夢の蕾 【月夜譚No.290】
こういったイベントには縁がないと思っていた。そもそも、引っ込み思案な自分は賑やかな場所が苦手だった。
けれど、その一方で憧れもあった。楽しそうな輪の中に飛び込んでいって一緒に笑えたら、どんなに素晴らしいだろうと。
だから、自分が今こんなところに立っているという事実が信じられずにいる。
少女は大きく見開いたキラキラした瞳で、それ以上に輝くステージを見上げた。
煌びやかな衣装に気分を高揚させる音楽、ひらりと閃くスカートの裾、可愛らしい笑顔――。そのどれもが今まで目にしてきたどんなものより輝いて、少女の視線を釘づけにする。
この場にいるということもまだ受け入れ切っていないのに、気持ちはもっと先を走る。
凄く素敵で、綺麗で、可愛くて。直に見る彼女達があまりにも羨ましくて――
(ああ、私もあんな風になりたい)
ついた蕾はいずれ花開くのか。その未来はまだ誰も知らない。