59話 分担
「よし、とりあえずまとまって周囲の安全確保だ。4グループに分けて東西南北を探索するぞ」
戦闘が終わり、全員が再集合した。
「俺と鉄平、治が北。桃、虎徹が東。拓人、潤が南。山本、かりん、美玲が西だ」
「あれ? 龍宮寺さんは?」
敦さんの指示で抜けていたため思わず聞いてしまった。
「司は指示されるより好きに動いた方がいいだろう?」
「そうだな。許されるならそれがいい」
2人だけの信頼関係だろう。
なんか羨ましく感じてしまう。
「じゃあ別れるぞ。そうだな……3時間後ここに集合だ」
「了解」
大まかな作戦が決まった。
俺の仲間は敦さんと兄さんか……。
とりあえずは安心だ。
よほどのことがない限り負けないだろう。
2人は強いから。
「俺たちは工場を見て回るぞ。幸いこっちの世界は人口が少ないみたいだ。あまり被害は出ないだろう」
その通りでこっちの世界には人が少ないように感じる。
さっきの戦闘でも全然騒ぎにならなかった。
おそらくこの工場から出る排気ガスなどが原因だろう。
異能の素の研究の方が人の命よりも大切なのか。
こっちの国の上層部は何を考えているんだ!
「鉄平、行くぞ」
兄さんに呼ばれて前を見たらもう工場の前だった。
考えすぎたな。
目標を忘れちゃいけない。
認識を改めなければ。
「分かったよ、兄さん」
「鉄平! 気を付けろ!」
返事をした途端、敦さんが叫ぶ。
突然物音がしたのだ。
「分かってます!」
俺は慌てて異能を解放し、辺りを見回す。
どこかを走るような音が……1つじゃない! 2つ以上ある!
右……後ろ?
いや、上だ!
反射的に俺は横に転がった。
するとさっきまで俺がいたコンクリートの地面が砕け、土煙が待っていた。
「へぇ、今の避けるんだ。思ったよりやるじゃん」
そこに立っているのは1人の女性だった。
その異能はおそらく猫型。
かりんさんと同じだが、攻撃の威力が違う。
「どうする! 多分あと何人かいるけど……」
「そうだな、お前1人で充分か? もしそうなら俺と熊本さんで残りを探す」
「任せて!」
2人は別々の音がする方へ走っていった。
「ふーん、君1人で勝つつもりなんだ。頑張るなぁ。無理しなくていいのになぁ」
女はわざとらしく身を捩り、俺を挑発する。
「あれ? でもあなたの異能って猫型ですよね? 量産型ごときで何ができるんですか?」
わざとらしく挑発し返すがどうだ?
というかそもそも量産型だとしても強いことは知っている。
身近に2人もいるんだ。
だが相手はお構いなしに突っ込んできた。
「うるさいわね! あんたなんか神話級なのに全然使いこなせてないじゃない!」
めちゃくちゃ気にしていた……。
だけど冷静さは全く失っていない。
引っ掻き、蹴り、パンチ。避けても避けても軽い身のこなしで攻撃を繰り出してくる。
「あんたとっ捕まえてもっといい異能貰ってやるんだから!」
相当お怒りですね……。
「できるものならやってみて下さい!」
戦闘開始だ。




