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お父さん、魔法少女になる  作者: 春風ヒロ
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第12話「つながり合う思い」1

第12話「つながり合う思い」1


「ハートの守護天使ガーディアンエンジェルセイントココア」

 放送期間:2018年2月から2019年1月。

 主人公はキリスト教をモチーフにした教会で、シスターになるための修行をしている小学生、竜ケ崎心音りゅうがさきここね

 ある日、心音は突然、正気を失い、凶暴になった人々に襲われそうになる。そこに通りかかったのが、ミステリアスなイケメン転校生の埴井吉人はにいきちと。吉人は不思議なアイテムを使って変身し、心音を救出すると、人々を操っていた怪人・ワルモーンと戦う。

 吉人によると、彼らは善良な心の結晶体「ハートジュエリー」を奪われたため、悪の衝動を抑えきれなくなったのだという。

 吉人の本当の名はハニー・キット。異世界の王子だった。しかし、キットの世界の人々はワルモーンによってハートジュエリーを奪われ、善良な心を失ったため、国は荒れ放題に。キットはハートジュエリーを取り戻し、荒廃した国を復興させるため、ワルモーンを追って地球にやってきた。

 しかし、ワルモーンは魔法界で集めたエネルギーによって、大幅にパワーアップしていた。ピンチに陥るキット。思わず駆け寄った心音は、キットの持っていた変身アイテムに触れる。すると、まばゆい光が彼女を包み、彼女は「守護天使・聖ココア」に変身した。

 こうして「聖ココア」となった竜ケ崎心音は、キットと共にワルモーンとの戦いに身を投じていく。(アニペディア『ハートの守護天使・聖ココア』の項より一部抜粋)


「聖ココア」は、ベジーティアが始まる三年前に放送されていたアニメだった。

 当時、小学生だった城井佳奈も、緑山さなも、このアニメを毎週楽しみにしていた。

 まさか自分が将来、魔法少女の一員として戦うことになるなんて思いもせず、ワルモーンと戦う聖ココアを無邪気に応援し、キットとの淡い恋模様に胸を高鳴らせていた。

 そんな思い出の人物が、目の前にいる。アニメのキャラクターは年を取らないのだろうか。放送終了から三年が過ぎているのに、目の前にいる少女は、アニメ放時と寸分変わらない小学生の姿のままだった。

「あ、あの……」

 スピナティアが話しかけようとするのを、聖ココアは片手で制した。

「聞きたいことはたくさんあると思うけど、いまは時間がないの。早くしないと、おねーちゃんが危ないし、私もすぐに消えちゃうから」

「消えちゃう……って、どういうことです?」

「マジックキャッスルが復活したおかげで、私は少しだけこの世界に戻ってくることができたの。だけど、まだ『ゲート』が完全に開いたわけじゃないから、魔力が切れたらすぐに消えてしまう。それまでにおねーちゃんをたすけなきゃ」

 聖ココアは早口で言うと、地面に横たわるキャロティアの体を軽々と抱き上げた。

瞬間移動テレポーテーション

 聖ココアが唱えた瞬間、周囲の景色が一変する。兜山の山腹の広場から、四人は石壁に囲まれた一室へと瞬間移動していた。部屋の中には、童話などでお姫様が寝るときに使っているような、天蓋つきのベッドが置いてある。聖ココアはそのベッドの上に、キャロティアの体を静かに横たえた。天蓋からミストシャワーのように柔らかな光が降り注ぎ、キャロティアの体を包み込んだ。

「これでよし……と。間に合ってよかった。あとは、おねーちゃんが目を覚ますまで、しばらく休ませてあげて」

 聖ココアはラディシティアとスピナティアに向かって、満足気に言った。

「間に合うって、いったい何なんですか? っていうか、ここはどこで、あなたはいったい誰なんですか!?」

 スピナティアが噛みつきそうな勢いで質問を重ねる。聖ココアは申し訳なさそうにうつむいた。

「……ごめんなさい。きちんと説明しないと、分かんないことだらけだよね。だけど、そろそろ時間切れなの。――ほら」

 聖ココアが右手を差し出した。その指先が燃え尽きる直前のろうそくのようにユラユラと揺らめき、いまにも消えそうになっている。

「簡単に説明すると、ここはマジックキャッスルの中。このおマジックキャッスルは、いくつもの世界をつなぐ『門』の役割を持っていて、いま、パンプティアさんはこの上の部屋で扉を開くための儀式をやっているの。まだ門は完全に開いたわけじゃないけど、私はほんの少しだけこの世界に出てくることができた。ええと、これ以上の詳しいことはポンニュちゃんに聞いて! パンプティアさんと一緒にいるはずだから!」

 説明しているうちにも揺らめきは聖ココアの指先から腕、そして体全体へと広がっていく。そして、陽光を浴びた淡雪のようにその姿は薄れ、溶けていった。

「ココアさん!」

 スピナティアの呼びかけに答えるよりも前に、聖ココアの姿は消えていた。スピナティアは誰もいなくなった空間に向かって立ち尽くしていたが、

「……ポンニュを探しに行こうよ。この上の部屋にいるって言ってたよね」

 ラディシティアに言われ、ゆっくりとうなずいた。

 並んで幅の広い階段を上る。そこで二人が目にしたのは、体育館か何かのように広大なホールと、その床一面に広がる光の魔法陣だった。魔法陣の前でパンプティアが一人、歌うように呪文の詠唱を続けていた。

「パン――」

「しっ!」

 声を掛けようとしたスピナティアを、ポンニュが制した。

「いま、儀式の真っ最中ニュ。呪文が途切れたらもう一回、最初からやり直さなくちゃいけないから、邪魔しちゃダメニュ」

「わ、分かったですぅ」

 スピナティアは両手で口をふさいでうなずいた。

 そんなやり取りがあったことさえ気づかない様子で、パンプティアは詠唱を続けている。

 ポンニュは二人に向かってチョイチョイと手招きし、近くの小部屋に入った。パンプティアの邪魔をしないための配慮だろう。

 家具など何も置いていないガランとした小部屋だったが、窓際に腰を下ろせそうな石段がいくつかあった。二人はそこに座った。窓の外に目をやると、さっきまで死闘を繰り広げていた広場と兜山の裾野へ向かって広がる森林、さらにその向こうには兜山の街並みが一望できた。

「……いい眺めですぅ。本当に、ここがマジックキャッスルの中なんですね」

 スピナティアが窓の外を眺めて言った。

 ホールからは、一定のペースで呪文を唱え続けるパンプティアの声が聞こえてくる。

「……なんだか、お経みたいだね」

 しばらくその声に耳を傾けていたラディシティアが言った。長音を多用するフレーズを独特の抑揚を伴って詠唱する呪文は、仏教における御詠歌や、和讃のようにも聞こえた。

言霊ことだまの歌ニュ。仏教のお経や真言マントラ、神道の祝詞のりと、キリスト教の聖句なんかも、もともとは魔法を使うための言葉が組み合わさって作られたニュ。だから、似ているのは当然なんだニュ」

「でも、いま、お坊さんたちがお経を唱えても何も起きないよ?」

「言霊が生まれてから何百年、何千年もの時間が経って、正しい言詞や旋律が失われてしまったから、仕方がないニュ。いま、パンプティアが唱えているのは、『始源はじまりの魔法少女』から、直接教えてもらった呪文なんだニュ」

「始源の魔法少女っていうのは、さっきの『聖ココア』とは別の人なんですか?」

 スピナティアが尋ねる。

「ココアちゃんとは別の人ニュ。もっと前からこの世界を守ってきた人ニュ」

「そもそも、どうして『聖ココア』が出てきたんですか?『門』がどうとかって言ってたですけど……」

「うーん……、ちょっと難しい話になるニュ……。『多元宇宙論』って聞いたことあるニュ?」

 ラディシティアもスピナティアも首を左右に振る。

「ものすごくザックリと説明すると、この世界のほかにも、いくつもの世界があるっていうことニュ。この世界ではベジーティアが実在するけど、さなちゃんや佳奈ちゃんが生活する世界には、ベジーティアも聖ココアもいない。だけど、多元宇宙の中には、ベジーティアが実在したり、聖ココアが実在したりする世界もあるニュ。ほかにも、ウルトラマンや仮面ライダーが実在する世界、科学の代わりに魔術や超能力が発達した世界もあるニュ。それぞれの世界はまったく独立しているんだけど、つながり合っている部分もあるニュ」

 ポンニュはそこまで言うと、右手を振った。ポンと音を立てて、ポンニュの手の先にいくつもの小さな球体と棒を組み合わせて作った模型が表れる。

「……何ですか、これ?」

「分子模型ニュ。球棒モデルって言って、原子がどんな形で結合して分子を作っているか、表している模型ニュ」

「キューボーモデル……ゲンシ……?」

 目を点にして、首をかしげるスピナティア。

「高校生になったら化学の授業で使うと思うニュ。いま大事なのは分子模型の説明じゃないから、分からなくてもいいニュ。この原子一つひとつが、世界――地球だけじゃなくて、無数の銀河を含む宇宙全体を含めた世界――だと思ってほしいニュ。一つひとつの世界は独立しているんだけど、隣の世界ともつながってる。いくつもの世界がつながり合って、少しずつ干渉し合いながら存在してるニュ」

「つまり、ボクたちはこの棒を飛び越えて、『ベジーティアのいない世界』から『ベジーティアのいる世界』へ来てるってこと?」

「そうニュ。みんなが使ってるマジックパスは、この世界と世界をつないでるニュ。そして、それぞれの世界は独立してるけど、干渉してる部分もある。ベジーティアの世界で死んだら、元の世界の城井佳奈や緑山さなも死んじゃうのも、それぞれの世界がつながって、干渉してるからニュ。

 だけど問題は、ヘドローンだニュ。ヘドローンは人間の悪意や憎しみといった気持ちが集まって生まれているニュ。だから、人間がいる世界なら、どこにでも現れるニュ。この世界のヘドローンを倒しても、別の世界でまたヘドローンか、それに似た存在が生まれてくるニュ。

 だから、世界を飛び越えてヘドローンの力の根源を断ち切る必要があるニュ。

 マジックキャッスルは、この分子模型で言えば全ての原子とつながってるニュ。だから、世界を超えて現れるヘドローンを倒すことができるニュ。そして、さっき聖ココアがちょっとだけ助けにきてくれたのは、彼女の世界がこの世界と一番近くて、つながってる部分も多かったからニュ」

「……じゃあ、パンプティアの儀式が終わって門が完全に開いたら、聖ココアや始源の魔法少女が助けにきてくれるってこと?」

「それは、分からないニュ。彼女たちの世界でもヘドローンやワルモーン、ゴクアッカー、スゴクワルイ族、とにかくいろんな形で現れるヘドローンとの戦いは続いているニュ。さっきみたいに都合よく、助けにきてくれるかどうか……」

「え、でも、聖ココアはもう何年も前に終わったアニメですよ?」

「それは『この世界』での話ニュ。多元宇宙の中には、ワルモーンとの戦いが終わった世界もあれば、終わってない世界もあるニュ。ワルモーンを倒しても、次のワルモーンが出てくることだってあるニュ」

「うー……、なんだか頭がゴチャゴチャしてくるですぅ……」

 スピナティアが頭を抱えてうずくまる。

「とにかく、ボクたちがやらなきゃいけないことは、パンプティアの儀式が終わって、キャロティアが目を覚ますのを待って、ヘドローンを倒すこと。――だよね?」

「そういうことニュ」

「分かった。難しいことは置いといて、ボクたちは、ボクたちがやるべきことをやろう」

 ラディシティアが固い決意を込めて、そうつぶやいた時だった。

「うん? ちょっと待って。……何だろう、あれは?」

 森の木々の隙間から、何か派手な色合いのものが動くのがチラリと見えた。ラディシティアは窓から身を乗り出して、その方角を凝視する。

 人や、自然の動物ではない。もっと、ずっと大きい何かが、森の中からこちらへ向かって近づいてきている。

 しばらく見つめるうちに、それが複数の生命体であることにラディシティアは気づいた。

 派手な原色の胴体を持つものや、木々よりもずっと巨大なもの。木々の間を縫うように飛び回る虫や鳥のようなもの。それは――

「――メタミートだ!」

 ピエロのような怪人やトリやブタなどの生物、たこ焼きやピザ、カツ丼、カレーライスといった食品をモチーフにした怪物など、これまで倒してきたはずのメタミートが、列をなして近づいてくる。パッと見ただけでも、二十体以上はいると思われた。

「そんな……」

 血の気の引いた顔で、スピナティアがつぶやく。

 ベジージェムや形態変化でパワーアップし、戦闘経験を積み重ねてきたことで、大幅に強くなっていることは間違いない。しかし、四人のベジーティアのうち、一人は重傷を負って意識不明。一人は魔法陣解放の儀式にかかりっきりで身動きが取れない。

 二人だけで、メタミートの大群を迎撃しなくてはならないのだ。

 メタミートの数が二、三体程度であれば、たとえ二人でも十分に対応できただろう。しかし、二十を超える敵と同時に戦うのは、スピナティアには無謀としか思えなかった。

 スクッとラディシティアが立ち上がった。ラディッシュハンマーを握り、唇を固く噛みしめながら。

「ら、ラディシティア……」

 心配そうな顔でポンニュがラディシティアを見上げる。

「ボクは行く」

 ラディシティアは決然と言った。

「でもニュ……」

「無理でも無茶でも、ボクたちがやるしかないじゃないか! いま、ここで戦えるのはボクたちだけなんだ! パンプティアの魔法が終わるまで、キャロティアが復活するまで、ここを守り抜いて、一分でも一秒でも時間を稼ぐしかないじゃないか!

 ボクは、いや、ボクたちは、ずっとキャロティアに――松嶋さんに、守られてきた。松嶋さんからしたら、ボクたちはずっと子供だから、頼りなかったのかもしれない。だけど! ボクたち、仲間じゃないか! 戦う力を持っているのは、ボクたちだって同じじゃないか!

 ボクたちがベジーティアを続けてきたのは、どうして?『困っている人をたすけたい』、そんなのどかの思いを守りたくて、大事な仲間を守りたくて、ずっと戦ってきたんじゃないか! ボクたちの力は、大切な人を守り、一緒に戦うための力なんだ!

 コータのお葬式に行ったとき、みんなで誓ったじゃないか!『もう誰も死なせない。そのために力を合わせて戦おう』って。だから、ボクは戦う。キャロティアを、パンプティアを、そしてこの世界を守るために!」

 それは、魂を振り絞るような絶叫だった。

「ラディシティア、あなた一人じゃないです」

 スピナティアも、スピナボウを握りしめて立ち上がった。その双眸には、もう恐怖も迷いもない。

「私たち、四人でベジーティアです! 二人を守ってみせるです!」

 二人同時に、飛翔形態に変身する。

「ちょちょちょ、ちょっと待ってニュ!!!」

 二人が窓から飛び出そうとするのを、ポンニュは必死に押しとどめた。

「二人とも! ちょっと待っててニュ!! お願いだから、ボクが戻ってくるまで待っててニュ!!」

 ポンニュは二人に向かってそう言うと、ポンと音を立てて姿を消した。取り残された二人は、困惑して顔を見合わせる。

「待つって言っても、いつまでも待てないよ……」

 ラディシティアがつぶやく。実際、こうしているうちにもメタミートの大群はジワジワとこちらに近づいてきている。

「松嶋さんだったらこんなとき、何か対策を考えてくれたかもしれないですぅ」

「そうだね……」

 たとえば、山道のどこか、敵が散開して襲い掛かれないような狭い場所を使って、敵を迎え撃つということだって考えられたかもしれない。

 城門や城壁の代わりになるようなものを見つけて、少しでも障害物を築くことだって考えついたかもしれない。

「何も思いつかなくても、『私がこうするから、援護して!』って言って、まず自分が最初に危ないところへ飛び込んで、私たちを守ってくれてたですぅ」

「そうだね……」

 ラディシティアとスピナティアにとって、キャロティア・松嶋ヒロシは、かけがえのない仲間であると同時に、心から頼れる存在となっていた。

「佳奈ってもしかして、ヒロシさんのこと、ちょっと好きだったりするです?」

「そうだね……って、ちょ、待って、何言わせるんだよぅっ!」

 ボンヤリと答えた後で、ラディシティアは真っ赤になって自分の言葉を否定する。

「ダメですよー、松嶋さんはもう結婚してるですぅ」

「そ、そんなことボクも分かってるよっ!」

「佳奈、顔が真っ赤ですぅ」

「そんなこと言うんだったら、さなだって、拓人のことはどうなんだよ!」

「た、たたた拓人がどうだって言うんです!? あ、アイツはただの幼馴染で――」

「のどかが死んで、拓人が引きこもりになって、ずっと心配してたじゃないか。毎日、連絡のメッセージ送ってたんでしょ」

「それは別に友達というか幼馴染として心配だから連絡してただけでそこに特別な感情なんて入ってないというか入ってたというか入ってないわけじゃないけどそんなこといくら佳奈にも言えないですぅ」

「ほーら、さなだって顔真っ赤じゃないか」

「ひ、ヒキョーですぅ!!」

「いいじゃないか、いまはボクたち二人だけなんだし。ほかに誰も聞いてないし、ボクだって誰にも言わないよ。ちなみに……、ボクはヒロシさんのこと、頼りになる、素敵な大人だと思ってる。それはもしかしたら好きって気持ちに似てるのかもしれないけど、多分、違うものなんだ。ボクは……そう、憧れてるんだと思う。あの人が仲間として、近くにいてくれる。あの人と一緒に戦える。それがすごく……心強いんだ。だから、いま、あの人がいなくて不安だし、心配だし、早く目を覚ましてほしいって心から思うんだ」

「あー……、うん、その気持ちは分かるですぅ。松嶋さんがいるだけで、すごく安心できてたですぅ。拓人への気持ちと、松嶋さんへの気持ちって、私もやっぱり違うですね」

「拓人はやっぱり特別?」

「と、特別とか! そんなんじゃ……なくもないというかないというかなんというかゴニョゴニョ……」

「……この戦いが終わったら、松嶋さんとは会えなくなるのかな。それが当然のことなのかもしれないけど、ちょっと寂しい気もするな」

「同じ町に住んでる人だけど、全然違う世界の人だったですもんね……」

「そう考えるとさ、このベジーティアの世界も、ボクたちの住む世界も、『いろんな世界』が重なり合って、つながり合って、そうやってできてるんだね。さっきのポンニュの模型のように、別々の世界が何かのきっかけでつながって、大きな世界ができてるんだ」

「そうですね……」

「拓人とも、もう少しつながって、距離が縮まるといいね」

「だ・か・ら! そういうのは――!!」

 スピナティアが再び顔を赤くして大声を出す。その背後から、ポンというコミカルな音と共に、

「ニュー!」

 ポンニュが勢いよく飛び出した。全身を大きく震わせ、荒い息をついている。

「ハァ、ハァ、お待たせ……ニュ……」

「ポンニュ! どこ行ってたんだよ!」

 ラディシティアの問いに答えたのは、ポンニュではなかった。

「オレたちを呼びにきてたんだ」

 汗と脂の混じり合った雄の臭いと、野太い声。ダブルバイセップスからのラットスプレッド。

「コイツにキャロティアがピンチだって言われてな。助けに来たってワケだ」

「トランス!」

「佳奈……。この前は、すまなかったな……」

 体の際どい場所を最低限隠すだけのボンデージスーツを着ているのに、妙にオッサン臭いしゃべり方。

「コレス!……っていうか、江藤のおじさん!?」

「え、もしかして佳奈、コレスと知り合いなんです!?」

「え、あ、そう、なんだけど、話が長くなるから、詳しいことはまた後で!」

 コレスの後ろから、おずおずとメガネの少年が顔を出す。

「えっと……、ポンニュに聞いたんだけど、本当にさな、なのかな?」

「プリン! って、どうして私の名前を知ってるです!?」

「いや、あのボク、沢渡――」

「拓人!? ってなんで拓人が出てきてこれどうして何がどうなってあばばばば――」

 スピナティアが素っ頓狂な声を上げる。

「だ、大丈夫!? 城井さん、さなはどうしちゃったの?」

「か、佳奈! 余計なこと言わなくていいですぅ!!!」

「さな、熱でもある? 顔真っ赤だけど――」

「だ、大丈夫ですぅ!!!」

 額に手を当てようと差し伸べてきたプリンの手を、スピナティアが力いっぱい払いのけ、バシッと乾いた音が響いた。

「いたっ! ヒドいな、何すんだよ!」

「あっ、いや、あの、ゴメンですぅ!!!」

「――おい。ラブコメしてるトコ悪いけど」

 プリンとスピナティアのやり取りに、トランスが割り込んで言った。

「あんまりのんびりしてる時間、ないんじゃねぇか?」

 窓の外を指差す。木々の間からはっきりとその姿が確認できるほどの距離まで、メタミートたちは近づいていた。

「あ、ホントだ」

 窓の外を眺めたコレスがうなずく。

「……本当に、信じていいんだね? メタミートは、この人たちの仲間だったんだろ?」

 ラディシティアは、ポンニュに念を押す。

「大丈夫ニュ。三人とも、きちんと事情を話して、キャロティアとパンプティアを守るために来てもらってるニュ」

 その言葉を受けて、プリンが言った。

「ボクたちがこれまでベジーティアに対してやってきたことを考えたら、城井さんやさながなかなか信じてくれなくても仕方ないと思う。だけど、ヘドローンの目的を知ってしまったら、二度とヤツに協力する気にはならない。ヘドローンからこの世界を守るために少しでも力になれるなら、ボクたちは戦う」

「……分かったですぅ。じゃあ、一緒に戦うです。だけど拓人、こっちでは私は『緑川さやか』で『スピナティア』だから、さなって呼ぶのはやめてほしいです」

「うん、あ、そうだったんだ、ごめんね」

「じゃあ、気を取り直して――」

 ラディシティアは右手を差し出した。

「うむ」

 コレスがその上に右手を重ねた。

「おう」

 トランスが更にその上から右手を重ねる。

「よ、よろしく」

 プリンがその上に右手を乗せた。

「プリン、信じてるですよ」

 プリンの右手を包むように、スピナティアが右手を乗せた。

「みんなで、この世界を守ろう!」

「「「「おおーっ!」」」」

 ラディシティアの掛け声に、全員が応じた。

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