一反木綿
~一反木綿……鹿児島県肝属郡高山町(現・肝付町)に伝わる妖怪。伝承地では「いったんもんめ」「いったんもんめん」とも呼ばれる。地元出身の教育者・野村伝四と民俗学者の柳田國男との共著による『大隅肝属郡方言集』にあるもので、約一反(長さ約10.6メートル、幅約30センチメートル)の木綿のようなものが夕暮れ時にヒラヒラと飛んで、人を襲うものとされる。首に巻きついたり顔を覆ったりして窒息死させるともいい、巻かれた反物のような状態でくるくる回りながら素早く飛来し、人を体に巻き込んで空へ飛び去ってしまうともいう。※フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋~
ある時ふと空を見上げると、「白くて細長い謎の物体」が上空を飛んでいた。
明らかに鳥ではないし、飛行機にしては見たことも無い形である。それに速度だって激遅だ。
僕は写真を撮ろうと、バッグに入れていたスマホを探していたのだが、この一瞬の隙に、その「白くて細長い謎の物体」は消えていた。
一体何処へ行ったのかと、きょろきょろしていると、さっきとは正反対の方角にそれは居た。
しかし、相変わらず動きはノロノロなのに、あんな短い時間にどうやって移動したのであろうか? テレポーテーションでも実用化されない限り、到底出来ない芸当だ。
そうやって、「不思議な事があるものだなー」とぼーっとしている間に、そいつは雲の中に消えて行った。
畜生、写真を取り損ねちゃった。
あれは何だったのだろうと思ったのも束の間。多くの目撃情報が寄せられたらしく、次の日にはテレビや雑誌で、例の「白くて細長い謎の物体」特集何かが組まれ、大々的に取り上げられていた。
UFO説が唱えられるのは想定内であるが、果ては妖怪「一反木綿」説まで浮上する始末で、あっと言う間にプチブームとなった。
さりとて、話題の移り変わりが早い昨今。立て続けに起こる芸能人・有名人のスキャンダルや、ゴシップニュースなどのおかげで、何時しかこの話柄も、人々の記憶から薄れていった。
そんなで、あれから暫く経ったある日の事、僕は久方振りに、あれなる「白くて細長い謎の物体」に出くわした。
よし、今回は絶対に宇宙人との遭遇体験してやんぜ……何て馬鹿な事を思いつつ、スマホを取り出してカメラモードに。
おお、「白くて細長い謎の物体」は空中で微動だにしていないじゃないか。今般はばっちし動画にも納めてやろうっと。
おや? 「白くて細長い謎の物体」が二つに分裂しやがった。こいつは凄いぞ。
そして、その内の一つが地上にピカピカと光りながら、ゆっくりと落下して行く。
その後、眩い光を放ったと思えば、僕の意識はそこで途絶えた。
後になって分かった事だが、件の「白くて細長い謎の物体」は、某国の新型戦略爆撃機で、分かれた片割れの方も新型核兵器だったらしい。
忘れもしないあの日。時節は茹だるような暑さの夏。
運命の悪戯か、日付は八月六日、午前八時十五分、広島市での惨事だった。