タイトル未定2024/04/10 07:00
山裾から伸びる茜色の日が廊下を照らし、女子二人の影を作る。掛け声の止んだグラウンドも同じ色に染まっていた。
「でも珍しいね」
「……何が?」
「佐久が初対面の、しかも男子とあそこまで話せたのはじめて見たから」
「……自分でも、不思議なくらい。でも普通の男子とは違った雰囲気があったから、そのせいかも」
「あー、わかる。なんか達観してるっていうか、大人びた雰囲気あるよね」
「……いや、そういうのとも違う感じ。なんだか私と似てる感じがした。ものの見方とか、世間に対するスタンスとか」
「佐久と同じで、子供の頃は体が弱かったのかもね。だからそう感じたのかも」
「……いや、そんな感じはしなかった。なんとなくだけど……」
「まあ、お医者さんの娘の診断を信じますか」
「……からかわないで」
「でも喋らないタイプかと思ったら、いきなり山を熱く語りだしたのは驚いたなー。佐久は平然としてたけど」
「……」
佐久が何か考え込むようなそぶりをしたので、望月は慌てて付け加えた。
「あ、ごめん。悪い意味じゃなくて」
「……違う。あれはむしろ……」
「むしろ?」
「……いや、なんでもない」
「気になるな~、教えてよ~」
佐久の黒髪をわしゃわしゃとしながらも望月が気になっているのは、白馬の方だった。
自分が顔面偏差値の高い男子に絡まれていた時、助けてくれた。喫茶店で佐久の体調が悪くなった時も、ちらちらと気にしているのが見えた。
クラス内での話にはほとんど参加しないのに、ちゃんと他人を見ている。
彼も自分と仲良くなろうと思って近づいてきたのかと思ったが、あれ以降自分には話しかけてこなかった。
涼やかだけどどこか冷めた目線と、山について熱く語る時のギャップ。
「自分を助けてくれたり、結局佐久のお願いを聞いてくれたり。冷めた感じがするけれど冷たい人じゃないんだよね……」
その夜、望月の夢には白馬が出てきた。夢に男子が出てくるのは初めてで、朝目が覚めた時は顔が熱くなるのを抑えきれなかった。




