67話 神話の争い
祝、100000字
両者から膨大なエネルギーが溢れ出す。
それは空気を震わせ、地面までも揺らした。
その揺れは異能の解放が進むにつれて徐々に大きくなり、やがて地震といってといいほどの揺れとなる。
朱雀は朱雀の名に恥じないほどの熱と炎を帯びた赤い鳥になる。
龍宮寺は龍の名に恥じないほどの嵐を見に纏い、存在感を放つ。
異能の解放が完璧に終了した。
今、2人の異能は異能としての本来の姿を晒している。
普段は見に纏うだけの異能だが、その本質は身体自体を変化させることにある。
だが、そうは言ってもそれほどの力は神話級の異能にしか扱うことができないため、本来の姿という表現は少しズレているのかもしてない。
しかし今はそんなことはどうでもいい。
2つの異能が本気を出してぶつかり合う。
この事実だけが今この場を支配しているのだ。
最初に動いたのは朱雀だ。
吹き荒れる暴風などものともせず懐まで潜り込み、灼熱の炎を纏わせた足で龍宮寺の腹部目掛けて蹴りを繰り出す。
龍宮寺はそれに対して身を捻ることで対処し、腕に竜巻を纏いそれを朱雀に対して放つ。
朱雀は難なくそれを躱し、一時的に距離をとった。
「やるな! 俺の勘は間違ってなかったわけだ」
「無駄口を叩くな」
龍宮寺は再び竜巻を朱雀に対して放つが、これもまた再び躱されてしまう。
「やっぱりそこに転がってる小鳥さんたちの弱さが滲み出てくるな。あんたがここまで強いからかな? それとも言った通り弱いからかな?」
朱雀は意味も無く挑発をする。
もとより快楽のために戦闘をするような性格のため、快楽のために人を煽ることに何の躊躇もない。
「っク! 動けよ、動けよ! 僕の身体!」
潤からは、やり返したい気持ちだけが溢れ出てくるがそれでも身体はピクリとも動かない。
「無駄口を叩くなと言っただろう」
龍宮寺は朱雀がいる地点を中心とした竜巻を発生させる。
潤や拓人を巻き込まない程度の出力にセーブしているためダメージは与えられないが、それでも相手を動かすにしては充分だった。
龍宮寺はそのまま朱雀の下まで移動し、身体を捻ることで尾を鞭のようにしならせ朱雀に叩きつける。
急な攻撃に対応しきれず、そのまま地面に叩きつけられた朱雀だが、発する声から焦りは感じられない。
「あー油断した。もうちょっとだけ真面目にやらなきゃなぁ」
朱雀はよいしょ、という掛け声と共に再び飛び上がった。
どんな建物だろうと破壊するであろう龍宮寺の攻撃を受けたのにも関わらず、その身には傷一つない。
正確に言えば傷はついたのだが、この数秒で完全に回復したのだ。
「さぁ、次はどんな攻撃を見せてくれるんだ!」




