プロローグ
短いですが…
「俺お化けが視えるんだよね」
宮地歩は時々突飛なことを言う。しかも大体はニヤニヤしながら。
なんというか癪に障るまでではないが、おちょくられている感じがして気分はよくない。
だがこの時は違った感情が私を支配していたのを覚えている。
何故かこの時だけは好奇心が私を支配していた。
別段オカルト好きなわけでもないし、宮地がそんなことを言い出すのは今に始まった話じゃないが、とにかくその時は気になって仕方なかったのだ。
「お化けってどんな見た目なの?」
お化けが視えると聞いてまず気になるのは見た目だろう。
それが人と同じなのか、それとも恐怖するようなものなのか、はたまた絵画の神様のような神々しいものなのか。
「なんていうかボヤって視える感じかな、割と鮮明に視える時もあるけど大体はボヤって視えるから居るのはわかるけどどんな形、匂い、温度とかまではわかんないかな」
ヘラヘラしてんじゃねえと思ったが、それ以上に詳細な返答が返ってきたことに少し驚いた。
「匂いとか体温があるお化けもいるの?」
形はともかく匂いや体温までわかるのならさすがに気持ち悪い。
「あるね。だけどそこまでわかることはかなり珍しいかな」
「気持ちわる…」
思ったことが口から出てしまった。
それを見て宮地はだよねと言いながらケラケラ笑っている。
「だけどいい匂いだったり、心地いい温度だったりする時もあるから一概に悪いモノでもないよ?まあ大体はそもそも触れないしただ視えるだけだけど」
お化けがいい匂いなんてさすがに宮地の感性を疑う。
宮地は変人だ。
これまでの会話を聞いてわかるように掴み所はないが、話自体は興味をそそる。
なんというかアンバランスなんだ。
「それに大体のお化けは気持ち悪いよ。悪意があるのだけはわかるけど、詳細がわかんないからただ逃げるしかない」
そうだこれがステレオタイプのお化けだ。
そういう話が聞きたかったのだ。
「悪意って言うのは何か危害を加えられたりするってことでしょ?こっちからは触れないのにあっちは触れるの?」
「いや、触られるわけじゃなくてなんていうか引きずり込まれる感じかな。霊界に連れ込まれる的な気付いた時にはもう手遅れって感じ」
なんというか実に日本的なイメージだ。
海外のホラーは動的なイメージだが宮地の語るお化けは静的なお化けだ。
確かに怖くはあるがどうもピンとこない。
はぐらかされている感じがして気分がよくない。
「そうなんだ」
そういって私は宮地との会話を終わらせた。
興味がなくなったわけではないが、どうも嘘はついていないが話の核心を話していないような気がしてこれ以上は無駄だと思った。
宮地はそういう話し方をする。
大事なことは伝えないで表面的な部分を比喩表現を使いながら話す。
こいつのこういう飄々としたところが私はどうも好きになれないのだ。
霊感ある方ってたまにいますよね。
私の親友も視えるらしいです。
私は一切見えません笑
ほんの導入部分なので短いことはご容赦下さい。
気ままに続けるのでたまに思い出して読みに来てくださると嬉しいです。