79 緊急任務
連勤術…シャチクの休日を対価に、サビザンを錬成する。連続で使用するとシャチクが死亡する。なお、生産性はほぼ皆無である。
あー、休みが欲しいです…。
真っ暗になった祭り会場で、緊急呼出を受け取った僕たちは、顔を見合わせ頷き合った。
「母さん、マドカ! ちょっと行ってくる!」
ケガ人の手当てに奔走している二人に声をかける。すると、マドカは涙を堪えるような顔で、母さんはくっと唇をかみしめながら、僕の方を見た。
「いってらっしゃい、カナメ。皆を守るため、しっかり働きなさい。」
母さんの言葉に、僕は無言で頷いた。それを見た母さんは、すぐに次のケガ人のところに駆け寄って行った。
「クロちゃん! カナメちゃんをお願い!!」
「承知した。」
マドカの声に、僕の肩の上にちょこんと座ったクロが、静かな声で答えた。マドカは小さく鼻をすすった後、下手糞な笑顔で僕に大きく手を振り、母さんを手伝うため、走って行ってしまった。
僕たちは、高天原防衛学校に移動するため、北門側にあるバス乗り場へ向かった。でもそこには、帰宅する人たちの長い行列ができていた。
皆一様に、強張った表情でバスを待っている。ここにいる人たちは、僅かな魔力しか持っていない、普通の人たちばかりだ。魔獣に襲われても、ほとんどの人たちは自分の身を守ることが難しい。
それでも恐怖によるパニックが起きないのは、城砦で日常的に行われている、魔獣対策の避難訓練の賜物だろう。
僕たちも彼らの後ろに並んで、バスを待つことにした。でも、バスを待つ行列は遅々として進まなかった。
「全然進めないね。それにバスが来る間隔も、いつもより遅いみたい。」
「さっきの魔力震の影響だろう。ただでさえ人手が多いってのに、この有様だからな。歩いていく方が早いか?」
「でも、夜の地下道を歩くのは危険すぎるよ。さっきの魔力震のせいで、魔獣たちが活性化してるだろうし。」
僕たちがそんなことを話していたら、再びマギホから軍用の非常呼出音が響いてきた。
「『位置情報を補足されました』だって! これって、もしかして!」
マリさんがそう言うのと同時に、バス亭に続く地下道の入り口から、恐ろしい勢いで軍用の兵員輸送浮遊車が飛び出してきた。
「早く乗れ!」
「笹崎教官!!」
目を丸くして驚く人たちの前を横切り、僕たちは教官の操縦する浮遊車に乗り込んだ。教官は、扉を閉めると同時に車両を急発進させ、地下道に飛び込ませた。凄まじい勢いで風景が流れていく窓の外を横目で見ながら、僕は教官に尋ねた。
「一体何が起きたんですか?」
「『八十柱結界』が停止した。」
教官の言葉に、僕たちは文字通り言葉を失った。『八十柱結界』は各城砦を魔獣から守る要であり、同時に皇国の地下を流れる龍脈を、各城砦に行き渡らせる働きがある。城砦防衛と魔術の礎を担う、重要なインフラなのだ。
それが失われたということは、魔術を行使できなくなった城砦の人々に、魔獣の群れが押し寄せてくるということだ。もしかしたら、10年前の高天原大嘯のような魔獣災害が、各地で引き起こされるかもしれない。マリさんは表情を亡くし、青ざめた顔で小さく体を震わせた。
教官はミラー越しにそんな彼女を見た後、彼女を落ち着かせるように、静かな声で話しかけた。
「安心しろ、阿久猫。現在、城砦にいる全貴族に、各城砦の結界システムを通じて、八十柱結界を再起動させるための魔力を注入するよう、緊急命令が下されている。すぐに何か起きるということはない。結界の、じきに元に戻るはずだ。」
教官の言葉に、マリさんは僕の顔を見た。僕は彼女に大きく頷いてみせた後、再び教官に尋ねた。
「復旧は可能なんですね。でも、なぜそんなことに?」
でも、僕の問いかけに教官が答えるよりも早く、僕の肩の上にいたクロが、教官に確認するように問いかけた。
「あの子に何か起こったのだろう?」
教官は、一瞬黙り込んだ。そして、まっすぐに前を見たまま、吐き捨てるように言い放った。
「蛭子が奪われた。奪ったのは回帰党の連中だ。」
教官は、学校に向かう僅かの時間の間に、事件のことを話してくれた。
回帰党は、帝と内親王殿下を始め、皇族が祭祀のために皇都を離れた隙を突いて、蛭子を奪ったそうだ。
蛭子は、皇族だけが入れる内裏の地下深くに、『水棺』と呼ばれるカプセルに入れられて封印されていた。回帰党は、そのカプセルごと奪取していったらしい。
もちろん、いくら隙を突いたとはいえ、厳重に管理された内裏に、簡単に外部の人間が近づけるわけはない。間違いなく、手引きをした内通者がいる。そして、おそらくそれは、今上帝の叔父にあたる人物、太政官に間違いないだろう。
僕がそう思った通り、現在、太政官は行方不明になっているとのことだった。僕はもっと詳しい事情を聞きたかったが、浮遊車が学校に到着したため、話はそこで終わりになってしまった。
僕たちはすぐに旧校舎の分隊舎に向かい、出撃のための準備に取り掛かった。
「『大鷲改』発進準備整いました。」
ホノカがそう言うと、管制室にいる教官は部隊内通信を使って、僕たち全員に話しかけてきた。
「(任務は、指令書にある通りだ。学生であるお前たちには荷が重いかもしれんが、今はそれ以外の選択肢がない。絶対にやり遂げるんだ。お前たちなら、必ずできる。)」
「「「「はい、教官!」」」」
僕たちは一斉に返事をした。通信越しに、教官が小さく息を呑む音が聞こえた。
「(最後に言っておく。何を見ても、決して止まるな。お前たちは任務を果たすんだ。いいな。)」
「えっ、それってどういう・・・?」
「(行け!)」
マリさんの問いかけに応えることなく、教官は一方的に通信を切ってしまった。僕は誘導灯に従い機体を滑走路に出すと、そのまま夜空へと舞い上がらせた。
「見て、カナメっち!! 城砦が!!」
上空に出てすぐ、降下用ハッチの窓から外を眺めていたマリさんが声を上げた。非常灯だけが灯る暗い城砦に向かって、無数の赤い光が集まっていくのが見えた。それはまるで、身動きできなくなった虫の死体に群がる、蟻の群れのようだった。
あの赤い光一つひとつが、魔獣だ。視界を拡大して確認するまでもない。幸い、城砦内には赤い光がなく、大嘯は起こっていないようだ。だが、さっきまで恐れていたことがついに現実になろうとしている光景を見て、僕は戦慄を覚えずにはいられなかった。
「四方八方から、押し寄せて着てやがる! ありゃあ、不味いぞ!!」
エイスケの声が終わるよりも早く、僕はすぐに機体を回頭させ、城砦に群がる魔獣たちへ近づこうとした。しかしその時、城砦の上を横切るように飛来する、一筋の赤い光が視界に映った。
魔獣たちに急接近した赤い光から、凄まじい勢いで光弾が放たれる。波のような魔獣の群れに大きく乱れが生じた。おそらく、魔力機銃の最大火力による攻撃だ。
赤い光は僕の行く手を遮るように横切ると、再び魔獣に攻撃を加えた。
「皇国軍の戦闘機《紅隼》です! 識別信号は・・・!」
ホノカさんの通信を遮って、機体を揺るがすような大声が通信装置から響いた。
「(馬鹿者! 止まるなと言っただろうがっ!!)」
「(笹崎教官!)」
教官は僕の前を横切るように飛行しながら、次々と魔獣たちを薙ぎ倒していく。しかし、津波のように押し寄せてくる魔獣たちの数はあまりにも多い。
すると、その教官機に追うように、無数の白い光が学校の方から飛行してくるのが見えた。それは、それぞれの教官機に率いられた、学生たちの訓練用攻撃機団だった。
訓練機団は覚束ない動きながらも、魔獣たちに攻撃を加え始めた。それにより、魔獣たちの進軍速度がやや鈍り始めたのが、はっきりと見て取れた。
「(城砦は、私たちが守る! お前たちは一刻も早く、蛭子を取り戻せ!!)」
笹崎教官は荒い息を吐きながら、通信してきた。さっきから続けている最大火力攻撃で、かなり無理をしているのは間違いなかった。
「(了解しました!)」
僕は、声が震えそうになるのを必死に堪えながらそう答えると、すぐに機体を上昇させ、指令所に記された目的地に向かって、全力で夜空を駆け抜けた。
「間もなく目的地上空です。」
学校を出て数分後、ホノカさんが僕にそう告げた。僕は目を凝らし、暗い大地に目を向けた。
山脈から少し離れた平野の中に、立ち塞がるように聳える巨大な火山。あれが今回の僕たちの目的地、富士山だ。
赤黒い溶岩を吐き出す霊峰の裾野には、青白い光を放つ広大な森が広がっている。皇族と、それに認められた者だけが立ち入ることを許された神域、精霊樹海だ。
僕は、機体の速度を減速させながら、ホノカさんに尋ねた。
「(蛭子を奪った回帰党の位置は?)」
「山頂付近の霊廟に立てこもっているそうです。追撃している先行部隊と交戦中ですが、反撃が激しく接近できないとのこと。」
「皇国内でも最大級の龍脈結節が、ある場所だ。蛭子を使って何かするにはうってつけの場所だな。大方、でかい魔術儀式でもぶっ放すつもりなんだろうが。」
エイスケの予想通りだろうと、僕も思った。
すぐにでも山頂の霊廟に近づきたいところだ。急がなければ、回帰党は奪った蛭子を使って、とんでもないことをしでかすに違いないからだ。
回帰党の目的は、この世界から魔術を消し去り、超魔力彗星襲来以前の状態に戻すこと。本当にそんなことができるのかと思ってしまうけれど、理論的には可能らしい。
以前、カナ博士が説明してくれたところによると、僕たちの住むこの地球は、とても魔素が濃密な状態なのだという。
その世界を、他の異世界から時空的に隔絶・密閉した上で、魔素で満たすことができれば、魔素は互いに強く結合して安定して、不活性化する。つまり、魔術が消えるということなのだそうだ。
世界から魔術が消えれば、魔法が一切使えなくなる代わりに、魔素に依存する魔獣たちも存在できなくなるという。
魔獣がいなくなるなら、本当に素晴らしいことだと思う。でも、この理論を説明してくれたカナ博士自身でさえ、これが実現できるとは考えていないみたいだった。
「あくまで、理論上可能っていうだけですから。失敗したら、あまりにもリスクが大きすぎますよ。」
もし失敗すれば、八十柱結界の崩壊と魔王復活だけでなく、さらに大きな災厄を招いてしまう可能性もあるそうだ。
魔王復活以上の災厄なんて到底想像もつかない。僕はそう言って博士に、どんなことが起こるのかと尋ねてみた。でも、博士は意味ありげに団長さんと目を合わせただけで、何も答えてはくれなかった。
「ねえ、さっきから旋回してるけど、早く降りないの?」
焦れたように尋ねたマリさんに、答えたのはエイスケだった。
「富士山と精霊樹海は、それ自体が強力な魔素を放ってるからな。うっかり近づくと、機体を制御できなくなるんだ。今、侵入ルートを、小桜と二人で探してるとこだ。もうちっと辛抱しててくれ。」
ホノカさんとエイスケは、さっきから難しい顔でモニターとにらめっこしている。山頂付近に上空から近づくためには、魔素の乱流を避けなくてはいけないからだ。
おそらく、回帰党たちは乱流の薄い中腹付近から、地上の道のりを経て山頂へ侵入したのだろう。しかし、現在そのルートは敵の防衛部隊に完全に封鎖されている。
しかし、分隊の安全を考えれば、時間が掛かっても中腹に降りる方がいい。そう考えた僕は、ホノカさんに通信で話しかけた。
「(とりあえず、先行部隊と合流しよう。ホノカさん、暗号通信を・・・。)」
でも、その通信は、彼女の上げた警告によって遮られてしまった。
「待って! 6時方向より皇国近衛隊機部隊、急速接近! 攻撃補足信号を検知! カナメくん!!」
「(みんな、掴まって!)」
僕はそう言い放つと同時に機体を急上昇させて、飛来した光弾を躱した。しかし、汎用作戦支援機である『大鷲改』で、正規軍戦闘機の攻撃を、完全に回避することは出来なかった。
躱し損ねた光弾に追い詰められた僕は、クロに呼びかけた。
「(クロ!)」
「任せておけ。」
クロは機内の魔力防御システムを操作し、着弾部分の魔力障壁を厚くしてくれた。同時にドンという強い衝撃を背中に感じ、僕は一瞬目の前が暗くなった。
「(ぐうっ!! みんな、無事?)」
機内に視界を向けるゆとりがない僕は、機内通信でそう尋ねた。
「俺たちは大丈夫だ! 椅子にかじりついてるぜ!」
エイスケの声に胸を撫で下ろした僕は、クロの力を借りて魔導エンジンの推力を一時的に高めると、一気に戦闘空域を離脱した。
「追ってはこねえな。まあ、当然か。」
駿河湾上空まで出たところで、エイスケが息を吐きながらそう言った。
エイスケの言う通り、あの戦闘機部隊の目的は、僕たちが富士山に近づくのを防ぐことだ。蛭子を手中に収め、間もなく目的を達成しようとしているこの状況で、僕たちを深追いして防御を手薄にする意味がない。
「流石に数は少ねえけど、近衛部隊まで味方につけてるとは。やっぱり、太政官の手引きなんだろうな。こっちは一刻の猶予もねえって状態なのによ。どうする新道?」
そう尋ねられ、はるか下の暗い海を見ながら少し考えた。一応策はあるものの、あんまり自信が持てない。
「ホノカさん、作戦プランを提示してくれる?」
僕の通信を受けたホノカさんは、ほんの僅かの時間で作戦案を提示してくれた。多分、少し前からすでに作っていたのだろうと思った。
彼女の作戦案を一通り眺めた僕は、機内通信でみんなに言った。
「(プランDで行こう。)」
これを選んだ理由は、僕の考えていた策に一番近かったプランだからだ。クロの力で一気に相手の防空圏を駆け抜け、機体を目的地付近に強行着陸させる。敵防衛部隊の後背を突くとともに、霊廟内に侵入。蛭子を奪取するという作戦だ。
「相変わらず、無茶苦茶だな。お前、帰りのこと何にも考えてねえだろう。」
ため息を吐きながらそう言ったエイスケに、僕は思わず苦笑してしまった。
「(まずは、相手が何かする前に、蛭子を取り戻すことが先決でしょ? 戦場からの脱出は、その後考えればいいよ。その分、マリさんとテイジには、負担をかけてしまうことになるけど。)」
「まっかせといて! 地上部隊の連中は、あたしとテイジがぶっ飛ばしちゃうからさ!」
それを見てますますげっそりした顔をするエイスケ。そんな彼を見て、ホノカさんもくすくすと笑った。
「丸山さんも、内心はこれしかないって思ってたんですよね?」
図星を突かれたエイスケは、途端に苦虫を嚙み潰したような顔をした。
「・・・お前、言うようになったじゃねえか。」
でも、彼はすぐニヤリと笑うと、大げさに両手を広げて鼻を鳴らした。
「あーあ、どっかの馬鹿猫に毒されちまいやがって。おい新道、結婚考え直した方がいいんじゃねえか?」
途端に待機席に座っていたマリさんが立ちあがり、エイスケ目掛けて拳を繰り出す。彼は、自分の椅子を盾にして、それを見事に躱してみせた。
椅子を挟んでふざけ合う二人。それを見て僕はみんな笑顔になった。
「(よしじゃあ、決まりだね。早速行こう。)」
僕の言葉に、みんな大きく頷く。僕は機体を大きく旋回させると、目的地である霊廟に向けて、機体をどんどん加速させていった。
「(総員、耐衝撃姿勢!)」
防空圏に近づくとすぐに、富士上空を守っていた戦闘機部隊が攻撃を仕掛けてきた。僕はその弾幕を弾幕を掻い潜るようにして、霊廟を一直線に目指して飛んだ。
こちらの予想外の動きで、相手は少なからず動揺しているようだった。一瞬、攻撃が止んだが、すぐに僕たちの前に戦闘機部隊が立ち塞がる。しかし、決して山頂に近づこうとはしない。近づけば、機体を制御できなくなってしまうからだ。
僕は機体の前面にすべての防御壁を集中させ、機体の設計限界を遥かに上回る速度で、戦闘機部隊の中に飛び込んだ。クロの力を借りて防御しているとはいえ、もちろんすべての光弾を躱せるわけはない。
光弾が防御壁に当たるたびに、頭を殴られるような激しい衝撃を痛みを感じた。しかし、僕は魔力を研ぎらせないように意識を集中させ、目的地に向かって真っすぐに滑空していった。
山頂に近づいたことで、急激に機体の制御が難しくなった。僕は細かい機体制御を捨てて、機体を強行着陸させた。地面に激突したことで、目がくらむような衝撃が走り、目の前にチカチカと星が瞬くのが見えた。
機体は霊廟目掛けてまっすぐに突っ込んでいった。霊廟を守る防衛部隊が慌てて退避していくのが僅かに見えた。
「(全力逆噴射!!)」
霊廟に激突する寸前、僕は出鱈目に魔導エンジンの推力を逆噴射させた。急制動によって横滑りした機体は、敵の防衛部隊を薙ぎ倒し、霊廟に胴体を激突させて止まった。霊廟は壁と屋根の一部が壊れたものの、建物自体には大きな影響はなかった。朦朧とする意識の中、それを確認した僕は、ほっと息を吐いた。
上空からの追撃はなかった。今攻撃したら、霊廟を破壊してしまうからだろう。これは、ホノカさんの狙い通りだった。
霊廟に激突すると同時に、機体から飛び出したマリさんとテイジが、残った防衛部隊の兵士たちを次々無力化した。マリさんは拳に発生させた魔力の爪によって、彼らの強化外装を破壊した。
そして、テイジの振るう巨大な金棒の一撃は、兵士たちの意識を一瞬で刈り取っていく。兵士たちは気を失い、二人の前に倒れ伏していった。また、機体の衝突に巻き込まれた兵士たちも、手足の骨折などがあったものの、死んだ人はいなかった。
防衛部隊が完全に沈黙したところで、僕はエイスケ、ホノカさんと共に機体を出て、皆で壊れた外壁から、霊廟内に侵入した。
1階建ての石造り霊廟は、学校の体育館ぐらいの大きさがあった。暗いので携帯用の魔力灯を照らして周囲を確認する。すると、僕たちが侵入したのは、廊下の一部だということが分かった。
どうやらここは、建物の壁に沿って配置された、回廊の一部のようだった。さらに内側に入る出入り口は見当たらない。多分、この回廊の先、正面入り口の方にあるのだろう。
僕たちは、慎重に廊下を進み始めた。しばらく歩いたところで、エイスケが呟くように言った。
「なんだか薄気味悪いところだな。ところで、俺たちより先行してた部隊はどうなったんだ? 敵の防衛部隊を排除したのに、全然姿を見せないんだが。」
「そいつらなら、俺が全員ぶっ殺したよ。」
突然、後ろから声が掛けられ、僕たちはさっと体を寄せ合って身構えた。
ホノカさんが声のした方を魔力灯で照らす。するとそこには、黒いタンクトップと黄色いカーゴパンツを身につけた、長身の男が立っていた。
彼は心底嬉しそうな表情で軽く手を上げると、にこやかに僕に話しかけてきた。
「よお、また会ったな化け物。」
「ジン!」
僕たちの前に現れたのは、変幻自在の変身能力を持つ異能者、ジンだった。
「あの時の決着を付けようぜ。」
ジンはそう言うと、こちらに向かい無造作に歩を進め始めた。
読んでくださった方、ありがとうございました。




