51話 戦うことが仕事
拓人の一人称が迷走していたので今回から「自分」に固定します。
「残っているのは手紙だけだ。これはまぁ読み上げるものでもないだろう。今渡しておくから後で読んでくれ」
松島さんはそう言いながら俺に手紙を渡してきた。
「分かりました」
「では戻るか」
「了解」
龍宮寺さんの問いかけに全員でそう答えた。
階段を登る途中、山本さんに声をかけられた。
「おい鉄。お前、親父のことでなんか思ってるかもしんねぇけどよ、親父は最初からお前のこと愛してたと思うぜ。まぁよく分かんねぇけどな。だからとりあえず落ち込むなよ」
山本さんは笑顔だった。
本当に強い人だと思う。
さっきまで俺と同じくらい……いや、多分俺よりメンタルきてただろうに。
「ありがとうございます。山本さんは大丈夫なんですか?」
「当たり前よ!バカってのは考えねぇ方が強い生き物なんだよ、だから俺は考えねぇ。研究会とやらをぶっ飛ばす。そのために強くなる。それ以外はかりんとかに任せるわ」
「そうですね……。考えるのは考えられる人の仕事。俺たちの仕事は戦うこと。強くならなきゃですね」
「そうだな。帰ったら訓練付き合ってくれよ」
「自分も混ぜてもらっていいですかー?」
「もちろん」
俺たちはかりんさんたちと違って考える頭がない。
だからこそ力で示さなきゃいけないんだ。
「後は俺と松島さん、司で片付けておく。お前たちはとりあえず本部に戻って訓練でもしておけ」
敦さんもそう言ってる。
「マフィアもその訓練に参加していいか?」
「構わない」
……マフィアも参戦するんすか?
まぁ少なくとも、今の虎徹さんより弱い俺たちが研究会と戦えると思えないな。
いい機会だ。
手合わせ願おう。
それから本部に帰るまで、全員で強くなるために意見を出し合った。
「まずお前らは反射神経がしょぼい。俺の攻撃すら見切れてない奴らが強くなるなんて無理だな」
虎徹さんが俺たちに向かってそう言ってきた。
「そもそもなんであんな速い攻撃出せるんですか?」
「あ?んなもん気合以外ねぇだろ。強いて言えば溜めて放つ感じだ」
溜めて放つ、ね。
それすると俺の手は粉々になるんだがどうするべきか……。
筋肉か?やはり筋肉なのか!?
「そうだ。君たちって異能を纏っているだけだったりする?」
潤さんが俺たちにそう聞く。
「まぁそうですね。異能を解放して出現させてるだけです」
かりんさんが代表して答える。
実際そうだ。
なので異能警察側からはなんの潤さんの問いに対して疑問しかない。
「それだから弱いんじゃない?」
「どうすればいいんですか?」
「異能を内側に浸透させるんだよ。筋肉や骨の内部にも異能を発動させる。そうすれば体も動くようになるし防御力も上がる」
「なるほどな。それであんたみたいな防御力が手に入るんだな!」
「バカは黙った方がいい……。あれは潤だからできる……。少し考えたらわかるはず……。みんなできるなら私もやってる……」
やっぱりマフィアは異能に対する知識量が違うな。
この知識をできるだけ短時間で習得しなきゃな。




