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双鬼  作者: 鷹棒
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58話 襲来

 無重力で洗濯機の中にいるかのような感覚を味わい、パラレルワールドに放り出された。


 想定していたよりも勢いよくゲートから出されたため受け身を取ることもできずに地面に打ち付けられた。


 肺から酸素が抜けるような感覚を味わうと共に、パラレルワールドに来た。という実感を得た。


「ホントに日本なのか? ここ」


 いち早く体勢を立て直した山本さんが辺りを見回しながら呟く。


 その言葉が気になり、俺も慌てて周囲を見回した。


 そして驚愕した。


 俺の知っている東京……いや、俺たちの世界とはまるで別物のような景色が広がっている。


 産業革命時のような工場が超ハイテク化されているようなイメージだ。


 当然空気は澱み、太陽の光が真っ直ぐ届かないからか晴れているはずなのに曇りのような暗さを感じる。


 街は全体的に青いLEDで照らされ、荒廃した未来都市のような印象を受ける。


「全員、無事か?」


 敦さんがみんなに声をかける。


 それに対して各々で体勢を整えながら返事をし、無事を報告する。


「そうか。指示を出す……」


 敦さんがそう言おうとした瞬間だった。


「皆、下がれ!」


 龍宮寺さんが号令をかけると同時に、異能を解放しながら前に飛び出した。


 意味を理解するより先に異能同士がぶつかるような特有の音が鳴り響き、本能的に戦闘だと理解した。


「敵は3人、全員熊型ですー」


 瞬時に空に飛び上がった拓人君が敵の戦力を報告してくれた。


 熊型と聞いて敦さんの異能を想像したが、今回の敵は俺たちと同じようにオーラを纏っている。


 つまり敦さんの持っている旧式の異能ではない。ということだ。


「俺と治で1人相手します!」


 虎徹さんが飛び出し、それに続いて兄さんも飛び出す。


「じゃあ俺とかりん、あとちっこいのも来い! 3人で1人倒します!」


 山本さん、かりんさん、美玲ちゃんの3人も前に出る。


「こいつは俺1人で十分だ。残った奴らは警戒しておけ」


 ということで俺は警戒担当だ。


 とりあえず真上に跳躍し、全体を見渡す。


 拓人君の言っていた通り、敵の援軍は見えない。


 念のためカバーに入る可能性を考え、戦場を見る。


 虎徹さん達の戦いは、一言で表すのなら『連携』そのものだ。


 片方が攻撃を受け流すと同時に片方が攻撃を加える。


 攻撃力もスピードも防御力も相手が圧倒的に上だが、それを見切り受けきる力も、防御を貫通する威力も、あの2人だから出せるものだろう。


 その甲斐あってか、圧倒的格上を完封してのけた。


 山本さん達はスピードで翻弄し、目や腹などの柔らかい部位を徐々に削るような戦い方をしている。


 絶え間なく攻撃を浴びせ、相手はなす術なくただ治癒に専念している。


 しかしその治癒も長くは保たなかった。


 絶え間なく治癒し続けるというのは、全力疾走をし続けることよりも体力を使う。


 次第に異能を保つだけの体力がなくなり、徐々に異能が柔らかくなる。


 その隙を逃さずに山本さんの噛みつきが炸裂し、異能は噛みちぎられた。


 龍宮寺さんはというと、ただの格下との戦いだからか、試すような動きをしている。


 わざと攻撃を受けたり、相手が避けれるギリギリの攻撃を放ったりと、この()を見据えて戦っている。


 それだけ試しながらも一切傷をつけられることなく、相手を無力化した。



 よかった、俺たちの力が通用する!


 俺たちの訓練は無駄ではなかったのだ。

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