アグネス、お出かけの時間を宣言する
とりあえず、CATの7人をざっと紹介しておこう。
まぁ、何度も繰り返すようだが、正体はスーパークリーチャーという人工生命体なのだが。
まずは、オーキッドピンクミックス。
一応リーダーということになっている。何をウリにしていいのか、開発部も困って試行錯誤した結果生まれた、いろいろやってみた。なスーパークリーチャーである。そういうわけで、結果として総合的なバランスが良かったという、逆に言えば、突出した特徴のないメンバーである。外見は、黑い瞳と黒髪を持つ東洋系美少年。制服がピンク色なので、余計に変な想像を掻き立てられるのが難点ではある。
次は、タンジェリンオレンジベンガル。
サブリーダーを任されている。スピード特化のスーパークリーチャー。対魔物戦闘においては、耐闇属性要素が組み込まれているらしい。外見は、細身でワイルドなハンサム系女子。緑の瞳とオレンジの髪を持つ。
ジャスミンイエローアビシニアン。
情報処理に特化されたスーパークリーチャー。CAT創設が決定されて以来王国内外から集められた各種ファンタジー系小説・設定書・その他の魔物資料の全データベースを搭載。また、先のテロ事件に際して出現した魔物の解析データと、今後の対魔物戦闘に関しての予測データの最新版が常に更新される仕様になっている。耐木属性要素が組み込まれていることになっている。外見は、アグネスの強い要望により、クール系眼鏡男子である。ゴールドの瞳と褐色の髪を持つ。
ペパーミントグリーンノルウェージャン。
パワー特化のスーパークリーチャー。サイズが、やや大きめとなってしまったため、妙に存在感がある。アグネスに渡された取扱説明書によれば、耐水属性・耐氷属性・耐土属性要素が組み込まれ、耐寒冷能力にも秀でている。外見は、緑の瞳と緑の髪を持つ所謂ガテン系男子。
ヒアシンスブルーヴァン。
水中活動に特化したスーパークリーチャー。さらに、メカニカルな情報と技術においてはアビシニアンよりもむしろ上とされている。よって、CATの使用する武器関係のメンテナンスはヴァンの役目になると予想される。耐火属性要素が組み込まれている。外見は、青と琥珀色のオッドアイと銀髪を持つ童顔美少女。アグネスの強い主張でバストのサイズがGカップに変更させられている。水中活動用にヴァンには特別仕様の水着が準備されたが、水着のデザインは、アグネスの主張で、布面積の極端に小さいビキニスタイルに決定されたという。
インディゴオリエンタルラグドール。
空間制御に関する能力の搭載を予定されているスーパークリーチャー。現時点では、魔物がもともと存在していたと推測される別世界、ファンタジー世界に関しての情報が足りないため、想定されるいくつかの状態空間モデルの演算のみが続けられている。不確定要素が多く、アグネスにとっては最も使いどころが難しい個体ではある。しかし、外見に関しては、アグネスの好みが最も強く反映された癒し系男子。紺色の瞳と紺色の髪を持つ。
ヘリオトロープスコティッシュ。
唯一の性別指定のないスーパークリーチャー。耐金属性要素、耐光属性要素が組み込まれていると設定書に書かれているが、ほとんど意味不である。妖しさだけは他の個体の追随を許さない。アグネスの移動に際しての運転手兼護衛役として、最初から指定が入っていた(ジュリオが手をまわしたらしい。)。教育プログラム等に対しても、ブロックされ上書き不能になっている部分も多々あるなど、他のスーパークリーチャーとは異なる側面を持つが、詳細は不明。紫色の瞳と紫色の髪を持つ。
上層部のほんの一握りにしか、CATの正体は知らされていないため、いったい、どういう基準で選ばれたメンバーなのか、軍組織内部でも噂先行となっていた。
アグネスが、とにかく派手な外見を求めたこともあり、およそ、軍人らしからぬ髪形に、制服だった。
とくに、アグネスの運転手兼護衛を務めるヘリオトロープスコティッシュは、まるで魔女のような外見で、言葉数も少なく、しかし、めったに聞くことができぬ声を聞いた者によれば、その声はどう考えても男の声だったということで、謎が謎を呼んだ。
また、軍というものはどうしても男性の数の方が多くなる傾向があり、それはこの王国の軍組織も同様であったが、ヒアシンスブルーヴァンの外見が、上層部の1人の発言を借りて表現するならば、あまりにも煽情的、もっと分かりやすく表現するならば、童顔でありながら、Gカップのバストを持つその容姿が、他の者の集中力と緊張感の減退を招くというクレームとなって現れた。
実は、水中活動のスペシャリストであるという触れ込みがあり、その訓練の様子を見学可としたところ、瞬時に定員に達してしまい、くじ引き抽選に変更となったのだが、抽選に漏れた者の不満がそういった形となったのである。ヴァンの水中作業用の特別仕様の水着が、アグネスの命令で、とんでもなく布面積の小さいものであったこと、さらに、アグネスが自ら、訓練用の水槽から上がったヴァンの体をバスタオルで拭いてみせたことから、騒動はさらに大きくなった。
例の、開発部の、喜のみ発動する感情プログラムの効果のせいで、ヴァンは、アグネスに向けて満面の笑みを向けたのだ。それは大勢の者たちに目撃された。尾ひれがついた噂は軍組織内をあっという間に駆け抜けた。あれは、ただの笑顔ではなく、恍惚の表情だったという内容である。
騒ぎが大きくなったことで、改善を求める声が上層部の方からアグネスの元に届けられたが、アグネスはしれっと「水着の件は、データ取得に際し、誤差を少なくするための必要処置である。それと、部下を直接ねぎらって、何が悪い。」と回答したのであった。
むしろ、引っ掻き回すことが目的の1つであったので、ある意味CATの活動は成果を得たと言えた。
しかし、こういった馬鹿げたことばかりをしているわけにもいかなかった。
耐魔物戦闘部隊などという本当に必要なのかどうかも不明な集団でありながら、準備だけは洩れなく行っておかねばならず、さらに、開発部を巻き込んで、アグネスの「使える武器」としておく必要があった。そして時間的な余裕がどれほど残されているのか、誰にも分からないという点も厄介なのであった。
後になって分かる事ではあるが、実際に、時間はそれほど残されていなかったのである。
「随分と派手に楽しくやっているみたいだね。」
ハウスキーパー殿こと、ラスティ=J=ターナー。もしくは、元ジュリオ=ヤンから、皮肉交じりの言葉がかけられるたびに、アグネスは、「誰のせいだと思っているのか?」と内心毒づきながら、笑顔を貼り付けて、「おかげさまで、存分に楽しませてもらってますわ。」と返していた。
しかし、どこかで、1回は、成果を披露しなければならないのも確かであった。
そして、その機会は、意外に早く巡ってきた。
その日は、朝から妙に肌寒かった。どんよりとした嫌な空気と、重苦しい気配が、王都一帯を包んでいた。その感覚が、10年前のテロ事件勃発の日を思い出させると感じていた者は少なくなかった。
そして、昼過ぎに異変が起きた。
最初に反応したのは、CATの1員であるインディゴオリエンタルラグドールだった。
「来ます。」
突如、その一言だけを、発したのだった。
アグネスは、その言葉の意味を直ちに理解した。
「全員、直ちに、第一種戦闘配置に。」
アグネスの号令で、CATは動き出した。
アグネス「今回も、サブタイトルに困ったって感じね。」
猫「うん。前回のと同じにしようかとも思ったんだけど。」
ジュリオ「本文、かなり無茶苦茶になってるね。これ、大丈夫なの?」
猫「直接的な表現は避けてるから。たぶん、大丈夫、だと思う。」
アグネス「そっちに引っかかって、移動っていうオチ?」
猫「やめて。」