精霊使いの最後?
アルはグラッドと同時に朝十ニ時に起床した。
だいたいアルとグラッドは六時間程度は寝ていた。
「あ〜 寝た、寝た……」
カランカラン!
玄関の扉に付いた呼び鈴がなった。
「誰か来たみたいだ。グラッド、そこで待っていな」
アルは急いで玄関の扉を開けた。
そこには五人の兵士を率いたルビトゥ女王が居た。
「どうしました?ルビトゥ女王さん……」
「聞きたいことがあります。」
アルはルビトゥ女王をしばらく見つめた。
「この国では、何の罪もない人を二人以上殺した場合……罪人を死刑または無期懲役にすることが出来ます。」
アルは空を見上げた。
「いや、団長は。また自分を……殺そうとした場合、死刑で。団長は団長のままにしてあげてください。」
ルビトゥ女王は戸惑った。
「ですが、また……殺そうとするかも……しれませんよ。」
ルビトゥ女王の方にアルは顔を向けた。
「団長は監視されるとそういうことは出来なくなる。」
「あいつは弱虫だから」
と小声でアルは言った。
「わかりました。」
「お時間とってくれてありがとうございました。」
とルビトゥ女王は笑顔でアルに挨拶をした。
「こちらこそ!ルビトゥ女王……」
「転移魔法を!」
「メタースタ……ギザ!」
転移魔法を読んだのはあの白髪の兵士だ。
あっという間にルビトゥ女王は城に帰った。
「何か……遊ぶか!グラッド」
と言いながらアルは家の中へともどった。
「うん!」
アルはおもむろに棚からトランプを出した。
「これでババ抜きしよう!」
「ババ……ぬ、き?」
しばらくアルとグラッドはトランプで遊んでいた。
すると突然、周辺が地震のように揺れだした。
アルとグラッドはテーブルの下に隠れた。
「これは……地震か? 地震だったら震度三強くらいだ……」
地震のようなものは収まった。
「なんだったんだ…… 外見るか?グラッド」
「うん……」
アルは揺れて家がきしんでしまい、開けることが難しくなった扉を、手こずりながらを力ずくで開けた。
「あ!やっ……やっと開いた……」
アルは力を入れすぎたせいか、左腕が攣ってしまった。
「大丈夫? アル……」
アルは攣ってしまった腕をしばらく握った。
「ぐは!」
アルは突然少しだけ苦しんだ。
「本当に……大丈夫?」
「大丈夫だ!本当だからな」
「というか、外みろグラッド!」
この城下町で一番大きなヒラグシュマウンテンが何者かに切り裂かれたようになっていた。縦に真っ二つだ。
アルは空を見上げた。
「上!上みろグラッド!」
「上?」
空には、伝説で語られている奇麗な黒い大きな鳥がいた。
「あれは!有名な本に書かれている伝説の黒い大きな鳥だ!」
「有名な本?」
アルはしゃがみ、グラッドの方を向いた。
「それはな、古代の本て言う……題名の本だ。」
「でもな……みんなが見れる古代の本はレプリカで。本物の古代の本は武器に変形すると言われているんだ……」
グラッドは首をかしげた。
「誰でも、古代の本……変形させれるの?」
「いや、選ばれた人間だけだ……」
アルは立ち上がった。そしてグラッドの手を握った。
「話している暇じゃない!グラッド……逃げるぞ!」
「うん!」
アルはグラッドを連れ、家の前の森の中へと向かおうとした。そのとき、伝説の鳥はアルの家の上に乗り、家を全壊させた。
「家が……家がああー!」
アルは家がこわれてしまい下を向いて落ち込んだ。
「アル……大きな鳥さん、こっち……向いてる。」
「あっ……?」
伝説の鳥は、アルとグラッドを獲物を狩る目で見つめていた。
「やばい!どうしよう…… 伝説の鳥、倒すわけにもいけないし……グラッド何かできないか?」
アルは恐怖におびた顔でグラッドの方に向いた。
「できない!」
とグラッドは元気にアルに伝えた。
「ちょっとまてよ……あ!」
アルは何かを思い出し、伝説の鳥の方を向き立ち上がった。
「何か思い出したの……アル?」
「ああ!思い出した……」
アルは伝説の鳥の方に左手を向けた。
「伝説通りだと、お前は……世界を破壊する伝説の鳥……」
「マヴァロジック……バードだからな!」
ゆっくりとあの大きな水のような青い刃が地面から生えてきている。
「我ら……一族の青き精霊の能力を……幾千の刃!」
「ソードオブ……プヌンヴァ!」
大きな水の刃は加速的にマヴァロジック・バードを貫いた。
「よし!倒した……」
「やったー!」
グラッドとアルは手を合わせあい、泣いて喜んだ。
喜んだのはつかの間、マヴァロジック・バードは何事もなかったような顔をしていた。
「何……?ソードオブ……プヌンヴァが効かないのか?」
「こわい……こわいよ!」
アルは下を向き、おびえて泣いているグラッドを抱きしめた。
『終わった……どうすれば……いいんだ!』
マヴァロジック・バードはアルとグラッドに二人まとめて爪で斬ろうとした。
「カタストロフ……スラッシュ!」
見えない速さで誰かがマヴァロジック・バードの足をまるで包丁で豆腐を切るように簡単に切断した。
それはあの団長だった。
「団長!お前……そんなことができたのか!」
「いや、わからない……お前を助けたいと思っただけだ。」
と言いながら団長は剣をもった自身の右手を見つめていた。
その時、マヴァロジック・バードは足が斬られたからか、倒れながら叫んでいた。団長はアルに剣を渡した。
「よし!いくぞアル!」
団長は心なしか優しくなっているように見える。
「ああ!わかった」
マヴァロジック・バードとの距離はだいたい10メートルだ。
団長とアルはマヴァロジック・バードの所へ走って向かった。
「アル、マヴァロジック・バードは伝説の本通りだと……精霊達の技は効かないらしい……」
「ということは……剣は効く!」
アルと団長は二人で同時に剣をマヴァロジック・バードに向け振った。マヴァロジック・バードの足はあっという間に再生した。
『足が……再生した?』
マヴァロジック・バードはすぐに立ち上がり、アルと団長の攻撃をぎりぎりで回避した。
「紙一重でかわされたか……惜しかったな、アル!」
「ぐは!」
アルのお腹に穴が開き、大量の血が流れていた。
地面は血で赤く染まっている。
「どうした!アル……」
アルは弱っている。
「団長が俺を刺した時は普通はもう……俺は死ぬ。」
団長はアルからこれ以上、血が出ないようにお腹を強く抑えた。
「それと何が関係あるんだ……」
「それは……死ぬようなことをされた場合、生きる時間を少しだけ伸ばせるスキル、死期変化だ。」
団長は泣いているグラッドの頭を優しく撫でた。
「グラッド楽しく生きろ……お前は精霊だ。だから性別は無い……男として生きるか、女として生きるかグラッド……自分できめろ!そして団長、団長として騎士達に優しくせっしてください……」
アルは笑顔でゆっくりと目をつむり、息をひきとった。
雨がざっと降り始めた
「アル……」
グラッドはうずくまり泣きじゃくった。
「ごめんな……アルの生み出した精霊。」
団長はグラッドと目線が合うようにしゃがみ、優しくグラッドに謝った。
「でも十五人も……俺は精霊使いを殺した……俺が団長でいたいと言う身勝手な考えで。誰にも許されないことを俺はした。」
と言いながら団長は立ち上がり、マヴァロジック・バードの方に向いた。
「今のうちに……逃げろ、この国から……ボーフィシュと言う村にいけ!精霊、そこに居る女の子ならお前を大事に育ててくれる。」
グラッドは逃げようとしたが足を止めた。
「でも……」
「アルが喜んでくれるから、迷わず行け!」
グラッドは泣きながらボーフィシュ村へ走って向かった。
グラッドは2時間くらい時間をかけてボーフィシュ村のとあるボロボロの民家に着いた。
「どうしたの?迷子かな」
ボーフィシュ村にいる1人の十歳くらいの少女はグラッドがいることに気がついた。
「アルが……赤いの体から出てきて、話さなくなった……」
その少女は少し元気ではなくなった。
「もしかして、アルお兄さんのことかな?」
グラッドは少女の方を向いて少し驚いた。
「雨降ってるからお家に入ろう」
グラッドはゆっくりと家の中に入った。
「自己紹介遅れたね私の名前はリア 君の名前は何かな?」
「グラッドだよ……」
グラッドのお腹がなった。
「疲れてお腹空いた」
「作ってあげるよ!」
リアは台所に向かった。
『あの子はお兄さんが創り出した精霊かな?目がお兄さんに似ているし』
グラッドは椅子の上に座っていた。
「出来たよ、グラッドさん」
「あり……がとう」
ーーアルがつくったサンドイチと同じ味がするーー
グラッドはやたらお腹が空いているのかサンドイッチをあっという間に食べてしまった。
「アルお兄さんから教えて貰った料理だから同じ味するんだよグラッドさん!」
「グラッドさんは精霊だよね」
リアは食い気味にグラッドに質問をした。
「うん、そうだよ」
『グラッドさんは創りだされてからそんなにたってないのかな? グラッドさんは話さなくなった意味を知らないみたいだし』
リアはグラッドの方を向いた。グラッドは寝てしまっていた。
「グラッドさん寝てる。お兄さんと寝顔そっくり」
とリアは小さな声で独り言をした。
リアは優しくグラッドを抱き、ベットに乗せた。
「私も寝ようと」
リアとグラッドはすやすやと眠った。