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双鬼  作者: 鷹棒
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74話 閃光

 戦場には異能のオーラが放つ光の筋と、風を切る音が絶えず鳴っていた。


 たびたび異能同士が衝突し、金属がぶつかったような音も聞こえてくる。


「どうすんだよ! 何もできてねぇぞ!」


 そう声を上げたのは山本だ。


 3人が背中合わせになり分担しても反応するのがやっと、そんなレベルの速さの攻撃だった。


「じゃあ山本、とりあえず走って……」


「あ? 真面目に言ったんだよふざけんな!」


「真面目に……」


 ふざけてるのか真面目なのか分からない口調で美玲がそう告げる。


「ちっ、分かったよ!」


 何故かは知らないが1ヶ月の修行の末、山本の性格が丸くなった。


 口調は荒いままだが、かりんと美玲には逆らわなくなっている。


 逆らえないのかもしれないが……。


 とりあえず山本は走り出した。


 何か目的があるかのようにただ真っ直ぐに。


「どこ行くの?」


 勿論それを見逃す白虎ではない。


 白い閃光が山本に接近する。


 かりんや美玲なら反応できないような速度だったが、山本は野性の勘でなんとか反応する。


 爪と爪がぶつかり合い、両者の腕が弾かれる。


 山本はその勢いを殺しきることができずに地面に転がってしまう。


 その隙を見逃さず、白虎が追撃をしようとしたその時。


 音もなく忍び寄っていた美玲が白虎の脇に噛み付いた。


「いつからそこにいたのかな?」


 白虎は多少驚きはしたが、それでも慌てている様子はなくそのまま振りほどこうとする。


「させない!」


 かりんが暴れる白虎に飛びつき、引っ掻きまわる。


 しっかりと引っ掻き傷をつけ、ダメージを少しずつだが着実に与えている。


「オラァ!」


 態勢を立て直した山本が懐に潜り込み、握り拳を突き上げる。


 それにのけぞり、隙ができたところに再び美玲とかりんがダメージを与え、それを繰り返し続ける。


 傷は再生されているが、それでも体力は確実に削れている。


 治癒できなくなるまで絶えず攻撃し続ければ……、そう思った時だった。


「どいて」


 白虎が声を発した。


 ただそれだけなのに、3人の攻撃の手が一瞬止まってしまった。


 その隙に一瞬で後ろに飛び退き、白虎は3人から距離をとる。


「量産型にしてはやるじゃん。でもそんなんじゃ勝てないよ」


 それを証明するかのように異能の出力を上げ、場の空気を塗り替える。


「……やっぱり量産型の生産は止めるべきだよ、強い異能たくさん作れるんだからあんな可能性に賭けなくたって……」


 白虎が呟く。


「まぁいいや、早く片付けよう」


 その声が終わった瞬間、再び閃光が走った。

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