第4話「絶対に許せない」1
第4話「絶対に許せない」1
太陽はおろか、月や星すら見当たらない漆黒の空に向かって、城がそびえ立っていた。
城というほどの優美さはない。その建物はむしろ、砦と称するほうが適しているような、無骨で、おどろおどろしい空気をたたえている。
その不気味な城塞の奥の間に、四人の人影があった。
「……申し開きはあるか、コレス」
ドロドロとしたシルエットから、ヘドローンの重々しい声が響く。ひざまずいていたコレス・テロールが、こわばった顔を上げた。
「あ、あの正体不明の横やりが入らなければ、四人とも始末できていました」
横から、ハイブラッド・グルコースが半笑いで口を挟んだ。
「でもさー、コレッちゃんってば、ベジーティアにセクハラしまくりの舐めプだったじゃん? さっさと叩き潰してれば、問題なかったんじゃないのー?」
「黙れハイブラッド! あと、その呼び方をやめろ!」
「いーじゃん、コレスなんだからコレッちゃんで。あ、コーちゃんのほうがいい?」
「その気色悪い『ちゃん付け』をやめろと言ってるんだ!」
二人が言い争いをしていると、
「ヘドローン様の御前ですよ、二人とも控えなさい!」
鋭い声で、プリン・タイが叱責した。
「……失礼しました」
口をつぐんだ二人に変わって、プリンが顔を上げた。
「ヘドローン様、今回のコレスの失敗は、ひとえにキャロティアの急激なパワーアップに要因があります。彼女は以前にも致命傷を受けた直後に、不思議なパワーアップをしております。データを集めて、分析しなおしたいと思います」
「いいだろう。プリン、お前に任せる」
「かしこまりました」
プリンは深々と一礼した。頭を上げた際、眼鏡がキラリと光る。あどけなさの残る少年のような顔には、冷徹で酷薄な笑みが浮かんでいた。
出版社で作成した誌面データを、印刷所に送る。印刷所では、送られたデータをもとに製版し、指定された紙に印刷する。全ての工程が終わり、本が刷り上がってくるのを待つだけの状態にすることを「校了する」といい、印刷所にデータを送る日を「校了日」という。ここに至るまでに、校正、校閲を繰り返し、誌面に間違いがないかを徹底的に検証するのだ。
校了日は出版に携わる人間にとって最大の山場であり、最大の緊張を強いられる日だ。この日までなら、誌面に間違いがあっても訂正が利く。しかし、データを送り、印刷が始まってしまえば、もはや後戻りは不可能である。だからこそ、校了日には誌面の全ページを入念にチェックし、一字一句たりと間違いがないかを確かめねばならない。
今日は、私の担当する月刊情報誌『兜山TOWN』の校了日だった。朝からひたすら誌面のゲラ刷りを読み続け、日没が差し迫るころ、ようやく全80ページのチェックを終えた。腕をグルグル回して凝り固まった肩をほぐし、目薬を差して一息つく。
「よし、じゃあ今日はこれで終わり。みんな、お疲れさん。四谷、データの入校よろしくな」
私の言葉にデザインオペレーターの四谷が「ハイ!」と答えると、ほかの『兜山TOWN』編集メンバーの間にホッとした空気が流れた。
若い女性記者の一人がコンビニで買ってきたスナック菓子を開き、ガサガサと音を立てて食べ始める。他社ではどうか知らないが、私の職場では、勤務時間中の飲食に関して、かなりユルい。さすがにニオイの強いカップめんや餃子などを自分の席で食べるのは許されない(休憩室であれば構わない)が、スナック菓子ぐらいなら、誰も何も言わない。いまの流行り商品を調査するために購入する場合もあるし、時には、取材先から宣伝を兼ねて商品を提供してもらうこともあるのだ。
そのパッケージに、見覚えのあるオレンジ色の髪のキャラクターが描かれているのが目に止まり、私は思わず声を掛けていた。
「木村、それ……」
「あ、これですか?『ベジーティア』のスナックですよ。いま、ネットでメチャクチャ話題になってるんですよ」
木村が「よかったら、どうぞ」と袋を差し出してきたので、一つつまみ出す。キャロットソードの形を模したオレンジ色のスナックだ。食べてみると、ニンジンスティックを思わせるようなカリカリとした軽やかな歯ごたえ。しかし、ニンジン特有の青臭さやクセなどはなく、甘味と塩味のバランスが良くて、一袋くらいならあっという間に食べてしまいそうだった。
「娘がこの番組を好きで、いつも見ているが……。子供向けのキャラ菓子にしては、味も造形もよくできてるな」
「そうなんですよ。しかも、この一袋でニンジン5本分のベータカロテンとビタミンC、食物繊維が摂れるし、形がカワイイっていうんで、女子中高生にヒットしてるんです。ほかのキャラのお菓子もあるんですけど、この子が一番売れてますね」
「確かに、黄色の子のカボチャ爆弾は作りやすそうだけど、弓やハンマーは袋の中で壊れそうだな」
「フフフ、そうなんですよ。ハンマーは持ち手が折れてしまうし、スピナボウなんか、ほとんど粉々になってて、『原型をとどめているのを見つけられたらラッキー』って言われてるぐらいですよ」
「キャラものの菓子として、それは致命的だな……」
「だけど、どれもお菓子としてはかなりおいしくて栄養バッチリなんで、親御さんにウケてるそうですよ。主任も、子供さんに買ってあげたらどうですか?」
「そうだな。考えておく」
そう答えて、私は自分の席に戻った。戦闘シーンだけとはいえ、自分の演じているキャラクターが人気を集めているというのは、なかなか面映ゆいものがある。
若い記者たちがウキウキと「飲みに行こうぜ!」なんて話しているのを聞きながら、私は窓の外に目をやった。空はすっかり暗くなっているが、その分、周囲のビルが放つネオン看板のまぶしさが際立つ。
久しぶりに、私も飲みに行きたいという思いはあった。しかし、ここ数日、帰宅の遅い日が続いていたのだから、今日は少しでも早く帰り、家族水入らずで過ごすほうがいいだろう。酒を飲みたければ、帰りにスーパーで買えばいい。それこそ、ミサのためにベジーティアスナックもついでに買ってやろうか。
そんなことを考えていたとき、すぐ近くで「ポンッ」という――アニメで、何もない空間から魔法生物が飛び出してくるときの効果音のような――音が聞こえた。
「……ヒロシさん、いま、大丈夫ニュ?」
遠慮がちにポンニュが声をかけてきた。前回、顔を鷲掴みにして「いきなり話しかけてくるんじゃない!」と厳しく言ったことが、相当こたえたらしい。私はかすかにうなずくと、人気のない小会議室に入った。ドアを内側から施錠し、ポンニュに向き直る。
「また、やつらが来たんだな?」
ポンニュが私のところに現れる理由は、それ以外にない。私の言葉は、問いかけではなく、単なる事実関係の確認だった。
「その通りニュ。また、お願いするニュ」
「分かってる。じゃあ、行くぞ」
「マジックゲート、オープン!」
小会議室に光があふれ、お馴染みの自動改札機が出現した。
「アブラブーッ!」
奇声を上げて町を破壊していたのは、巨大なブタ型メタミートだった。大きさは、四トントラックと同じぐらいだろうか。今回の敵は、かなり巨大だ。
ビルや民家に猛烈な勢いで突進し、破壊したかと思うと、逃げ惑う人に向かって鼻の穴から茶褐色の団子のようなものを飛ばして攻撃する。粘液にまみれ、テラテラと光る団子はべチャッと汚らしい音を立てて地面やビルの側壁に貼りついた。
(あれ、どう見ても鼻くそだよなあ……)
そんなものの直撃を受けるなんて、想像するだけでも、おぞましい。もちろん、一撃で家屋を粉砕するような猛パワーの体当たりだって、受けたくはない。
「パンプティア、スピナティア、あいつがアチコチ走り回れないように牽制して! ラディシティア、行くよ!」
「オッケー!」
ブタ型メタミートが建物に突撃しようとするたび、パンプキンボムとスピナボウが鼻先で炸裂する。行動を制限され、怒りに燃える目でブタ型メタミートは私とラディシティアに向かって突進してきた。
「まさに猪突猛進、ってね!」
タイミングを合わせ、二人でジャンプ。私たちは軽々とブタ型メタミートの頭を飛び越えた。
かつて、疾走する自動車を飛び蹴りの要領で飛び越えた空手家がいた。もちろん、自動車を飛び越えられるだけの高さと滞空時間を保つ跳躍には、超人的な身体能力に加え、ボンネットに体が触れるギリギリのタイミングを見極めて飛び上がる、驚異的な動体視力が必要になる。しかし、十分な鍛錬を繰り返せば、自動車を飛び越えることは生身の人間でも可能なのだ。ましてや、ベジーティアに変身している私たちにとって、一定スピードで一直線に突っ込んでくるだけの敵を飛び越えるなど、縄跳びをするより簡単なことだった。
もちろん、飛び越えるだけで終わらせるつもりはない。
「重圧粉砕!」
後頭部に向かってラディシティアがハンマーを振り下ろす。ただでさえ重く力強いラディシティアの攻撃が、魔法で重圧を加えて叩きつけられる。ブタ型メタミートは地面に顔を突っ込み、逆海老反り状態で動きを止めた。
「ナイス、ラディシティア!」
私は近くのビルの壁面を蹴って宙返りしながら、キャロットソードを構えた。真下に、巨大なブタ型メタミートの背中がある。飛び降りた勢いを利用してまっすぐ剣を突き立て、魔法を発動する。
「分子崩壊!」
剣先から魔法が広がって、一瞬でブタ型メタミートの体が分解され消滅する。以前、同じ魔法でとどめを刺したときは、消滅までにもう少し時間がかかっていたが、ベジージェムで魔法が強化されたのだろうか。
「お野菜のチカラは、甘くないんだからねっ☆」
四人でポーズを取って、決め台詞を言う。「お約束」と分かっていても、やはり、気恥ずかしい。
「簡単に倒せて良かったです。さ、帰るですよー」
スピナティアが変身を解こうとしたときだった。
「ふむ……。やっぱりキャロティアはパワーアップしてますね。もうちょっと時間を稼げると思ったんですが」
上空から声が降ってきた。見上げると、人を小馬鹿にするような笑みを浮かべた、眼鏡の少年が宙に浮かんでいた。
「プリン・タイ!」
前回、顔を合わせた四人の敵幹部のうちの一人だった。
「私たちのデータでも取りに来たって言うの?」
私の問いかけに、
「まあ、そんなとこですね。ついでに、一人ぐらい倒すことができたらいいかな、とも思ってますが」
プリンは、半笑いで答えた。
「ついで!? あなた一人で、何ができるって言うんですか?」
「ダメだよ、パンプティア。この前のコレス・テロールみたいに、とんでもないパワーを持ってるかもしれない。油断は禁物だ」
「そこの白い子、半分正解で半分ハズレです。ボクはコレスやトランスのようなパワー型じゃないので、直接戦闘は苦手です。だけど、こんなことができるんですよ」
パチンと指を鳴らすと、町のあちこちからモワモワと黒煙が立ち上った。私たちのすぐ近くでも、地面に貼りついた茶褐色の団子から黒煙が噴き出す。思いっきり吸い込んでしまい、私は涙を流しながらゲホゲホと咳き込んだ。
「さっきの鼻くそ!?」
「キャロティア、正解。さっきのブタの鼻くそです。実はこれ、特殊なガスが出るようになっています。……さあ、これから何が起きるか分かりますか?」
プリンは冷たい笑みを浮かべ、手を挙げた。
「子供たちよ、集まりなさい!」
その呼びかけに応え、黒煙の中からうつろな目をした子供たちが続々と集まってきた。一人ひとり、手には野球のバットやゴルフクラブ、包丁、金づちなど、物騒なものを持っている。
「このガスは、未成熟な精神に働きかけて正常な判断をできなくさせるのです。さあ、子供たちよ、集まりなさい。大人の言うことなんて聞かなくていい。邪魔な大人は排除すればいいのです」
子供たちはノロノロと、しかし着実にプリンの元へ集まりつつあった。
「なんやコラァ! ガキがイキがるモンちゃうぞ!」
ヤクザのような男が、一人の男の子の前に立ちはだかった。その子をゲンコツで殴りつけた瞬間、男は周囲にいたほかの子供たちから一斉に殴りかかられた。
たとえ大人であっても、真後ろから複数の子供に凶器で殴られては、太刀打ちできるものではない。男はしばらく悲鳴を上げていたが、やがて地面に倒れ、声すら上げなくなった。
「ダメよユカちゃん! そんなもの持ったら危ないわ!」
子供から包丁を取り上げようとした母親が、後ろから別の子供にナイフで刺されて倒れる。
(おいコラ、やることがエグすぎるだろ! この前のコレス・テロールもそうだったけど、コイツらのやってること、日曜朝に放送できる内容じゃないぞ!?)
「赤坂ほのか」ではなく、素の松嶋ヒロシの意識で考える。こんな非道極まりない所業は、一秒でも早く終わらせねばならなかった。
「絶対に許さない! みんな、行くよ!」
キャロットソードを構え、突撃しようとして、――私は背後の異変に気づいた。
「キャロティア……」
「頭が……フラフラして……」
「ごめん、体が……言うことを聞かないです」
ほかの三人は、足をふらつかせ、立っているのもやっとの様子だった。
(あのガスのせいか!)
いまはまだプリンの呼びかけに応えずにはいるが、このままガスを吸い続ければ、彼女たちも催眠にかかってしまうかもしれなかった。
「コレスとは別の意味で、アンタ、最低ねっ!」
私は地面を蹴り、ビルの壁面を蹴り、宙を跳んで一気にプリンに肉薄した。
「子供を思う親の気持ちを踏みにじり、薬物で家族崩壊させるような悪辣極まりないマネをするなんて!」
「くっ! 早いっ!」
プリンは空を飛んで逃げる。しかし、ビルの壁や民家の屋根などを足場に、私は跳躍を繰り返し、敵を追い続けた。
「なぜお前だけガスが効かないんだ!」
焦るプリンに、私は心の中で答える。
(そりゃ、未成熟な精神に働きかけるガスなら、効くわけないだろ。こっちの精神はアラフォーのオッサンだからな!)
「ええいっ!」
裂帛の気合と共に剣を振り下ろす。かわして体勢を崩したプリンに、全身の力を込めてかかと落としを叩き込んだ。プリンは激しい勢いで地面に落下する。私は、その近くにふわりと着地した。
地面に倒れたままのプリン。私はキャロットソードを右手に提げて歩み寄る。
「アンタのやることは、本気で許せない」
「ガスが効かなかったぐらいで、調子に乗るな!」
突然、プリンが跳ね起きた。そのまま逃げるのかと思いきや、彼はすぐ近くにいた女の子を捕まえ、抱きすくめた。
「きゃああっ!」
「この子がどうなってもいいのか?」
人質。窮地に追いつめられた悪役が取る、月並みな手だ。
しかし、問題は人質の女の子だった。
(ミサ!? いや、そんなはずは――!!??)
その女の子は、私の娘、ミサに驚くほどそっくりだったのだ。
その子が、ミサ本人であるはずがない。そんなことは分かっている。しかし、その子の顔も、年格好も、背丈も、着ている服さえも、あまりにもミサに似ている――ミサをアニメ絵で描いたらこんな感じになるだろうといった姿に、私は足を止めざるを得なかった。
「その子を離しなさいっ!」
私の声は、自分でも分かるほど悲痛だった。自分の娘そっくりの子が、目の前で危険にさらされて平然としていられるほど、私は冷酷になれなかった。
「イヤですね。当然でしょう、ククク……」
「いやあっ。おねーちゃん、たすけて!」
「お願い。その子を、離して!」
「そうですね。……じゃあ、まず武器を捨てなさい」
私は無言でキャロットソードを投げ捨てた。カラカラと音を立てて、大きなニンジンが地面を転がっていく。
「よし、お前たち、やれっ!」
プリンの合図と、背中を何かで殴られるのが同時だった。いつの間にか、私の周囲には何人もの子供が集まっていた。そのうちの一人が、バットで私の背中を強打したのだ。変身して肉体が強化されているとはいえ、衝撃で一瞬、息が詰まった。
「痛いっ!」
その一撃を皮切りに、次々と鈍器が振り下ろされた。頭を抱えた腕に、背中に、腰に、雨のように殴打を浴びせられる。
「こらっ、痛いっ、やめなさいっ!」
変身していれば、たとえ金属バットで殴られても致命的なダメージにはならない。だからといって、痛くないわけではなかった。やめろと言ったところで、やめるはずがないのは分かっていたが、それでも言わずにいられなかった。
「ちっ……。変身したままじゃ、大して効きませんね。おい、キャロティア。お前、変身を解除しなさい」
プリン・タイの言葉に、私は血の気が引いた。生身で、それもまだ未成熟な女子中学生の体でさっきのような殴打を浴びれば、間違いなく命にかかわる大けがをするだろう。
「モタモタしないでください。十秒以内に変身解除しなかったら、この子を殺します。十……九……八……」
「分かった! 分かったから、その子を離しなさい!」
私はあわてて変身を解いた。全身を包んでいたコスチュームが、一瞬で中学の制服に戻る。
「これでいいでしょ! 早く、その子を離しなさい!」
「分かった、いいでしょう。そら、アイツのところへ行きなさい」
プリンはあっさりと手を離し、女の子を解放した。
「お姉ちゃーん!」
「ミサ!」
涙目の女の子が走り寄ってくる。私は両手を広げ、その子を抱きしめようとした。しかし、もう少し警戒するべきだったのだ。あのガスは、たとえベジーティアに変身していてもまともに動けなくなってしまうぐらい、子供には強く作用するのだから。
「お姉ちゃん!」
ミサに似た女の子が、腕の中に飛び込んでくる。
「もう、大丈夫だからね。お姉ちゃんがついてる。心配いらないから――」
そう言って抱きしめた瞬間、腹に激痛が走った。
女の子が、私の腹から飛び出す何かを握りしめている。
いや、そうではない。
私の腹に、その子が突き刺したのだ。
ナイフを。
「……ミサ?」
熱い。
痛い。
どうして?
ナイフ?
ミサに、刺された?
強烈な痛みで、思考がまとまらない。
おいミサ、こんなことしちゃダメだろう。人に向けて刃物を使ったら、危ないじゃないか。いくらお父さんでも、刃物で刺されたら大けがするんだから。
だけど、ミサは無事なのか? どこもけがしてないか?
そうか、良かった。お父さんは、ミサが無事なら、それでいい。
もう大丈夫だからな。お父さんが、あの悪いやつをやっつけてくるから。ミサはおうちへ帰って、お母さんと一緒に待ってなさい。
いい子で、待ってるんだよ。
すぐに、帰るから。
いい子で――。
支離滅裂にそこまで考えたところで、足から力が抜けた。
膝が地面にぶつかる。
自分が倒れているのか、地面が持ち上がってくるのか、分からない。
ただ、腹の中が熱くて痛くてたまらなかった。




