この程度の情報と言い方で問題ない。

「初心者を同行させるときの注意事はな……」


 すでに白馬も知っている知識だが、実践を踏まえてさらに踏み込んでくれる。

色々と問題のある父親だが、仕事と山に関する知識だけは確かだった。



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