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双鬼  作者: 鷹棒
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72話 西の調査

「どうすんのよ山本!」


「知るか! とりあえず戦うしかねぇだろ……っと、危ねぇなぁ!」


「静かに、音が聞こえない……」


「聞くんじゃねぇよ、感じ取れ!」


「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」


 山本、かりん、美玲の3人は全力で駆けていた。


 それもいつものような悪ふざけではなく、とある理由あってのことだ。


「待ってよ、別に悪いことはしないからさ」


 その声の主はそう言いながらも全力で3人を追いかけ続ける。


「うっさい! そういうやつに限って悪いことしかしないのよ!」


「えー、だって君たちが悪いんだよ?」


 時が遡ること10分前……。



「おい、あれなんだ?」


 山本は少し離れたところにあるのにも関わらず異様な存在感を放つ塔を指差しながら言った。


 その塔は潤と拓人が見つけ、探索したものと全く同じだ。


「さぁ? でも調べないわけにはいかないと思う」


「賛成……」


 3人は塔に向かって歩き出した。



 3人が塔の付近を捜索し終わり再集合した直後、一つの声が空気を変えた。


「何してんの?」


 捜索の結果を伝え合っていた3人はその声を聞いた瞬間、本能的に異能を解放し身を硬直させる。


「お前こそ……」


「待って」


 山本が声の主に言い返そうとしたところを瞬時にかりんが静止を促した。


「あ? なんでだよ」


「あんたの方が分かってるでしょ、あいつとの実力差」


「だからどうした……」


「うるさい山本、かりん姉の言うこと黙って聞いて……」


 口答えしようとする山本を今度は美玲が止める。


「もう一度聞くよ、そこで何してんの?」


 語気にも口調にも全く変化はない。


 しかし何故か怒りが伝わってくるような、そんな喋り方だった。


「いい? 私が答えるから山本は黙っててね」


「ちっ、仕方ねぇな」


 流石に勝手が許される状況じゃないことを理解したから、自然と納得したのだ。


「私たちはこの付近の調査をしてました」


「へー、何のために?」


 かりんと声の主との問答が始まった。


「そこの塔が気になったからです」


「君たちは何者?」


「パラレルワールド……そう言ったら伝わりますか?」


「なるほどねぇ、随分と素直に答えるんだね」


「身の程は弁えているので……」


「それ嘘でしょ」


 空気が凍りついた。


「いや、本当にそう思ってるのかもしれないけどさ? でも少なくとも弁えてるなら()()の調査なんてしないよね?」


「え、その」


 かりんが口籠る。


「とりあえずさ、詳しく話聞かせてよ」


 そう言って、声の主が異能を解放した。

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