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鳥のキセキ  作者: にいな
フラワリー編
3/3

コルシカ家での暮らし

神様曰く、「未来を変えるために、最も簡単なの方法は、この世界の歴史とつながりがある世界の歴史を変えること」だそうだ。

双子の妹と幼馴染を助けるために、私はまずこの世界を知ることが大事だと、まずは全然関係ない子供として生活することとなった。こんな手厚いフォローしてもらって、後々すごい金額を請求されても、私は払えませんよ。と言ったけど、お金はいらないから大丈夫と言われた。なら安心だ。


神様と握手して、気が付いたら見知らぬベッドの上で、知らない女児に生まれ変わっていた。まだ死んでないので憑依?いや、元から私なので生まれ変わり?まあ、どうでもいいや。

隣のベッドでは男児が寝ている。お世話係さんの話を盗み聞きしたところ、私の双子の兄だそうだ。人生初のお兄ちゃん!実はちょっぴりうれしい。


っていうか、お手伝いさんがいる!結構裕福なおうちのようです。

異世界転生物では貴族とか西洋っぽい文化とかあるけど、ここでもあるんだろうか。身分差は面倒なこともいっぱいあるけど、ちょっとあこがれちゃう。


この世界では双子というのは吉祥の証らしい。双子の片割れは成功をおさめ、もう一方は未来を見渡す力を得ることが多いからだそうだ。

未来を見通す力!異世界って感じでワクワクするね!



と、はしゃいでいた時期が私にもありました。

改めて自己紹介しますと、私はコルシカ家の長女、フラワリー・コルシカ。先日、家族に8歳の誕生日を祝ってもらった身です。

因みに我が家は結構大きな商会をやっているらしいです。


この世界、というか私が暮らしている国には一応は身分制度はないけれど、身分制度はまだ根強く残っているらしい。日本でいう、明治くらいの身分制度を排して、貴族が華族となって云々くらいの時代に当たるんだと思われる。歴史の授業は壊滅だったのではっきりとこのぐらいの年代、と言えないことが恥ずかしいけれど、しょうがないよね。


うん、それはいいんだけど、フラワリーは体が弱くて外に出て世界を知ることもできず、ベッドの上で一日の大半を過ごす羽目に会っているのだ。神様も「まずはこの世界を知ってみよう」と言っていたし、今の私は「お試し期間」的な立ち位置にいるのだろう。


心当たりはある。きっと、神様にお金払えない的なことを言ったから、これくらいしか動けない女の子にされたのだと思う。お布施、大事。体の健康はプライスレス。骨の髄まで染み渡りました。


「フラ、ただいま。今日は起き上がって大丈夫なの?」


お金を払うことの大事さを噛み締めていると、双子の兄が帰ってきた。

兄の名はファイ・コルシカ。学校に通っているから日中は家にいないのだ。帰宅すると私の体調が良ければ、お茶をしながら学校の話とか勉強の話とかしてくれる。私の貴重な情報源である。

こんな良いお兄ちゃんがいて、フラワリーは本当に幸せ者だ。


「今日は調子がいいの。お兄様、今日はどんなお話を聞かせてくれるの?」


昨日は理科の授業で光を集めて火を起こしたとか、そんな話をしていたと思う。

ルーペがあるなら、白鳥が子供の時に行った「科学の祭典」で教えてもらった手作りカメラを作ってみたいのだけど、そもそも外に出られない身の上だし。今世では諦めよう。

日本と同じような歴史をたどっている世界なら、既にカメラは発明されているだろうし。


「今日は転校生が来たんだよ。僕らと同じ双子なんだ。兄の方が同じクラスで、弟の方が隣のクラス」

「双子、ということは私たちと同じ…?」

「今日来たばかりだから、詳しいことは分からないけど、友達になれればって思ってる。もしも僕たちと同じなら、フラも相談しやすいかなって思って」


そう。私は双子の片割れに多く発現する「未来視」の力を持っている。最も体が弱いためか、力を使ったら数日寝込むし、見たい未来は選べないし、大人たちの何気ない会話だったり子供たちの噂話だったりと大した情報は得られないので、あまり使っていない。

大人になれば少しは丈夫になると思う、とお医者様も言っていたので、大人になればこの力も使いこなせるかもしれない。未来の私、頑張れ!


それから、兄の話ににこにこと相槌を打ち、しばらくすると夕飯の時間になった。


今日は比較的体調がいいので私も夕食の席に参加した。因みに体調が悪いときは、自室で一人寂しく病人食を食べる。食堂に行ってもメニューはそんなに変わらないけど、気分転換は必要だろう。

兄と一緒に食堂に行くと、既に父が座って待っていた。母の席は相変わらず空いている。


フラワリーたちの母親は職業婦人と呼ばれる人で、この時代では珍しく家庭に入らず働く女性らしい。職業は小学校の教諭。家にも帰らず職場(学校)に泊まり込むのが日常だ。とんだブラック企業じゃないか。

白鳥の両親も会社に泊まり込むことが多い人種ではあったが、今世?の両親もワーカーホリックだなんて。これも全て因果なのだろうか。よく分からないけど。


そんな母に対して父がどう思っているのか聞いてみたら、「好きなことをしている彼女が好き」だなんてのろけられた。ごちそうさまです。そういえば、この人たち、この世界では珍しく恋愛結婚なんだった。

そんな質問をしたせいで、父は私の事を「母が恋しく、寂しい思いをしている子供」だと勘違いしてしまった。別に、親が家にいないことは私にとっては普通の事で、そもそも私の精神年齢は16歳なのでそれくらいで寂しがったりはしない。


しばらくすると祖父がやってきて、食事が始まる。

大体が、祖父から誰かに話しかけて、会話をしながら食事だ。

私には体調を気遣う言葉を、兄には今日の学校の出来事、父には今日の売り上げとかお客さんの噂話とか。

実は私、この祖父が苦手だ。


私の「未来視」が上手く使えないと知った時、ボソッと「使えんな」と言われたのだ。元々親しくしていなかったけれど、あの一言で私と祖父の間の溝は谷より深くなった。

祖父にとっては血のつながった家族であっても手駒の一つなのだと思う。はっきり言って人間性は最悪だけど、ここまで冷血になれなければうちの商会もここまで大きくなっていないだろう。

厄介な点は、父という手駒を上手く使うために、使えない手駒である私にも多少は情を見せる所だろうか。今日みたいに体調を気遣ったりするし、お医者様もここらでは凄腕と呼ばれる人を呼んでくれるし。

悪い人なら完全悪に染まってもらわないと、憎みにくい。


「そういえば、マンダリン家が養子を迎え入れたそうだ」


祖父が不機嫌そうに言う。

食事時くらい楽しそうにせんかい。ごはんが不味くなるでしょう。と思ったけれど、もちろん口には出さず、にこにこと笑いながら首を傾げる。

マンダリン家ってなんだっけ?


「おじい様、うちに転校してきた二人が、そのマンダリン家の養子のようです」

「ああ、そんなこと言っていたな。うちの孫娘が「未来視」だからと対抗してきたようだ。今朝からあちこちに自慢して回っているらしい」


そんなことせず、商売で勝負せんか。と疲れた様子でため息を吐き、祖父はお茶を飲む。

ああ、思い出した。マンダリン商会を営んでいる家か。コルシカ商会とは取り扱う商品が違うから、商売敵とかではないので忘れていた。今の家長は祖父の幼馴染で、勝手に祖父をライバル視しているらしく、何かとつけてはいちゃもん付けていると聞く。暇人なのだろう。


「…仲良く、しない方がいいのでしょうか」


祖父の顔色を窺うように兄が問う。

そういえば、友達になりたいって言ってたもんね。祖父は頭が固いから絶対にダメっていうでしょう。兄もなんでそんなこと聞いちゃうかな。

と呆れ気味に私はお茶に口をつける。


「それは私が決めることではない。自分で必要だと思えば親睦を深めればよいし、不要だと思うなら関わらなければいい」

「! ありがとうございます。おじい様」


祖父の言葉に満面の笑顔で答える兄。その兄を見て微笑まし気な笑みを浮かべる祖父。

驚きすぎてお茶を吹き出すところだった。私は、祖父の偶に人間味あふれるところが苦手だ。



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