精霊使いの男
夜が明けそうな中世のような城下町は2体のドラゴンが口から吐いた炎によって円形に赤く燃え上がっている。
2体のドラゴンの体長は32メートル弱だ。
騎士達は赤髪の精霊使いの男一人を連れていた。
彼らは燃えていない壊れた大きな家の庭に居た。
「皆さん逃げてください!」
と一人の精霊使いの剣士のアルは城下町の市民をドラゴンがいない方向に逃した。
「やばい!」
アルは城を壊している一体のドラゴンの方を向いた。
「やばいぞ! アル! 精霊を生み出せ」
アルに騎士達は指図した。
アルは騎士達の方を振り向いた。
「精霊には心があるんだ!無理やた……」
性格の悪い、若い30歳位の団長がアルの右肩を触った。
「心はない!ただの切り札だ!」
団長の手をアルは、素早く左手ではらった。
アルは団長の顔を殴りたくなるほど腹がたった。
「心はある! それを証明してやる!」
アルは手のひらを満月を掴むように空に掲げた。
「神よ、我に精霊を与えよ!ディノ・プネンヴァ!」
まだ空は暗い。アルの頭上に直径30メートル近くの白く輝く大きな魔法陣が浮かび上がった。
「やっぱすごいな」
兵士達は大きな魔法陣を興味津々に眺めていた。
「空から降臨せよ、赤き精霊!」
魔法陣から役に立つようには思えない姿をした赤い小さなかわいい、鳥型の精霊が降臨した。
「手伝ってくれ精霊!」
鳥型の精霊はアルの手のひらに乗り、アルの方を向いて首をかしげた。
「名前付けてほしいのか…… このドラゴン2体倒してから、名前付けてやるよ。だから……手伝ってくれないか?」
と鳥型の精霊にアルは優しく話した。
「ピャー!」
鳥型の精霊は赤くひかり、たちまち持ち手が赤い、刃が奇麗な白銀の剣に変わった。
「お前、剣になれるのか! すごいな!」
アルは剣を左手で持ち、城を破壊している、ドラゴンの方に剣の刃先を向けた。
200メートルぐらいドラゴンから離れている。
「燃えろ! プネンヴァ・エクゾディ!」
すると突然、城を破壊しているドラゴンは燃え上がった。
そのドラゴンは5、6秒間、もがき苦しみやがて灰とかした。
「よし、あと一体だ! いくぞ、精霊!」
「ピャー!」
アルは最後の一体のドラゴンが居る城下町へと走り込んだ。
「俺の推測上、2.5キロ先か……このままじゃダメだ! 間に合わない!」
「ピャッ!」
精霊は剣から鳥型に戻りアルの右肩に乗っかった。
「どうした? 精霊」
「ピャー」
耳元で精霊はなき声を出した。
「そういうことか!」
アルは精霊のなき声を理解した。
「精霊よ! 鋼鉄化せよ…… タングステンプテリガ!」
アルはあらゆる生物や物を鋼鉄化する魔法、タングステンプテリガを使った。
すると鳥型の精霊の身体は鋼鉄のように固くなった。
「行くんだ! グラッド!」
「ピャーー!」
鳥型の精霊、グラッドはアルの肩から飛び立った。
時速523キロで最後の1体のドラゴンに衝突した。
グラッドはドラゴンの身体を貫通した。
「よし! 勝ったぞ!」
ドラゴンはなぜか、立ったままの体勢だ。
「こっちに来るんだ! グラッド!」
とアルは優しくグラッドを呼んだ。
「ピャー!」
グラッドはあっと言う間にアルの元に飛んで来た。
グラッドは疲れた顔をしながら、ゆっくりとアルの肩に乗っかった。
「ありがとう! グラッド!」
アルはグラッドの方に顔を少しだけ向けた。
『グラッド! 君の名前には意味があるんだ……グラッドと言う名前は、喜びを与えると言う意味なんだ。いろんな人に喜びを与える、そんな……精霊になって欲しい……』
最後に倒したはずのドラゴンが突然羽ばたいた。
「仕留めきれていなかった……のか?」
「まて! ドラゴン、お前は俺たちが仕留めきる」
とアルはドラゴンの方を向きながら言った。
「グラッド! お前の奥義をみせてくれ!」
アルはグラッドを肩から優しく手で地面におろした。
「精霊の奥義!」
グラッドは赤く光りあっという間に赤髪で黒い服を着た中性的な顔立ちをした小さな人間の子供になった。
「お前! 人間にもなれるのか!」
アルはグラッドの前に行き振り向いた。
「まさか! これだけ……」
「うん!」
グラッドは返事をした。
アルは驚きすぎて腰が抜けた。
「お前……人間の言葉、少しだけ話せるのか!」
「話せる……よ!」
グラッドは話すことが初めてなので、ゆっくりとアルに伝えた。
「で……どうしよう! グラッド!」
「わか……らない……」
「死ね! 精霊使い!」
アルの背後から団長がアルに向かって片手剣で斬りかかった。
「あ!」
アルの背中に剣の刃が刺さってしまった。その背中から刺された剣の刃はアルの体を貫いていた。
アルはゆっくりと前に倒れこんだ。
「精霊がもう2体だ。お前は死ぬんだな、お前ら精霊使いは使い捨てだ」
アルは叫べないほど痛いはずなのにゆっくりと起き上がった。
「じゃあなんで、自分が初めて精霊をうみだした時は俺ではなく……精霊を殺した!」
アルは怒りながら背中に刺さった剣を背中から抜いた。
「なんで生きてるん……だ!」
と団長は言いながら戸惑っている。
「俺の親もお前が殺した!」
アルは団長に斬りかかろうとした。
「ねえ……」
アルはグラッドの声を聞き、我に返った。
「団長、今度また俺かグラッドに攻撃をしたもんならこうだ!」
「我、一族の精霊の能力を!」
「幾千の刃! ソードオブプネンヴァ!」
と言いながらアルは剣を団長が届かない所へ投げ捨てた。
団長をみながら、ドラゴンの方に左手を向けた。
地面から15メートル位の大きな水のような青い刃が3つ生えてきた。
その青い刃はドラゴンをゆっくりと、貫いた。
「もし使い捨てだとか言ったら……お前もこうするぞ! 団長」
ドラゴンは叫ぶ間もなく息をひきとった。
大きな水のような青い刃は瞬く間に消えた。
「わかった……やめてくれ!」
その時、女王がアルと団長のやりとりを家がない平原から見ていた。
「まずいです……」
「どうしますか……ルビトゥ女王!」
女王につかえている兵士達は女王に聞いた。
「転移魔法を!」
「は!」
兵士の1人が転移魔法を読んだ。
兵士と女王の下に魔法陣が現れた。
その兵士は目立つような白い鎧を装備している。
髪の色も奇麗な白い髪だ。
「メタースタ……ギザ!」
目立つ兵士はルビトゥ女王と共にアルがいる所に現れた。
「誰だ!」
ルビトゥ女王はアルの元に行き、手を握った。
「まさか、女王か?」
「精霊使いのあなたはどんなことを……されたのですか?」
アルは座りこんだ。
「えっとですね……12年前に子供のころ」
アルは語り始めた……
「起きるんだアル!」
アルの父はアルをせかすように起こした。
「どうしたのお父さん……」
子供の頃のアルは眠そうにしている。
「とうとう自分達、タリアデル家が精霊使いであることがばれたんだ。」
アルの父は顔に汗を流しながら焦っている。
「アルだけは生きてほしい」
と父は小声で言った。
「な、何か言ったのお父さん?」
父はアルをいきなり背中に抱えた。
「逃げるぞアル!」
父は扉を開けた。
その瞬間。
「ぐは!」
父は胸をあの性格の悪い団長にナイフで刺された。
「あ……あ! お……お父さん……」
すぐにアルは倒れた父の上から降り、起き上がった。
父はもう息はしていなかった。
「精霊使いはこんなもんかお前の父も母も 弱すぎだ」
団長はあざわらった。
アルは団長に殺意が出来そうになるほど怒った。
「なんで……殺した!」
「精霊使いは精霊を1人、2体しか出せないんだ。だから、俺の騎士団だと、精霊使いは使い捨てだ。」
「お父さんとお母さんがお前が団長の騎士団に居たからか!」
「そうだ、あいつらが精霊使いだと気づいたから今日、お前が愛す、お母さんとお父さん殺したんだよ。わかるかな坊や」
団長はアルの顔に近づいた。
「自分も精霊2体だしたら殺される……」
「て言うことがあったんだルビトゥ女王様……」
アルは語りをやめた。
「そういったことですか……」
ルビトゥ女王は団長の方を向いた。
「あなたは何人、精霊使いの方々を殺しましたか?」
「14人だ……」
「結構な大罪です、あなたに事情聴取をします。」
ルビトゥ女王につかえている兵士達は団長を連行した。
「あの団長がなぜ精霊使いを殺したいのかも聞きますね。」
「はい……」
「タイザイ? なにそれ……?」
「かわいいなグラッドは」
アルは涙を流しながら笑顔でグラッドを抱きしめた。
「名前……何?」
「ああ、ごめんまだ教えてなかったな……俺の名前はアルだ」
アルは優しい声でグラッドに教えた。
「アル?」
「あってるぞ、発音うまいな。」
グラッドの頭を優しく撫でた。
「もう朝か、グラッド朝ごはん食べるか!」
そのときアルはふと、日が昇りかけていることに気がついた。
「ゴハン?」
アルはグラッドの右手を左手で握った。
「家まで行くぞ!グラッド……」
10分後……
「ここが俺の……いや俺達の家だぞ グラッド」
アルの家の見た目はボロボロだ。
「壊れてる……」
「ああ……騎士団に入ると家もらえるからな。俺はボロボロでも文句はないな。」
グラッドは首をかしげた。
「まあ……グラッド! ごはん食べるか」
アルとグラッドはその家にゆっくりと入った。
「椅子に座って待っててな。グラッド」
「イスって何?」
アルは椅子に指をさした。
「グラッドこれは椅子と言うんだ。この上に座ってごらん」
グラッドは椅子にゆっくりと座った。
「グラッド、すぐにごはん出来るから待っててな」
アルは台所に行った。
グラッドがいる所の目の前に台所がある。
「よし! 料理タイムの始まりだ」
アルは独り言を始めた。
「キャベツを70度くらいのお湯で洗い、野菜のシャキっと感を強くさせる。次にサンドイッチ用のパンをフライパンでパンに焼き目を付ける。こうする事で、更に美味しくなる。パンにマスタードを塗り……」
アルは料理の手をとめた。
「まてよ……グラッドは子どもだ。まだマスタードはだめかもな……しかもこのマスタードには唐辛子いれているからな……」
アルは料理を再開した。
「こんな時には、マーガリンだ!」
「焼き目を付けたパンの内側にマーガリンを塗りキャベツ、バターをしいたフライパンで炒めたベーコンエッグを焼き目の付いたパンで挟む。そして俺用にマスタードを持っていく。」
アルは出来たサンドイッチを乗せた皿を持ちグラッドの元に慎重に向かった。
「出来たぞグラッド!」
グラッドはサンドイッチに手を伸ばした。
「まて、グラッド。まず食べる前には、いただきますってみんなで言うんだぞ」
アルは優しくグラッドに教えた。
「いただきます」
「どうやって、持つの? アル」
「難しいか……俺が食べさせてやる。今度食べやすい物で一人で食べる練習しようなグラッド」
「うん!」
アルはグラッドが食べやすい一口サイズにサンドイッチをカットした。アルはグラッドにサンドイッチを食べさせた。
「どうだ。美味しいか?」
「おいしい!」
グラッドは喜んだ。
「おいしいか。良かった」
十五分くらいかけアルとグラッドは朝ごはんをたいらげた。
グラッドは戦いで疲れたからか、眠そうにしている。
「眠たいか?」
グラッドは目をぬぐった。
「よし、ベッドまで行くぞ!」
アルはグラッドの手を握った。
アルとグラッドはベッドがある部屋に行った。
「寝るか! グラッド」
グラッドとアルはベッドにあがった。
グラッドはあっという間に眠った。
「グラッド…… おやすみ……」
とアルは小さな声でつぶやいた。
「俺も寝るか……」
アルもあっという間に眠ってしまった。