75話 理由
1ヶ月ぶりの投稿です。
課題や体調の悪化、そして私のモチベーションの低下により執筆が滞っておりました。
本日より再開させていただきますので、今後ともよろしくお願いします。
そしてすみませんでした。
まず山本が倒れた。
追うようにして美玲も床に転がった。
そしてかりんも次期にそうなるであろう状況だった。
「あのさ、聞いてよ。僕は不思議だと思うんだ」
ただ白虎の気まぐれで立っていられるだけ。
「……何が?」
絶対に勝てないことが分かってしまった。
自分の選択が間違いだと気付いてしまった。
今はただひたすらに、まだ死にたくないという思いだけで立っている。
だから少しでも時間を稼ぐ。
だから話を広げる。
「量産型って弱いじゃない? それでもまだ作られてるのってなんでだと思う?」
かりんは地下で敦に言われた言葉と、ついさっき白虎が溢した言葉から推察する。
「量産型に何か隠されているから……?」
「おっ、凄い。実はそうなんだよ」
白虎は手を叩きながらかりんに賞賛を送る。
「じゃあさ、その何かってなんだと思う?」
かりんは再び考える。
時間をかけてはいけない。
白虎を怒らせてはいけない。
そんなプレッシャーの中、ごく微量の情報だけで推察する。
(量産型が未だに作られている理由……普通の異能にはない力、それこそ双鬼に宿っているような力があるから? 違う、それはわざわざ量産型でやる必要がない)
一つの可能性が浮かんだが、すぐに否定する。
(白虎が言った言葉、状況を思い出せ! 強い異能を作れるからあんな可能性にかけなくていい。そしてその後すぐに山本と美玲ちゃんがやられた。考えろ、考えろ考えろ!)
「ねぇ、黙ってないで早く答えて……」
白虎がイラつき出したその時だった。
「……神話級にも勝る戦闘力」
ぽつりと口から溢れた。
考えの正しさを精査するより前に……頭に浮かんだ瞬間だった。
「なに? 最初から知ってたの?」
「知らない、ただ考えただけ」
「へぇ、頭いいんだ」
かりんの考えは正解だった。
「じゃあさ、頭いいなら僕が今から言うこと分かってくれるよね?」
そう前置きしてから白虎はかりんに説明を始める。
「そもそもね、今作られている大抵の異能にはリミッターがつけられてるのさ。当然、僕の異能だって例外じゃない。その例外っていうのが……」
「量産型」
「そうだね、でもそれにも理由があるんだよ。量産型の異能は出力が他の異能に比べて何倍も低いんだ。つまり量産型はリミッターをかけるまでもなく限界なんて迎えられっこないんだ。だからリミッターをつけずに作り続けた。量産型だからね、コスト削減は大事だよ」
かりんは白虎が何を言いたいのか薄々気付き始めた。
「でもいつの日か通常型の異能も量産できるようになった。当然量産型の生産を中止すべきだって話が出たよ。でも1人のバカが言ったんだ。量産型は構造上、そして理論上は最強になり得る。ってね」
量産型は通常型よりも構造が単純な分、負荷にも多く耐えられる。
つまりはリミッターの先まで理論上は耐えられる唯一の異能ということだ。
「だからさ……お前ら寝てないではやく限界超えやがれ」
話は終わりだ。
そんな声音だった。




