プロローグ
ぼんやりと窓の外を見ていた。
外では小学生の女の子二人と男の子一人が楽し気に走っている。
女の子二人は双子のようでそっくりだった。
男の子は幼馴染だろうか。女の子たちとは血縁関係を感じさせない。
まるで、
「まるで、昔の自分たちを見ているよう?」
くすくすと笑いながら、後ろからポニーテールの女の子が話しかけてきた。
振り向くのも面倒でただ子供たちを目で追っていると、彼女は私の横に並ぶと愛おしそうに窓ガラスを撫でる。
何故かその動作が何処か艶っぽく見えた。
いつもはどこか無邪気なのに、時たま大人っぽく見える。
これが、子供と大人の境界にある年頃の女の子の美しさ、というものだろうか。
少女が被っていた帽子が風に飛ばされていく。
もう一人の少女と少年が慌てて帽子を追う様は、どこか懐かしい光景だ。
あの頃に戻れれば。
その思いを振り払うように首を振る。
「思い出に浸るのは、もうおしまい?」
楽し気に笑う彼女を睨みつけると、彼女は手を差し出してきた。
あの日、この手を取らなければ何か変わったのだろうか。
いや、何度繰り返してもきっとこの手を取っていただろう。
彼女の手を取らない選択肢は、そもそも用意されてすらいなかったはずだ。
「あらあら、手を取ってくれないの?悲しいわぁ」
全く悲しそうに見えない笑顔でそう言うと、「それじゃあ、行きましょうか」と歩き出した。
その先には双子の片割れが光の灯っていない目でこちらを見ていた。
違う。少女の口が「神様」と動いた。少女の目には彼女しか映っていない。
少女の瞳には「神様」しか映らないのだ。
彼女が、「神様」が、振り返る。早く来いと、訴えているのが分かる。
自分のふがいなさを押し隠すように拳をきつく握ると、彼女の後を追いかけた。
きっと少女を救う道があると信じて。




