52話 訓練
「オイコラァ!反射神経が足りてねぇんだよ!」
俺たちは異能警察官の訓練所で虎徹さんの指導を受けている。
反射神経って鍛えられるもんなのか?
「鉄平君?君、反射神経が鍛えられるか。とか考えたでしょ?」
潤さんが後ろから声をかけてきた。
その直後、無防備な横腹に強烈な回し蹴りが放たれ再度俺の体は壁に叩きつけられる。
「それは君の異能が神経にまで届いてないんだよ。ただでさえ片っぽしかないんだから君は1番頑張らないといけない。分かってる?」
そう言いながら潤さんは10メートルくらいを一瞬で縮めて俺に飛び蹴りをしてくる。
翼を使ってなんとか避ける事はできたが、大きく体制を崩してしまった。
「お前はそれ以外の回避方法ねぇのか!?」
当然、そんな隙を作れば虎徹さんに狩られる。
なんとかして虎徹さんの爪を腕で受け止めたが、どうせ吹き飛ばされるだろう。
「お?」
俺は吹き飛ばされたが虎徹さんの反応は思っていたのと違った。
「……どうしたんですか?」
全身が痛むが簡易的な治癒をして虎徹さんに聞いた。
「ん?お前、俺の攻撃受ける時に何か意識したか?」
思い返したが心当たりはない。
「強いて言えば、受け止めよう。と思ったことくらいですかね?」
「ちっ。無意識かよ」
怒らせたみたいだ。
「さっきのお前は異能を内部まで浸透させていた。無意識なら意味はねぇけど少しは成長したんじゃねぇか?」
マジか。
感覚を覚えてたらいいんだけどな。
「攻撃したとき何か違いがわかるんですか?」
「もちろんだ。殴ってみたらお前でも分かる。おい潤!こいつに殴られろ!」
「え?なんで僕が?」
「殴られると痛ぇだろ?」
「僕が殴られることは考えない感じで?」
「いいじゃねぇか。お前どうせ痛くねぇんだろ?」
「まぁそうなんですけど……」
渋々だが了承してくれたようだ。
「じゃあ最初は纏うだけで受けるよ」
「分かりました!」
俺はいつものように右半身を後ろに構え、足と翼を使って潤さんに向かって跳躍した。
その勢いを全て拳に乗せて潤さんの盾を殴る。
「さすが潤だな!纏うだけとはいえ無傷じゃねぇか!」
「いや、無傷じゃないですよ。多分鉄平君が強くなってるんだと思います。威力が跳ね上がってる」
そうなのか?全く実感がない。
それはそうと、今の感覚を例えると『超硬い卵』みたいだ。
硬いんだけど内っ側には何もない。みたいな。
「まぁいいや、次行くよ」
「はい!」
潤さんに促されてもう一度同じ動作を繰り返す。
「さすがにこの状態にダメージを与えられるほど強くはなってないね」
潤さんがそう言ったのが聞こえたが今はそれどころではない。
本当に全然違う。
まさに『鋼鉄』だ。
内部まで隙がない。
改めて考えると全然違うんだ。
これを習得できれば格段に強くなれる。
絶対的な自信が俺の中に溢れてきた。
「訓練、続けてください!」
「おうよ!」




