44 実務演習
リアル事情で1か月ほどネットにアクセスできませんでしたが、ようやく復帰しました。これからまた週一回程度の頻度で更新をしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
6月も後半に入りジメジメした天気がようやく開けようとする頃、僕たちはずっと行われないままだった皇国軍との合同演習についてようやく話を聞くことができた。
でも宇津井先生が教室で僕たちに告げたその演習の内容は、僕たちの予想を大きく裏切るものだった。
「え、輸送艇の護衛任務ですか?」
「ああ、学内委員会からの指定でな。申し訳ない。」
思わず問い返した僕に宇津井先生は少し困った顔で謝った。僕は両手を振り、慌ててそれを否定した。
「い、いえ、先生のせいじゃありませんから。変なこと言ってしまってすみません。」
僕の慌てた様子を見て他の分隊メンバーが可笑しそうに笑う。恥ずかしくなった僕は、それを誤魔化すように宇津井先生へ問いかけた。
「あの、先生も同行してくださるんですよね?」
宇津井先生はすぐに表情を改め、小さく頭を振った。
「いや、委員会から急に、これまでの特別分隊の活動を報告するように言われていてな。今回は笹崎くんに任せることになった。」
先生はそう言って、隣に立っている笹崎アヤメ教官へ視線を向けた。
体にぴったりとした演習服に身に纏った笹崎教官は僕に歩み寄ると、僕の両肩をバンバンと叩きながら諭すように話しかけた。
「そんなにがっかりするな、新道。輸送艇の護衛も皇国軍の立派な任務だぞ。なあに、大型魔獣と闘う機会ならまたあるさ。」
僕の目の前で形の良い笹崎教官の大きな胸がゆさゆさと揺れる。僕は演習服の襟元から覗く白い胸の谷間から慌てて目を逸らした。
「お、どうしたそんなに俯いて? いいか新道、前向きに考えるんだ。確かに輸送艇の護衛っていうのは・・・。」
僕が目を逸らした理由を誤解したらしい笹崎教官は、ますます僕に体を寄せて今回の任務に就いて熱く語り始めた。笹崎教官の髪から漂う甘い匂いを感じて、僕はますます顔が上げられなくなってしまった。
困った僕は後ろに座っている分隊の皆の方へ、こっそりと目を向けた。エイスケはニヤニヤしながら僕にパチリと片目をつぶった。
マリさんは猫みたいに目を細めて笑いながら、軽く自分の胸を揺らすジェスチャーをしてみせた。その隣でテイジは真顔のまま、小さく右手の親指を突き上げた。いや、全然グッドじゃないんですけど!?
最後に見たホノカさんは、とてもいい笑顔で僕の方をじっと見つめている。でも細めた瞼の間の瞳は全然笑っていなかった。その目を見た途端、僕はとてつもない将来への不安を感じ、すぐに笹崎教官の説明を押しとどめた。
「分かりました、教官! 今回の演習、全力で頑張ります! ご指導よろしくお願いします!!」
「おお、分かってくれたか新道! 危険はない任務だが、皇国軍の実務に触れる貴重な機会だ。精一杯頑張るんだぞ!!」
笹崎教官はそう言ってようやく僕を解放してくれた。その後、僕は背後からの不穏な気配を感じつつ、苦笑している宇津井先生から詳しい実習内容について説明を受けた。
説明が終わって教室を出ると、マリさんはすぐに僕に尋ねてきた。
「ねえ、さっきのどうゆうこと、カナメっち?」
急に詰め寄られて困った僕は、しどろもどろになりながら言葉を捻り出した。
「え、あの、どういうことって・・・僕は別に、な、何にも見てないよ!」
するとマリさんは、にゃははと笑いながら大きく手を振った。
「ちがうちがう、笹崎教官のおっぱいのことじゃないってば! なんで大型魔獣討伐のはずが、輸送艇の護衛になったのかって話!」
「ああ、そのこと? うーん、なんでだろうね?」
首を捻る僕に答えてくれたのはエイスケだった。彼は不満そうに鼻を鳴らしながら言った。
「そりゃ、学内委員会とやらの妨害だろ。あからさますぎる。」
「?? どういうこと、マルちゃん?」
他の4人から、はてな顔で見つめられ、エイスケは呆れたように大きく肩を竦めた。
「大型魔獣討伐は皇国軍の花形任務だからな。将来、空戦機士を目指すような連中なら絶対に外せない訓練科目なのさ。」
魔獣にはいろいろな種類があるけれど、一般的に大きな魔獣ほど危険度が高いとされている。皇国内では危険度上級~激甚級に指定されている魔獣のほとんどは大型魔獣だ。現界した飛竜族や地竜族、暴風狐や黒鉄獅子なんかがそれに当たる。
もちろん悲嘆の妖女や悪意の魔眼のように人間サイズでも危険度の高い不死者や妖魔はいる。けれどそういった者たちは出現場所が極めて限られているので、さほど重要視されていないのだ。そもそも八十柱結界が機能している限り、城砦内に彼らが入り込むことはありえないしね。
というわけで、皇国軍が警戒するのは自然と大型魔獣に限られる。魔獣たちは結界があるため、原則として人の暮らす城砦に近づいてくることはない。それでも時折、何かの拍子で魔獣たちが城砦に近づいてくることがあるのだ。
強い魔力を持つ魔獣に対するほど、結界は強い効力を発揮するように作られている。けれど、大型の魔獣たちはその有り余るほどの体躯と身体能力でそれを突破してくる。その迎撃に当たるのが、皇国防衛隊の花形である空戦機部隊だ。
皇国軍の主力空戦機は2種類。空中戦に特化した戦闘機『紅隼』と地上制圧用の攻撃機『蒼鴉』だ。中でも『紅隼』の操縦者には高度な操機技術と莫大な保有魔力量が求められるため、皇国軍の中でもごく一部しか存在しない精鋭中の精鋭が選抜されているらしい。
そして皇国軍の本隊に合流して行われるこの訓練は、航空科の生徒にとって将来の進路を定めるためにとても重要なもの。もし『紅隼』の空戦機士として活躍したいと思っているなら、この訓練で大きな成果を残す必要があるのだと、エイスケは話してくれた。
ちなみに笹崎教官はかつてこの『紅隼』部隊に所属していたと聞いている。でも教官の婚期を逃すことを心配した実家の意向で後方部隊へ転属となり、それと兼任する形で高天原防衛学校の教官職に就いたのだそうだ。
ただ白龍事件のせいで、その婚礼話自体が無くなってしまった。今、笹崎教官は実家からも勘当同然の扱いを受けているらしい。教官はそのことを「実家の都合で顔も知らない親父と結婚せずに済んでせいせいした」と笑っているけれど、教官にとって大きな人生の転機だったことはやっぱり否めない。
教官は今でも毎月人目を忍んで、あの事件で命を落とした僕たちの同級生たちの墓参りへ行っている。表立って行かないのは、マスコミの目を避けるためだ。あの事件から半年以上が経ったにも関わらず、未だにネット上では笹崎教官への誹謗中傷が後を絶たない。
多くの生徒の人命を失わせた無能教官、みたいな書き込みを僕も目にしたことがある。でも汎用訓練機『白鷹』で未熟な学生部隊を指揮しながら、至近距離で白龍の攻撃を受けたにも関わらず生き残れたのは、ひとえに教官の空戦力が高かったからだ。
僕たち222分隊は、あと時たまたま霞魚の攻撃を逸らすために戦闘機動をしていたため難を逃れた。もしもそうでなかったら、僕たちも同じように白龍の龍の咆哮で氷塊へ変えられていたかもしれないのだ。それほどまでにあの白龍は恐ろしい相手だった。まさに天変と呼ぶにふさわしい奴だ。
僕たちはもちろんのこと、あの白龍事件は多くの人の運命を狂わせてしまった。そう思うと、今度の訓練もなんだか不吉なものに感じられる。
でもそんな僕の物思いは、マリさんの何気ない一言で破られてしまった。
「なるほど、じゃあこれはカナメっちに対する嫌がらせってことか。」
僕はハッとして皆の顔を見た。
「ゴメン、僕のせいで皆まで巻き込んじゃって。」
「え、何謝ってんの!? カナメっちが悪いわけじゃないじゃん!!」
僕の謝罪を慌ててマリさんが否定する。すると突然、エイスケが僕の頭を後ろからスパーンとひっぱたいた。呆気にとられて固まる僕たちに、エイスケは大きくため息を吐いてみせた。
「なあ新道、お前、空戦機士を目指してたのか?」
「いや、それはないよ。だって僕一人だとまともに飛べないし。どっちかって言うと後方支援部隊希望なんだけど・・・。」
僕が正直にそう口にすると、エイスケは僕の左肩を拳骨で軽く小突いてニヤリと笑った。
「なら気にすることねえじゃねえか。輸送艇の警護任務はむしろ願ったり叶ったりだろうが。」
エイスケはそう言うと短い首を巡らせ、顎でホノカさんやマリさんたちを指し示した。
「後方支援科の俺たちやこの脳筋どもにとっちゃ、この実務演習はただの訓練単位取得なんだよ・・・いてえ!」
マリさんから背中をバシンと叩かれ、エイスケが大げさな悲鳴を上げる。そんなエイスケを軽く押しのけ、今度はマリさんが僕の正面に立った。
「あたしらは魔獣と闘えればそれでいいからね。大型魔獣と闘り合えないのはちょっと残念だけど、白龍戦で一杯戦わせてもらったから。」
彼女はそう言ってテイジと目を合わせ、にこりと自然な笑みを浮かべた。そしてすぐにパチンと手を打ち合わせた。
「そうだ! いっそのこと卒業後は、222分隊ごと、後方支援部隊に配属してもらおうよ! それなら卒業してもずっと一緒にいられるでしょ!」
するとホノカさんに背中をさすってもらっていたエイスケが、途端に嫌そうな声を上げた。
「はあ!? 卒業してからもお前の面倒見なきゃなんないのかよ。」
「なによぅ? 文句あるの?」
マリさんが両手を腰に当てて詰め寄ると、エイスケはさっと身を守りながら「文句しかねえに決まってんだろが!」と怒鳴った。
でもそう言っている顔はどこか楽しそうだった。ぎゃあぎゃあ言い合いながらも満更でもない様子の二人を見て、僕は隣に立っていたホノカさんの方を向いた。僕の目線に気づいた彼女はニコリと微笑んで言った。
「私、この分隊でよかったって心底思います。」
「うん、僕もだよ。」
僕はそう言って、そっと彼女の右手を握った。ホノカさんは小さく頷いた後、その手を握り返してくれた。
こうして僕たちは、皇国軍との実地研修に臨むことになったのでした。
実地研修当日の朝。輸送艇の発着場がある第2城砦の西門での説明会を終えた222特別分隊は、発着場の一角に待機させてあった訓練機『白鷹』へと戻った。
皆がそれぞれの持ち場でテキパキと準備を進める中、僕は今回同行する笹崎教官が少し考え込んだ様子をしているのに気が付いた。
「どうしたんですか、笹崎教官?」
「いや、何でもない。ただ少し奴らの言葉遣いがな。」
教官が『奴ら』と呼んだのは、今回僕たちが同行することになった大宰府防衛基地所属の輸送艇護衛部隊の人たちのことだ。
彼らは教官が奴ら呼ばわりしたくなる程度には印象がよくなかった。もっとはっきり言えば、僕たちと笹崎教官を下に見ているのがありありと分かるような態度だったのだ。
そのせいか説明会も終始雰囲気が悪かった。それはきっと僕たちの事情、白龍事件のことを知っているからだと、僕は思っていた。他の分隊の皆もそうだ。
でも笹崎教官は別のことを考えていたみたい。教官の様子から不穏な気配を感じ取った僕は、教官に尋ねてみた。
「言葉遣い? そう言えば少しアクセントが違いましたね。関西地方の部隊から派遣されてきた人たちでしょうか?」
笹崎教官はそれに答えず、僕の方にそっと体を寄せると他の皆に気づかれないよう小さな声で囁いた。
「思ったより厄介な任務になるかもしれん。新道、気を付けろ。」
定刻になり準備を終えた僕たちは、護衛対象である輸送艇と共に出発した。飛び立った直後は皆緊張した様子をしていた。けれど、小一時間もすると強化外装に身を包んだマリさんは、地上員待機席に座って足をぶらぶらとさせ始めた。
「なんかすっごくゆっくりだねえ。」
「浮遊コンテナがあれだけ続いてりゃあな。」
エイスケは目の前のモニターを睨んだままそう答えた。彼がそういう通り、僕の眼下には白くて巨大な浮遊コンテナが長い列を作ってゆっくりと進んでる。これが九州地方の各城砦を巡る西周り定期輸送コンテナ群、通称『西九州輸送線』だ。
大日本皇国には多くの城砦群が存在するけれど、各城砦を繋ぐ道というのは存在しない。
大災害の前には日本各地を結ぶ高速道路や鉄道などがあったと歴史の教科書で読んだことがあるけれど、すべて大災害で失われてしまった。200年が経った今では、その残骸が僅かに残る程度だ。
城砦外は結界で守られていないため、よほどのことがない限り皇国の一般人は城砦から出ることはない。一応、軍が管理する魔導旅客機などもあるけれど、貴族以外で利用する人はほとんどいない。利用料金が法外な値段だし、魔獣に襲われる危険を考えたら無理して城砦を出る理由がないからだ。
でも城砦間の物資のやり取りだけはそうはいかない。そのためにこの輸送艇があるのだ。
ただし輸送艇と言っても、あのコンテナ一つ一つが独立した浮遊魔導船というわけではない。簡単な浮遊術式が組み込まれた巨大なコンテナを、列の先頭の魔導機で牽引しているのだ。
これはもちろん操縦者である術師の魔力と、浮遊術式の素となる魔石を節約するため。こうすることで一度に大量の物資を比較的安全に安く運ぶことができる。大災害前に走っていたという貨物列車に近い形式だ。
この輸送艇の速度はおよそ時速50㎞。しかも術式の関係であまり高く浮遊させることができないため、急峻な場所は避けて進まなくてはならない。
そのため高天原城砦から大宰府城砦まで行くのにおよそ半日、12時間以上もかかっていまう。もっともこれには各城砦での荷物の積み下ろし時間も含むから、行程だけなら4時間ちょっとで着く。でも『白鷹』なら10分かからない道のりであることを考えると、やっぱりとんでもない遅さだ。
これだけ遅いとやはり魔獣に襲われることもあるため、輸送艇は原則として皇国軍が管理している。そのため護衛に当たるのも皇国軍部隊というわけだ。僕たちは、この護衛部隊の参加させてもらっている。
今回の護衛に当たるのは僕たちの『白鷹』の他に、『白鷹』と同型の汎用作戦機が3機。数百メートルに及ぶ長い輸送コンテナ群を取り囲むようにゆっくりと飛んでいる。上空の作戦機が地上の輸送艇運用部隊と連絡を取りながら、魔獣の出現に対応するためだ。
僕は事前に指示された位置で周囲に魔獣がいないかどうかを確認していった。でも元々、輸送艇の進行ルートが魔獣の出現しやすい山間部や海上を避けて設定されているので、ほとんど魔獣とは遭遇することはなかった。
一度、小型の飛行魔獣が現れたけれど、威嚇射撃をしただけですぐに逃げていってしまった。だからマリさんがあんなに退屈しているというわけだ。
輸送艇の安全を考えれば一番いいことだけれど、彼女には退屈な訓練になりそう。今は機内に笹崎教官がいるから黙っているけれど、今日の夕方、学校に戻ったらきっとすぐにそのことの不満を皆に話すことだろう。
僕は彼女に申し訳ないと思いながら周囲の警戒を続けた。
「隊長機より通信。先行し索敵をせよとの指示です。」
「(了解)」
ホノカさんが伝えてくれた指示に従って、僕は編隊を離れて先行し周囲の安全を確認した。こうやって発見した魔獣を事前に排除していくのも、護衛部隊の任務なのだ。
しばらく飛んだけれど、特に危険な魔獣は確認できなかった。今は有明海の東側の低地を飛行している。有明海には激甚級魔獣である巨大ザリガニの群れが生息しているけれど、海からは十分に離れているので今のところ危険はない。
次の城砦までおよそ1時間。どうやら安全に航行できそうだ。僕はホノカさんにそう伝え、隊長機からの返信を待った。
すぐにホノカさんからの通信が入る。でもその内容は隊長からの帰還指示ではなかった。
「魔導レーダーが後方から高速で接近する飛行体を感知しました。」
「(それって魔獣? 飛竜とか?)」
「いいえ、明らかに速度が違います。おそらく皇国軍の空戦機ですね。確認します。」
ホノカさんはやや硬い声でそう答えた。彼女の声を聞いて機内の皆が表情を引き締める。
「識別コードは・・・霧島防衛基地です。」
「霧島? 太宰府じゃなく?」
ホノカさんにそう問い返したのは、指揮席に座った笹崎教官だった。
「はい、間違いありません。」
笹崎教官が形の整ったきれいな眉を顰めた。今日、この時間にこの辺りを空戦機が飛行するという情報は聞いていない。何か緊急事態が起こったのだろうか?
嫌な予感がして思わず体に力が入る。
「おい新道。少し右足踏ん張り過ぎだ。もうちょい力抜け。」
たちまちエイスケに指摘され、僕は体内の魔力を調整した。そうしている間に、僕のはるか上空を凄まじいスピードで空戦機が通り過ぎていった。ちらりと見えた赤い機体と特徴的な流線型の光翼。皇国軍の主力空戦機『紅隼』だ。
僕は飛び去っていく機体をホッとした気持ちで見送った。元々友軍機なのだから警戒する方がおかしいのだ。僕は心の中で自分の弱気を自嘲した。
しかし通り過ぎたはず『紅隼』は上空で大きく旋回すると、今度は超低空で真っすぐに僕の方へ向かってきた。同時にホノカさんの悲鳴のような通信が耳に刺さった。
「捕捉信号確認! カナメくん!!」
僕は無我夢中で防衛結界を展開した。しかし『紅隼』の放った魔力光弾は、訓練機『白鷹』の結界を容易く突き破った。
体に凄まじい衝撃が走る。機体が大きく損傷したことがはっきりと分かった。
僕は咄嗟に皆の安全を確認しようとしたが、それは叶わなかった。光弾は機体と完全に同化していた僕を粉々に打ち砕いた。
僕の体はバラバラに砕け散り、錐もみしながら地上へと落下していく。あっという間に僕は意識を失い、周囲は闇に閉ざされた。
「対象の撃墜を確認。機体は地上に落下しました。」
牽引魔導艇の指揮席でその様子を確認していた輸送部隊の隊長は、部下の言葉に軽く頷いた。
「さすがは近習の連中だ。仕事が正確で助かる。」
薄く笑ってそう呟く隊長。報告をした部下はゆっくりと立ち上がりながら、おどけた調子で隊長に問いかけた。
「『紅隼』まで引っ張り出す必要があったんでしょうか? 今朝見た限りじゃとてもそこまでするような相手には見えませんでしたがね・・・。」
しかし彼は隊長の鋭い視線を受けて、すぐに自分の言葉を飲み込んだ。その様子を見て指揮所内にいた他の乗員たちもすぐに居住まいを正す。
「それだけ厄介な連中だということだろう。油断するな。行け。」
「「「「はっ!」」」」
隊長の命令を受けて指揮所から配下たちが飛び出していく。その場に残ったのは隊長と副官のみ。
程なく牽引艇の直後にあった浮遊コンテナが開き、中から完全武装の強化陸戦兵たちが次々と現れた。彼らは作戦に従い、落下した機体に向かって素早く移動し始めた。
すべての兵が予定通りに展開したのを確認した後、隊長は副官に向き直った。
「我々も行くとしよう。ウサギ狩りの時間だ。」
二人は指揮所を出ると、強化外装を身に着けるためコンテナへと移動した。武装を整えた隊長は目の前に広がる原野を睨んだ。
「皇国に仇なす犯罪者どもめ。この俺が間違いなく監獄へ送ってやる。」
彼は誰にも聞こえないよう外装の中でそう呟いた。そして配下たちに犯罪者捕縛の指示を出すため、外装の通信機構を作動させたのだった。
読んでくださった方、本当にありがとうございました。




