第10話「全力究極限界突破!!!」4
第10話「全力究極限界突破!!!」4
「止水」という技をゲーム風に解説するならば、「一定時間、相手の物理攻撃を百パーセントの確率で回避し一方的に攻撃することができるようになる技」となるだろう。
一見すれば「無敵状態になれる技」のようだが、この隠神流奥義も、決して万能の技ではない。
まず、止水の発動時間は、使い手の技量によって大きく変動する。円熟の境地に到達した達人であれば、長時間、技を発動させ、維持できるが、未熟な使い手であればわずかな時間しか発動させられない。また、止水という名の表す通り、技の維持には、静まり返った水面のような精神状態が必要となる。極限の興奮状態ともいえる全力全開の戦闘とは、まったく対極にある精神を維持しなくてはならないのだ。
私自身は、決して剣の達人でも熟練の武道家でもない。ベジージェムのパワー。これまで積み重ねてきた特訓や戦闘の経験値。そして何より、仲間を守りたいという強い思い。それらが絶妙に組み合わさったおかげで、奥義を発動させているに過ぎない。
ほんのわずかなバランスが崩れただけでも、止水は途切れてしまうだろう。そうなる前に、致命傷となる一撃を打ち込まなくてはならないのだ。
しかし、焦りは禁物だ。焦れば心が乱れる。氷のように冷たく引き締まった心で、着実に隙を見出さねばならない。
トランスの剛拳を紙一重でかいくぐり、時折、背後から飛んでくる矢や爆弾を避けながら、一撃、また一撃と、私は斬撃を打ち込み続けた。
「この調子で……!」
最後の一撃を打ち込もうとした瞬間、私はこれまでで最大規模の攻撃の予兆を感じ取った。
「チョコマカと、鬱陶しい! まとめてぶっ飛ばしてやる!」
トランスが叫ぶ。その巨体の中心に、とんでもない量のエネルギーが集約されていくのが「視えた」。一瞬後にはそのエネルギーが圧倒的質量をもって解放される。エネルギー波は摂氏数千度の熱と爆風となって放出され、ありとあらゆるものを焼き尽くし、吹き飛ばす。半径数キロ以内のエリアは焦土と化すだろう。
「極大爆裂放射!!!」
たとえ魔力による防御障壁を張り巡らしたとしても意味はない。防火服を何枚も重ね着したところで、生身の人間が爆弾の直撃を受ければ、無事でいられないのと同じことだ。
(いくらなんでも、この規模の爆発は避けられない! ならば――ッッ!)
とっさに私は、トランスとの距離を詰めた。
「反射盾力場!!!」
トランスにキャロットソードを密着させ、剣先に魔力の力場を展開。トランスから放出されるエネルギーを、ゼロ距離で弾き返す。
それは、完全な賭けだった。
「反射盾力場」の魔法はその名の通り、相手の放った魔力波などを反射する効果がある。しかし、入射角と反射角をきちんと計算しないと、反射したエネルギーがとんでもない方向へ飛んで行き、仲間を傷つける可能性があった。また、防御のためだけに展開する魔力障壁と違い、エネルギーを反射しなくてはいけないため、維持に必要な魔力がずっと大きい。しかも、相手のエネルギーが大きすぎた場合、盾がそれを反射しきれずに崩壊する可能性もあった。
うまく使えば便利かもしれないが、あまりにも使いどころが限られており、この魔法に頼るよりも、スピードを生かして避けるか、防御障壁で防ぐほうがずっと確実だったため、これまで一度も使ったことがなかったのだ。
(反射……しきれるのか!? この超絶規格外のバケモノの、フルパワーの一撃を……!)
刹那、迷いと恐怖が込み上げる。しかし、考えている時間など残されていなかった。
「できるか、できないかじゃない! やるんだ! やるしかないんだよ!」
刀身にきらめく二つのベジージェムが、さらに輝きを増した。
「限界突破全力全解放!!!」
ベジージェムからほとばしる光で、世界が深紅に染まる。剣先に集中させた魔力が力場となって広がり、トランスの放出する爆風を受けとめた。
反射しきれない熱と爆風に押されて、ジリジリと身体が後退する。強烈すぎるパワーで全身の細胞が粉々になりそうだ。しかし、ほんの一瞬でも力を抜いてしまえば、エネルギーの奔流に飲まれ、私の体は跡形もなく焼き尽くされてしまうだろう。その緊張感を例えるならば、地上数百メートルの断崖絶壁で綱渡りをしながら、ゾウと綱引きで力比べをしているようなものだった。
(無理でもなんでも、やるしかない! 魔力を、命を、魂を、果ての果てまで燃やし尽くせ――!)
深紅だった目の前の光は徐々に明るさを増し、オレンジ、黄色、そして黄白色へと変わりつつあった。もはや、まともに目を開けていることもできない。それでも、キャロットソードを握りしめた両腕だけは一ミリたりとも動かさぬよう、私は全生命力を振り絞った。
私自身はまったく気づいていなかったが、まばゆい光の中で、コスチュームの色が変化していた。
ニンジンのイメージカラーであるオレンジ色から、花嫁衣裳を思わせる純白へと。
「あれは……」
遠く離れた場所で戦況を見守っていたポンニュがつぶやく。
「あれは、究極形態ニュ……!」
まったく、この小娘は本当に信じられないヤツだ。
それが、オレの心の底からの感想だった。
中学までは空手を。高校からはアマチュアレスリングを。その後、プロレスのジムに入門し、プロレスラーとして活動し、総合格闘技に転向。約三十年の人生のほとんどを「戦うこと」だけに費やしてきた。
そんなオレが、ヘドローンから超絶規格外のパワーを授かった。アニメ世界の中だけの話とはいえ、このパワーがあれば、間違いなくオレは「世界最強」の存在だったはずだ。
それなのに――。
どうして、コイツはオレの全力攻撃を受け止めやがる。
いや、受け止めるだけじゃない。
押し返して、弾き返してきやがる。
コイツはオレのことをバケモノのように思っているのかもしれないが、そっちのほうがずっとケタ違いのバケモノじゃねえか。
全力で放出するエネルギーの押し合い。腹筋が、大胸筋が、焼けついて千切れそうだ。
(耐えられるか……。いや、耐えるんだ! 耐えてこそパワー! すべてを受けて、なお立ち上がるのが強さ!)
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!!」
ブラックホールを思わせるほど超高密度のエネルギーの中で、オレは絶叫していた。
「動くんじゃねえ!」
先輩レスラーの怒鳴り声と同時に、パパパとシリンダーがBB弾を射出する音が響いた。
殺風景な道場の片隅に、入門したばかりの三人の男が並ばされていた。三人とも、目を保護するためのゴーグル以外、何一つ身につけていない。
三人のうちの一人が岡田トシヤだった。
顔に、腕に、陰部に、容赦なくBB弾が炸裂する。スズメバチに刺されたような激痛が全身を襲うが、悲鳴を上げれば口の中にBB弾が飛び込んでくるため、口を開けるわけにはいかない。顔をゆがめてひたすら耐える。激痛のせいで涙と鼻水が込み上げるが、エアガンを乱射する先輩レスラーたちはそれを見てゲラゲラと大笑いするばかりだった。
「『無理偏に拳骨』と書いて『兄弟子』と読む」。これは、格闘技界全般に通じる言葉だと言っていいだろう。先輩の命令は神の言葉にも等しく、どんな理不尽な内容だろうが絶対服従。口ごたえなど許されなかった。
たとえそれが、「お前ら、全裸でエアガンの的になれ」であっても、「パンイチでコンビニにタバコ買いに行ってこい」であっても、だ。
(お前ら全員、いつかまとめてブッ殺してやる)
歯を食いしばって苦痛と屈辱をこらえながら、トシヤはひたすらそれだけを考えていた。
やがて、復讐の機会が訪れた。
事あるごとに「かわいがり」と称して理不尽な暴力を繰り返していた先輩レスラーとの対戦カードが組まれたのだ。
その試合でトシヤに与えられた「仕事」は、精一杯、先輩レスラーの技を受け、華々しくダウンする「負け役」だった。しかし、トシヤは試合中、その筋書きを無視して先輩レスラーを引き倒し、マウントポジションを取ってグラウンドパンチの雨を降らせた。すぐにセコンドについていた別のレスラーが乱入し、トシヤを引きはがしたが、わずか数秒で相手のレスラーは数本の歯を失い、鼻骨と眼窩、頬骨、顎骨の一部を砕かれ、血みどろになって救急搬送された。素手で殴ったため、トシヤも右手の甲に裂傷と、何カ所かの骨にヒビが入った。
試合は無効となり、トシヤは社長から厳重注意を受けた。
後日、別の先輩レスラーから「個別指導」という名目で道場に呼び出され、意識を失うまで木刀で殴打された。それは、言うことを聞かない新人への「しつけ」と称した、単なる報復行為だった。
血の泡を吐きながら道場の片隅に横たわり、朦朧とする意識のなかで、トシヤはつぶやいた。
「クソどもが……。文句があるなら、リングでやりやがれ……」
しかし、トシヤが再びその団体のリングに上がることはなかった。
「私怨があるのは分かるが、試合で選手を傷つけるようなヤツを、リングに上げるわけにはいかない」
団体の上層部が、そう判断したのだ。
ほどなくトシヤはプロレスそのものに見切りをつけ、「何でもあり」を標榜する総合格闘技団体に移籍した。
実力だけがものを言う世界。一瞬でも気を抜けば命にも関わる、真剣勝負。それこそ、トシヤが求めていたものだった。
一つ、また一つと勝ち星を積み重ね、二十代後半で全日本チャンピオンへと上り詰めた。
しかし、そこでもトシヤは鬱憤を募らせていた。
総合格闘技は、年に数回しか試合がないのだ。
プロレスなら興行中はほぼ毎日、場合によっては一日に複数回の試合を行うことさえあった。しかし、一回一回の試合で体に深刻なダメージが蓄積される総合格闘技では、そういうわけにいかない。試合を終えればじっくりと休息を取って体を回復させ、ゆっくりとトレーニングを再開し、やがて、次の試合が決まればその日に向かって体を作りスパーリングを繰り返す。試合はまさにトシヤが求めていたそのものだったが、日常生活では、常に「もっと戦いたい」という不満を抱えていた。
だからこそ、ヘドローンの誘いに乗ったのだ。
超パワーを得たこの世界であれば、無限に暴れることができる。どれだけケガをしても、実生活にはなんの影響も及ばない。ときどき小娘が邪魔をしてくるから、手下のメタミートを使って適当にあしらっておけばいい。やがて、小娘たちはお前を満足させられるほどに強くなる。その時がくれば、全力で戦え。
ヘドローンの言葉はトシヤにとって限りなく甘美なものだった。
コレスやプリンといった仲間たちのことは、どうでもよかった。
「所詮、この仮想現実の世界で一緒になっているだけの相手だ。死のうが生きようが、好きにすればいい。オレはオレのやり方で、この世界での強さを求めていく」
そう心を決めていた。
そんななか、現実世界で迎えた久々の試合。それも、絶対に負けられないタイトル防衛線だった。
満を持して出場したはずの試合なのに、なぜか体は全然ついてこなかった。
格下の相手に完膚なきまでに叩きのめされ、ノックアウト負け。
本来の「チャンピオン・岡田トシヤ」であれば、絶対にあり得ないことだった。
年齢のせいなのか。それとも、もっと別のところに何かの理由があったのか。
やるせない思いを晴らしたくて、この世界に飛び込んだ。
本来であれば、「トランス・ファット対ベジーティア」の戦いはもうしばらく後のはずだった。ミートジェムを何度か使い、そのパワーを完全に引き出せるようになってから、ベジーティアたちと戦うことになっていた。
しかし、いまのトシヤにとって、すべてがどうでもよかった。
純粋な闘争。ただそれだけを欲していた。
(そもそも……どうして、オレは強くなりたかったんだ?)
押し寄せる超エネルギーの波の中で、トシヤは自分に問いかけていた。
トシヤは子供のころから力が強く、体格にも恵まれていた。
しかも幼少期から格闘技を習い、トレーニングを続けてきたので、ケンカで負けることはなかった。
(最初はただのケンカだった。相手が泣くまで叩きのめす。それが気持ちよかったんだ)
しかし、年を重ねるにつれて世界が広がり、格上の相手と出会うことが増えた。
アマレスでも、プロレスでも、総合でも。
思いがけない強さを持つ相手に出会い、勝つためにトレーニングを積み重ねる。
体中の関節が外れて、全身がバラバラになるんじゃないかと思うほどの柔軟体操。筋肉が沸騰して千切れるんじゃないかと思うほどの筋トレ。脳みそがマヒするまで繰り返す受け身や寝技、タックルの打ち込み。足を取られた状態や、がぶられた状態など、さまざまな状況を設定して行うスパーリング。
血尿を垂れ流し、血反吐を吐き、何度も何度も叩きのめされるうち、ある日、自分の強さを実感する瞬間が訪れる。
蹴れなかった高さまで、蹴りが届く。がぶられる前にタックルが決まる。コンビネーションが決まる。ガードをかいくぐって、パンチがクリーンヒットする。倒せなかったはずの相手が、倒せるようになる――。
階段を一段、また一段と登るように、自分が少しずつ強くなる。
いつしか、それが快感になった。
(この道を上り続ければ、何が見えるんだろうか。オレは、誰も届かない高みを目指したい。世界中の誰も――)
そんなオレが、こんなところで倒れているわけにはいかない。
オレは、もっともっと強くならなくてはいけないのだ。
ベジーティアごときに後れを取っていたら、現実世界でも勝てなくなってしまう。
「そうだ。オレはこんなところで倒れる男じゃない。立て、立つんだ、岡田トシヤ!」
自分の体が立っているのか、倒れているのかさえ、定かでなかった。
しかし、気持ちを倒すわけにはいかない。
全魔力を爆発エネルギーに変換し、放出する「極大爆裂放射」。そのダメージをまともに反射されたいまの状態を格闘ゲームに例えるなら、ライフゲージは片隅にほんの少し残っているだけ。小パンチを一発入れられただけでも「K.O!」となるだろう。
しかし、それだけのエネルギーを反射し続けたベジーティアも、無事ではいられなかったはずだ。
それなら、残った力を全部使って、ベジーティアをぶっ飛ばす。
トシヤは、右の拳を全力で握りしめた。
それは四十年近く生きてきた私、松嶋ヒロシの人生の中で、最も死に近づいた時間だった。
ほんの一瞬、息継ぎをしただけで、ほんの一瞬、キャロットソードを支える腕が震えただけで、私も仲間たちも超エネルギーの奔流に飲まれ、跡形もなく蒸発していただろう。
まさしく、ベジーティアになって最大の危機だった。
自分の中にある全生命力、全魔力を振り絞って力場を維持し続ける。
その最中、形容しがたい不思議な感覚が自分の中から湧き上がってきたことは自覚していた。しかし、それが何なのか確かめられるほどの余裕はなかった。
違和感を覚えたのは、トランスの爆裂魔法をしのぎきった後だった。
危機を乗りきり、力を抜いてもいいはずの状況で、なぜか全身から力を抜くことができなかった。
力を抜けば、全身がバラバラになってしまう。
確証があったわけではないが、私はそう感じていた。
それが、自分の身に着けているコスチューム――「究極形態」のパワーによるものだと気づいたのは、しばらくしてからのことだった。
(うっそだろ……!? ついさっき『戦闘特化形態』になったばかりなのに、さらにパワーアップするのかよ!?)
理解が追いつかない。さらに困ったのが、究極形態は、そのパワーが強すぎて自分の意思で解除ができないことだった。
(これは……マズい。ものすごく、マズい!!)
先ほどまでのバトルで、既に体力も精神力も消耗しつくしている。
意識を保つだけでもギリギリの状態なのだ。
(まさか……、パワーが暴走する!?)
脳裏に浮かんだのは、ミートジェムのパワーが暴走し、意識を失ったまま暴れたコレスの姿だった。
私も、あんな風になってしまうのか――。
必死で意識をつなぎとめようとしていたとき、私の視界の片隅に、トランスがゆっくりと拳を握りしめるのが映った。
(こんな状態になってもまだ、コイツは戦意を失ってない!? また、あんな超絶規格外のパワーをぶつけられたら、今度こそ全滅してしまうぞ!?)
死の恐怖が意識を塗りつぶしていく。
視界が白く染まって、何も見えなくなる。
トランスの拳以外は、何も――。
マダ、ヤルツモリナノカ。
私ガ、倒サナクテハイケナイ。
殺スツモリデ殴リ続ケナクテハイケナイ。
ソウダ。殺サナクテハナラナイ。
コロサナクテハナラナイ。
コ・ロ・サ・ナ・ク・テ・ハ・ナ・ラ・ナ・イ――!!!
「キャロちゃん?」
パンプティアが驚きの声を上げた。
キャロティアが発したのは、普段の彼女から想像もできないような、感情の起伏を一切伴わない平板な声だった。
だからこそ、そこに含まれる冷徹な殺意が強調されていた。
キャロティアはトランスの懐に飛び込み、素手で殴りかかる。
それは、見方によっては不思議な光景だった。
ウェディングドレスを思わせる純白の衣装に身を包んだ小柄な少女が、巨漢を押し倒し、馬乗りになって殴り続けているのだ。
トランスは両腕を上げてガードしながら、下半身を跳ね上げてマウントポジションから逃れようとする。しかし、キャロティアの体は鋼鉄の塊にでもなったかのように、びくともしなかった。
ガッ、ガッと、肉を打ち据える鈍い音が響く。
その時になって、ようやく三人のベジーティアは、キャロティアの異常を理解した。
「キャロちゃん、ダメーッ!!!」
パンプティアが飛びつき、キャロティアの腕を押さえようとする。しかし、軽く振り払っただけでパンプティアの体は跳ね飛ばされた。
「しっかりするんだ、キャロティア!」
ラディシティアがキャロティアに抱き着いて、その動きを押さえた。跳ね飛ばされそうになるが、ベジージェムのパワーを解放して必死でしがみつく。その弾みで二人はトランスの上から落ち、地面に転がった。
「あなたの力は、大切な人を守るための力だったはずだ! 人を傷つけるための力じゃない! ボクたちは誓ったじゃないか!『もう、誰も死なせない』って!」
信じられない力で暴れるキャロティアに向かって、必死で呼びかける。抑えきれない思いが涙となってあふれていた。
「ダメだよ! これ以上はダメだ!」
キャロティアの腕が動くたび、全身が玩具のように振り回される。顔も体も、すっかり砂ぼこりにまみれていた。
「ダメだよ! ヒロシさん!!!」
涙と共に、思いを振り絞る。
その声が届いたのか。キャロティアの体からふっと力が抜けた。
コスチュームの放つ光が和らぎ、その色が純白から、明るい赤へと変わっていく。
しばし静寂が流れる。
「……ありがとう、佳奈」
キャロティアはそう言って、ラディシティアの頭を優しく撫でた。




