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1.ミミズ


 蒼介ソウスケが習字教室へ行きはじめたのは小5の夏でちょうど1年前くらいだった。

 遊びたい盛りの僕が、好きで始めるわけもない。

字があまりにも汚い、と親が無理やり通わせた。

始めた頃はいつかさぼろうと思っていたが、同じクラスの町田の母親が先生だった知ってからは何となくさぼりにくくなりいつしか真面目に通うようになっていた。


「途中からエアコン死んで、最悪だったな。」


 窓を全開にあけ扇風機のみで暑さをしのごうと試みた空間はただただ暑く、ミンミンミンミンと普段の数倍の鳴き声を聴かせていた。


「それ!ほんっとに暑かった!!あんなに時間が経つのが遅いとおもったのは初めて!!」


 リンは同じクラス。

 今まではあまり仲良くなかったが、習字が終わった後は家が近くのため自然と一緒に帰る仲になった。

学校では全くと言っていいほど話さない。

クラスは男子と女子でいつも冷戦状態だった。


「ねぇ、蒼介くんってさ、習字書くのは上手じゃん」


「まぁね、自分でも上手くなったと思うよ」


「でもさ、名前のところで損してるよね」


「……。気づいた?」


 1年も通っていたら字はだいぶ上手になった。

 筆と墨で見本を真似て書くのは得意になったのだが、

肝心な鉛筆の字は相変わらずミミズみたいな字をしていた。

小筆で書く名前も同じく苦手だった。


「小筆の持ち方って、鉛筆と似てるじゃん、嫌いなんだよなぁ」


「せっかくお題の字が綺麗に書けても名前で失敗してよくやり直してるよね」


 ミミズ文字、もったいないなぁ、と彼女が笑いながら言う。


 彼女は僕なんかよりもずっと先に習字を習っていて、通っている小学生の中では1番上手だと僕は思っている。

レベルが違いすぎる彼女からは嫌味を感じることはなく、僕は素直に鉛筆も苦手だ嫌いだと彼女にひたすら愚痴っていた。


「ミミズといえばさ、今日の理科、綺麗にしたミミズ顕微鏡でみたじゃん、綺麗だったよね」


「げぇ、ミミズきもいじゃん!生きてたしキモイしかない」


「えー!男の子なのにミミズだめなの?!

綺麗なピンクで可愛かったよー!!」




 他愛もない会話。


 オチのない話。


 いや、オチが来る前にコロコロと変わり続ける話題と


 変わり続ける彼女の表情。




 木曜日の帰り道、それは週に1回訪れる僕の密かな楽しみになっていた。



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